FC2ブログ
ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

約束(4)
 翌日、彼女を入院させた。外来の終わった昼すぎに彼女の
息子さんも呼んで病状の説明を行うこととなった。面談室
に彼女と息子さんを呼び寄せる。私は説明を始めた。
 「どうも、今回担当させていただく外科のnakanoです。
現在の病状に関してなのですが、胃の出口に腫瘍がありこれが
胃の出口を塞ぎかかっています。このため食欲がなくなって
います。またここから出血しているがために貧血が進行して
しまっています。腫瘍からとった組織の検査の結果では悪性
でした。また腹部のCTでは肝臓にも影が見えまして胃の
腫瘍が肝臓にも転移しているものと思われます。手術で腫瘍
をすべて取りきることはできませんが、このままでは食事
もとれませんし、出血も続いて貧血も悪化すると思われます
ので胃の部分に関しては切除を行いたいと思います。」彼女
は言った。「わかりました。」「手術を行うためにまず貧血を
改善しておかなくてはなりません。貧血がありますと充分に
組織に酸素が運ばれなくなり傷の治りが悪くなり合併症を
起こす可能性があります。そのために輸血を行います...。」
私は手術前の検査を含む色々な準備について説明を行った。
 そして手術予定の日とその前に手術の説明をする日を設定
した。最後に私は言った。「手術前に改めて検査結果と手術
のご説明をさせていただきたいと思います。ここまでで何か
お聞きしたいことがありますか?」彼女の息子が言った。「大
体のことは解りました。ところで先生はどちらの出身でらっ
しゃいますか?」突然の質問に少しいぶかしく思いながら私
は答えた。東京のX区ですが...。」「もしかしてY中学に
いらっしゃいませんでしたか?」何を聞かれているのかよく
解らなかったが私は答えた。「ええ、そうですが....。」
「私を覚えていますかね...。多分先生と同級だったのでは
と思うのですが.....。」言われてみて彼の顔を改めてみると
見覚えのある顔であることに気がついた。「ああ、Sさん
ですね...。あなたのお母様だったんですか....。すいま
せん。全然気がつかなかったです。」中学のころの彼はか
なりイケイケのワルであった印象であったが、大分穏やか
な印象であった。特に仲が良かったわけでもなく、付き
合いがあったわけでもなかったので彼が私のことを覚えて
いて先に気がついたことも意外であった。「私も話を聞き
ながら何か聞き覚えのある声と顔なんだがと思っていたん
です。世の中広いようで狭いですね。いずれにしても母の
こと宜しくお願いします。」彼はお辞儀をして母親と共に
部屋を去った。

(次回につづく)
スポンサーサイト
Copyright © 藪医者の独り言. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。