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ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

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約束(32)
 Sに救急外来の机の前の椅子に座ってもらって私は
病状の説明をはじめた。「レントゲンの写真をみると
このように右の肺の上の方が白くなっているのがわかる
と思うけどこれは肺炎の像なんだ…..。右の上葉が真っ白
になっている。大葉性肺炎といって重症の肺炎なんだ。
 酸素投与をはじめて抗生剤を使い始めている。うまく
治療に反応してくれればいいんだが……。」Sはいった。
「結構厳しいのか?」「あまり楽観はできない。治療に
反応してくれればいいけど、反応しなければ人工呼吸器
管理が必要になる可能性もある。結構肺全体に転移も
認められるし予備能はあまりないところでこの肺炎だ
から….。」「そうか…..。」「それでもし、呼吸状態が悪化
して人工呼吸器が必要な状況になったらどうするかなん
だが…..。」「どうするっていうと…..。」Sの母親の手術
をして2年近くが経過していた。私も少なからず彼にも
親近感ができてきていた。その彼にこのような問いかけ
をしなくてはならない状況であることが恨めしかった。
「なあS、お母さんは癌の末期状態だ。人工呼吸器に
つなげなくてはならない状態になって人工呼吸器につな
いでも回復する見込みはあまりない。なにも疾患がない
ところで起こった肺炎なら急性期をのりきれば回復する
見込みはあるから患者さんにとって苦痛な治療でも我々
はやるけれども、お母さんの場合は苦痛を増すだけの
可能性が高い。多分、周りでみている人も機械につなが
れているのをみているのはかなりつらいものがあると
思う。もちろん点滴から薬をつかったりの治療は継続
するけど本人に苦痛となる治療はあまりしたくないん
だが、その点はどう考えているのか聞かせてもらいた
い。」Sは一瞬黙り込んだ。私の言ったことが信じられ
ないという表情であった。「どう考えているかって?」
「そうだ。もちろん今の治療に反応して良くなるように
我々も努力しているが、悪くなった時のことを決めて
おかなくてはならないと思うんだ。」
 Sは握ったひざの上の両手を震わせていた。私を睨
みつけるように見つめる彼の目には熱いものがこみ上げ
てきていた。

(次回につづく)

 昨日は患者さんの状態が悪くて午前様になってしまい
ました。明日は休みなのですが病院に患者さんをちらっと
診にいこうと思っています。早く状態が落ち着いてくれると
いいのですが.....。
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初めまして♪rikoと申します。

現在 ガンと戦って入院されてる眼科医の先生のブログの書き込みをたどってたら
こちらにたどりつきました。
時々 遊びに来ますのでよろしくお願いします
riko | URL | 2005/10/01/Sat 22:04 [編集]
ご苦労様です、としか申し上げられません。

本当に大変なお仕事、恐縮してしまいます。
命を預かる者の使命、そして医者ではなく人としての苦悩、様々な想いを懐いてお仕事をされているのですね。

これからも色々な事が待ち受けているでしょうが、お身体を壊さないように頑張ってください。
呂布奉先 | URL | 2005/10/02/Sun 17:15 [編集]
rikoさん、呂布奉先さんコメント有難うございました。

>時々 遊びに来ますのでよろしくお願いします

 こちらこそ宜しくお願いいたします。

>ご苦労様です、としか申し上げられません。

本当に大変なお仕事、恐縮してしまいます。
命を預かる者の使命、そして医者ではなく人としての苦悩、様々な想いを懐いてお仕事をされているのですね。

 どうも有難うございます。でも私は自分が特別だとは考えていません。私の周りの多くの勤務医の先生方が同様に苦悩し、奮闘しています。こと医者や病院というと最近の風潮では悪者あつかいされる傾向にありなにかとスキャンダラスにとりあげられがちですが、多くの我々のような名もなき医療従事者が世界一の健康寿命を維持するために奮闘しているのだということが一般の方々に伝わってくれればと願わずにはいられません。本来、医師と患者の利益は病気の克服ということで一致するはずなのですから.....。

rikoさん、呂布奉先さん貴重なコメント有難うございました。今後とも変わらぬご支援のほどお願い申し上げます。
 
nakano | URL | 2005/10/02/Sun 18:20 [編集]
こんにちは。遅れ気味のコメントになってしまいましたが、相変わらずお仕事大変そうですね。
「先生大変そうだなぁ。こんなに働くシステムっていうのはどうなんだろう…。」と思うと同時に、自分が忙しいときには(先生とは比べ物にはなりませんが)、「こんなに頑張っている人がいるんだから自分も頑張ろう」とも思ってしまいます。ちょっと矛盾する気もしますが、素直な気持ちです。

>こと医者や病院というと最近の風潮では悪者あつかいされる傾向にありなにかとスキャンダラスにとりあげられがちですが

先生のブログを読むようになってから、この手の報道をにわかには信じられなくなってきました。
報道する側にも言い分はあるのかもしれませんし、それなりに調べてもいるのでしょうが、どうも薄っぺらに感じてしまいます。
punipunipyonpyon | URL | 2005/10/03/Mon 10:15 [編集]
punipunipyonpyon さんコメント有難うございました。

>先生のブログを読むようになってから、この手の報道をにわかには信じられなくなってきました。
報道する側にも言い分はあるのかもしれませんし、それなりに調べてもいるのでしょうが、どうも薄っぺらに感じてしまいます。

 そう感じていただいてもらえてほっとします。
 基本的には医療事故というもの(というかどの業種でも事故というものはそうですが....。)は人手不足とコスト不足が原因のはずです。現在の医療現場は絶対的に人手不足です。そして2年ごとの診療報酬の改定で多くの病院は赤字になりつぶれる病院も多くなってきています。海外で病院にかかると日本の医療費がいかに安く、しかも気軽にかかれるかよくわかります。1000円の定食を300円位に無理やり設定されて売らされている状態に近いのが今の多くの病院の状態でしょう。薄利多売でないと病院は回っていかない。3時間で40人の外来をしないと採算がとれない。トイレの水漏れなら8000円でも安い、車のへこみなら数万円でも安いのに、病院の窓口での5000円は高く感じる。人の病気の治療費はトイレの水漏れでのバルブ交換より安いはずと思われる。仮にも6年大学で学んで国家資格をとった医師一人と国家資格を持った看護士数人ついての作業が下手とするとバイトの修理工の作業より安いはずだというわけです。少ない人手で赤字を避けようと青色吐息の病院。人手もお金もかけなければ事故は今後もなくなることはないでしょう。マスコミの論調は精神論が多いように思われます。医者が看護士がもっとしっかりすれば事故はなくなるはずだと。でも実際には充分な人手とコストが必要なのだと思います。特にマスコミの方々がもてはやす先進医療や高度医療の施設を普及させていくというならなおさらです。

 マスコミの方々には医療現場の人手不足の現状をもっと調べてもらえれば有難いのですが...。

 ながながと愚痴っぽくなってしまい申し訳ありません。でも多くの無名の医療者が日々黙々と日本の医療と人々の健康を維持しようと奮闘しつづけているということは多くの人々に再認識してもらえるといいなと思っています。

punipunipyonpyon さん。貴重なコメント有難うございました。引き続き宜しくお願いいたします。
nakano | URL | 2005/10/04/Tue 00:29 [編集]
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