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ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

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約束(52)
 昨日は夜間に呼び出しあり更新できないで
すいませんでした。本日「約束」最終回を
アップします。

 そして場面は最初の告別式の場面に戻るので
ある……。私はSの母親の告別式のSの挨拶に
聞き入っていた。
「お前が人生が何のためにあるのかを問うて
いるならそれは無意味だ。人は人生にお前はど
う生きるのかを問われつづけているのだから。
その問いかけに答えようと努力しなくては答え
は見つからない。人生の意義は自分自身でしか
見つけられないのだから。私の人生はお前を
一人前にするためにあると思っている。そのため
にいままで全力をつくしてきた。力不足でお前
にも辛い思いをさせてしまったがね。だからで
きる限りは私はお前に力をかすけれどもお前の
人生を切り開くのは結局お前自身なのだから。
私はお前のことを信じている。周りがどう思
おうとお前の可能性を信じている。」何度私
はこの言葉に救われてきたことでしょうか.....。
 私のために精一杯生きてくれた母親に私は
結局親孝行の1つもできませんでした。そんな
どうしようもない息子に母親は亡くなる前に
言ったのです。「嫁さんを大切にしなさい。家族
は何事にもかえがたい。生まれてくる子供を
お前のようにつらい思いは絶対させないで欲しい。
 そして周りに愛される人になりなさい。そして
不幸な過去に縛られず、希望ある今と未来を生き
なさい。私は駄目な旦那だったけど、あの人と
結婚してあなたという息子を授かって本当に幸せ
だった。だからあなたも幸せになって。あなたな
らできる。お願いだから…….。幸せになって….。」
精一杯の母親の願いに私は母親と約束しました。
絶対に私の家族と周りの人々を幸せにできる人
間になると。そして精一杯生きて幸せになると…..。
そうしてこそ私の中で母親が生き続けるのだと
思います。本日は皆様お忙しいところ母親の告別
式にいらしていただいて本当に有難うございました。」
 喪主であるSは妻と深々と頭を下げた。参列
した人々は皆、目を赤らめ暖かい拍手がSの頭上に
注がれた…….。Sの母親がSに与えたものの大きさ
がひしひしと感じられた。

(「約束」終わり)
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約束(51)
 Sは言った。「最後は穏やかな表情だったしこれで
よかったと思うよ。お袋も満足してるだろう…..。」
 私は言った。「そうだな…….。結局、僕も大した事
ができなかったけど。」「そんなことないさ。本当に
世話になったよ。こちらも気安さからわがままばっ
かりいってな……….。でも、お袋を診てくれたのが
nakanoで良かったとオレは思ってるから…….。」
 しばらくして、Sの奥さんと奥さん側の両親が到着
した。私は一礼をして病室を出た。病室からはむせび
泣く声がもれてきた。なんとかSは母親の死に目に会
えた。最愛の息子に看取られてSの母親も幸せだった
かもしれないと私は思った……..。

 ご遺体の処置を終えて、業者のお迎えがやってきた。
 Sは言った。「じゃあnakano。本当に世話になった
な。いろいろ有難うな。」「本当に先生お世話になって
…..。」Sの奥さんも言った。「色々、大変だと思うけど
気をつけて帰ってください。」と私は答えた。予想は
していたとはいえ、結婚式を挙げてまもなくの肉親の
死去は仕事を抱える二人にとっては精神的にも経済的
にも決して楽なものではないことは容易に想像できた。
 だが彼らはその苦難を乗り越えていくことができる
だろうと私は思った。Sはこの2年半、母親と共に病
気と戦ってきた。その間のSの精神的な成長は充分、
母親を安心させるに足るものであったのだから…..。
 雨が降る中、Sの母親を乗せた車が病院の門をでて
いくのを静かに私は見送った。

(次回につづく)

次回。「約束」最終回の予定です。

約束(50)
 彼女の病室に訪れるとすでに呼吸も止まっており
脈も触れなくなっている状態であった。血圧はすで
にでていない状態で、心電図モニターに映し出される
心臓の電気信号がかすかに動く心臓の動きを捉えて
いた。それもいずれ止まってしまうのは時間の問題
と思われた。(Sが間に合うといいのだが……。)
そう思いながらモニターの動きを私は見ていた。
 彼女の表情は安らかだった。2年数ヶ月の闘病
生活から彼女は解放されようとしていた。
 私が病室を訪れてから数分経って、病室のドア
を開ける音がしてSが到着した。「お袋…..。」Sは
つぶやくように言って、母親の元に駆け寄った。
Sは言った。「お袋。本当にお疲れさん。よく頑張
った。本当にありがとう。もう苦しまなくてもいい
んだ。もう楽になっていいんだから……。」Sは
眼から涙をこぼしながら母親の手を握り締め、
声をふるわせながら母親に話しかけた。
 しばらくして心電図モニターが完全に心臓の動き
が停止したことを示した。SもSの母親も、私も
いつかこの時がくることは分かっていたはずであ
った。皆が覚悟を決めて日々を過ごしていたはず
だった。だが、だれが友人の母親の死亡宣告を好き
好んで行いたいものであろうか。この間のSとの
真剣な話合いの場面、Sの結婚式の数々の場面
彼女が気力と体力を振り絞って行った挨拶、様々
な場面が脳裏をよぎった。私は静かに心音の停止
頚部での脈拍の停止、瞳孔の散大を確認して言った。
「本当によく頑張られましたが…..。○月△日午前
11時○○分、死亡確認とさせていただきます。
 本当にお疲れ様でした……..。」
「こちらこそ。nakano先生,本当にお世話になりま
した。」震える声でSは答え、深々と私に頭を下げた。

(次回につづく)
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