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約束(7)
 「なあnakano.俺はお袋に迷惑ばかりかけてきた。ようやく
仕事らしい仕事にもついてこれから親孝行したいと思って
いた矢先だったんだ。にわかには信じられんよ......。」
 うなだれる彼にどのような言葉をかけても空しく聞こえる
かもしれなかったが私は言った。「ともかくできる限りの
ことはするつもりだから....。だがやはりお母さんの病気
はかなり進んでいることは事実なんだ。正直いうと手術
で腫瘍をとってあげられるかもわからない。なんとか腫瘍
だけはとってきて食事が食べられるようにはしたいとは思
ってる。あとは抗癌剤がどれくらい効いてくれるかなん
だが....。これもどれだけ効いてくれるかはやってみな
いと....。君がしっかりしないとお母さんだって安心でき
ないと思うよ。つらいとは思うけど.....。」
 「わかってはいるんだ。わかってはね...。」彼は自分を納得
させるようにつぶやいた。そこには私の記憶の中に残っている
中学のころの荒れていた彼の面影はなく、肉親を失うかも
しれない悲しみに打ちひしがれた男がいた。できる
ことなら彼の母親を救ってあげたい。それができると言って
あげたかった。だが気休めをいっても、いずれ現実は彼を深
く傷つけるであろう。それはできないことであった...。

 彼の母親の手術の日がやってきた。その日の朝に彼女の
病室を訪れる。彼は母親に連添っていた。「おはようござい
ます。どうですか昨日は眠れましたか?」彼女は言った。
「少し緊張して眠れませんでしたけど大丈夫です。」「特に
心配なことはないですか?」「ありません。あとは俎板の鯉
です。先生にお任せしますので...。」「わかりました。それ
では今日、宜しくお願いします。」「こちらこそ宜しくお願い
します。」Sは言った。「nakano。よろしく頼むな...。」
私は彼に答えた。「わかってる。できるだけの事はやらせて
もらうから....。」一礼をして私は彼女の病室から退出した。

(次回につづく)
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