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(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
つかめない藁(20)
 30000Hitしました。皆さんいつも見に来てくださって有難う
ございます。キリ番踏んだMeltさんコメント有難うございまし
た。これからもできるかぎり更新していくつもりなので宜しく
お願いいたします。

 その日の手術を終えて、病棟の消灯前に私は時間をつくって
彼女と話をすることにした。ご両親との約束の日が近づいてき
ていたこともあったが、彼女の今の思いも聞いておいたほうが
よいだろうと思われたこともあった。胸腔ドレーンは入ってい
たが、胸水が抜けて状態が安定して病棟内の移動はできるよう
になった彼女を私は面談室に通した。「どうも、手術でこんな
時間にしか今日は時間がとれなくて申し訳ありません。」「そ
んなことはないですよ。」「ところで今の病状ですが前にも
お話させていただいたようにあまりいい状況ではありません。
前胸部の皮膚にも局所再発していますし、胸の中に病気が広
がって癌性胸膜炎をおこしている状態です。1日500〜600ml
位、胸水がでてくるのでこの管を抜くとまた入院の時のように
胸に水が貯まって肺がつぶされて呼吸困難に陥ってしまい
ます。現状の行っている治療としてパクリタキセルの効果を
期待したいと思います。」「もし、抗癌剤が効かなくなった
場合はどうするのですか?」「乳癌に有用性がある他の抗癌
剤に切り替える形になります。」「他にはどのような治療が
あるのですか?」「実績のある治療としてはアンスラサイク
リンという薬を基本にした方法があります。ただこれは蓄積
性の心毒性があるので無限にできる治療ではありません。
 やれる回数が限られるということがあります。
今回、パクリタキセルにしたのは回数を気にしないで続け
られる利点を考えてですね。あとは比較的新しいゼローダと
いう経口薬ですね...。」「抗癌剤を使っても完全には病気
は治らないんですよね...。抗癌剤治療をつづけていって
結局最後はどれも効かなくなって駄目になるということです
か....。」「先のことはどうなるかわかりませんが今できる
治療をしたいと思います。完全に病気が治らないまでも薬が
効いて胸水の量が減れば胸の管は抜けるかもしれません。」
「いずれにしてもかなり厳しいということですね...。」彼女
は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。「それでご両親へ
の話なんですけど...。」「いままでの事をそのまま説明して
もらって構わないですよ。」「それでいいんですね。」「昨日
ケースワーカーさんと話して、自分には生きていく最低限の
物以外はもう何も無くなってしまったことに気づかされま
した。かなり落ち込んだけど仕方ないと思っています。結局
目先のことばかりに追いかけられて....。家をでてから仕事
で成功することばかり考えていました。社会的に成功する
ことで周りの評価を得て幸福になれるかと思ってました。
両親があんな状態になったので結婚したいとも思えなかった
し...。正直、本当に人とかかわりあうことが怖かったのかも
しれません。おかしいでしょ...。本当は寂しくて寂しくて
仕方なかったのに...。苦しかったんです...。溺れるものは
藁をもつかむっていうでしょ..。人ときちんと触れ合うこと
ができないから....。仕事は裏切らないって思っていた。思
い込んでいたかったんですよ..。結局病気になったら会社
からはお払い箱ですしね...。つかめるわけもない藁にすが
ろうとしてそのままこんな有様ですから...。なにをあせって
いたんでしょうね...。もっと早く治療をうけていれば、あの
まましっかり治療すればよかったと思います。今の所ほどは
待遇は良くないでしょうけど、仕事だって新しくさがせば
いいって割り切れればよかったんです。そうすればこんなに
経済的に立ち行かなくなることもなかったんです。本当に今
の自分が頼れるのは仕事でも同僚でもなくて一番遠ざけたか
った両親なんだということに気が付いて....。もう情けない
やら悔しいやらで......。」彼女の頬に涙が流れた。私は静か
に彼女に言った。「お気持ちはわかりました....。○○さん。
でもまだ何も終わってないんですよ。治療はまだ始まった
ばかりですから...。状況は厳しくても全く手の打ちようが
ないということではないのですから...。やれるだけの事は
します。そして限られているかもしれない時間をどう有効に
使うか考えてください。私はその時間ができるだけ長くなる
様に努力しますから....。」彼女は少し考えてから答えた。
「わかりました。お手間かけます。宜しくお願いします。」
(次回につづく)
【2005/07/01 22:54】 つかめない藁 | トラックバック(0) | コメント(3) |
藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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