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約束(8)
 手術が始まった。開腹して腹腔内をみると腹膜播種
はないものの肝転移が多発し、胃の小彎側のリンパ節
はごろごろとはれていた。
 コッヘル授動すると大動脈周囲にもリンパ節の腫大
が認められた。胃の下部は全体が硬くなっており、胃
を持ち上げようとしても一部が固定されているように
感じられ、腫瘍の切除ができるか微妙と思われた。と
りあえず大網をあけ、胃の後壁を検索してみる十二指
腸の球部は無事で十二指腸側の切断はできそうであっ
た。後壁の一部は横行結腸間膜と膵臓に癒着していた。
癌の浸潤もありそうであったが、横行結腸間膜を合併
切除し膵臓の被膜をはがすことで胃との分離をするこ
とができた。
 これならなんとか胃は切離することはできそうで
あった。予定通り幽門側胃切除術を行うことにした。
 再建は肝十二指腸間膜周囲の胃癌の転移したリンパ
節が大きくなりここに食べ物を通す通路をつくるとす
ぐに閉塞の憂き目にあう可能性がありBillrothⅡ法と
いう小腸と切除の残胃を吻合する術式を選択した。ト
ラブルなく手術は終了した。なんとか手術で大元の
腫瘍はとることができたが、なお大動脈周囲のリンパ
節は累々と腫れており、肝臓にも多くの転移が認めら
れていた。末期に近い状況である。予想される予後は
かなり厳しいものであることは間違いなかった。かつ
ての同級生にこのことを話さなくてはならないのは
なんとも気が重いものであった。だが予想されたこと
ではある。
 手術についての説明を行うため、手術室に併設さ
れている面談室に彼を呼び寄せた。不安そうな表情を
うかべ、彼は看護師に付き添われて面談室に入ってきた。

(次回につづく)
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