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ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

雪中花(19)
 次の日の朝、彼女は目覚めてはっと気がついた。昨日家に
帰ってきて、ふらふらになってとりあえず無意識に着替えて
ベットに倒れこんだらしい。昨日の夜はあまりにもボーっと
していて少し意識が朦朧としていたのでよく覚えていなか
った。彼女はベットから起き上がるとホッと一息ついた。
 なんとか今日は大丈夫そうね。でも会社が一段落したら病院に
いかないとまずいわよね……。彼女は慌しく身支度を整えると
会社に向かった。いやね。まだ少しふらふらするわ….。疲れ
もたまっているのね……。

 会社につくとO取締役とH主任が見積もりを作成して
待っていた。「お早うございます。専務。体調はどうですか。」
「まだ少しふらふらするけど大丈夫よ。例の件は大丈夫そう
かしら?」「かなり厳しいですけど言われた金額よりは値段を
下げた見積もりにしました。」「それで大丈夫なの?」「人件費
位の利益はなんとか出せると思います。新規の仕事ですから
失敗は許されないので材料費を大幅に削るわけにもいきません
し気は遣いますけどね。」「有難う、ご苦労さま。二人とも
休めたら今日は代休とってもらってもいいわよ。」H主任は
言った。「専務。今までの仕事をこなすのにも人が減って
休んでられませんよ。この仕事が受注できたらそれこそ
どうやって仕事を納期に間に合わせるか…..。ともかく現場
の方は私が責任もってみてますので心配なく。」Oも言った。
「専務。どんな仕事でもあったほうがいいですから、私は
今日の分の営業回りは予定通りやるつもりでいますから。」
 彼女は言った。「二人とも気持ちはうれしいけど無理しない
でね。事故でもあったらそれこそ大変だから。」「わかって
ます。そういう専務が一番無理されているんじゃないん
ですか?」Hが冗談交じりに答えた。「そんなことないわよ。
こう見えてもうまく休みはとってるんだから……。」
彼女が見積書をもって会社をでようとしたときO取締役
が彼女に声をかけた。「専務。差し出がましいようですが
私、自分の自宅を担保にいくら借りられるが信金や銀行に
あたってみました。中古ですけど一応土地つきなんで1200
万は借りられそうです。どうしても困ったときは言って
ください。」彼女は少し黙ってからいった。「O取締役。
奥さんはいいって言ってくれているの?」「妻にも相談し
ました。今の私があるのは先代からお世話になっている
会社のおかげだと私は思っていますし、妻もわかってい
ます。会社と社長、専務がこんな大変なときにこんなこ
としかできずに申し訳ありませんが…….。」「申し訳ない
のはこちらのほうよ。主人があんなことするからこんな
ごたごたになってしまって….。O取締役。気持ちだけは
もらっておくわ。本当に有難う。でもともかくこの仕事
はもらってくるから。それでとりあえず前金が入れば一息
つくわ。そのあとは主人も退院してきて復帰してくれる
と思うしなんとかなると思うの。」「でも専務、運転資金
は少しでもあったほうが….。」「あなたにそんな真似させる
位なら私は会社をたたみます。そんなことより会社のため
に1つでもいいからいい仕事とってきてください。」Oは
少し黙ってから言った。「わかりました。」その場を立ち去
ろうとしたOに彼女は言った。「O取締役。本当に有難う。
あなたがいなかったら多分会社は駄目だったと思うわ。
会社を思うあなたのためにもできるかぎりのことはやって
みますから。」Oは言った。「専務。たとえ沈む船であった
としても社長と専務の下で働けて私は幸せだと思ってい
ますから…….。もう少し長く、専務の下で働かせてもら
いたいと思っています…..。」

(次回につづく)

 Hit数が80000になりそうですね。キリ番踏んだ方は
コメント残してくださいね…..。
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もう80000Hitですか。早いですね!そういえば前回は友人が70000Hitを踏んだのでした。今、79903です。この調子だと明日中には80000行きそうですね。

NさんとSさんが会社のお金をもって退職してしまった時にはどうなることかと思いましたが、残った人たちはいい人たちのようで良かったです。とりあえずは一安心ですが、奥様の病気が気になりますね…。
punipunipyonpyon | URL | 2005/11/23/Wed 01:25 [編集]
punipunipyonpyonさん。いつもコメント有難うございます。早いものでこのブログはじめてから9ヶ月が経とうとしています。よくまあつづいたなあというのが正直な感想です。これも読者の方々からの叱咤激励があったからこそと思っています。今後とも読者の方々の鑑賞にかなうようにこおのブログをつづけていきたいと思っておりますので引き続きよろしくお願いいたします。

 重ねてコメント有難うございました。
nakano | URL | 2005/11/23/Wed 19:26 [編集]
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