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誤報(1)のエントリーは11月26日付けです。最初から読む方はカレンダーで11月までたどって26日をクリックすると誤報(1),(2)のエントリーに入れます。あとは順々に日にちをクリックしていってください。

(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
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春風(26)
 帰りの電車の中で二人は黙っていた。なんともきまず
い訪問であった。精神的に二人とも疲れていた。詩織も
悟もなんともやるせない気分であった。実際、敏子
の反応は予想されたものであった。詩織もなかなか出来
なかった子供が流産したことで周りの人々をがっかり
させてしまったことはわかっていた。敏子にしても期
待が大きかったがためにきつい言葉となってしまって
いるのにちがいない。自分の事を思って敏子なりに言
ってくれているのだからと考えていた。そう考えて
自分を納得させようとしていたのだ。黙っている詩織
に悟は言葉をかけかねていた。ただでさえショックを
うけてしまって詩織だって大変なのに………。全くと
んだ訪問だった…….。実家でのなんとも気まずい雰囲
気の状況を思い起こしながら悟は考えていた。お袋も
言い過ぎなんだよ。一番つらいのは詩織なんだしお袋
がいったことは詩織だってわかりきっていることなん
だから…..。そうこうしているうちに電車は下車する駅
に近づいていた。
 下車する駅が間近になったところで悟は言った。「今日
はお疲れ様だったな……。」突然話しかけられた詩織は
一瞬おどろいた様に悟の方を振り向くと言った。「そうね。
あなたもお疲れ様でした。」「大丈夫か?」「ええ、なんと
か大丈夫よ。今日は私をかばってくれて有難う。」少し間
をおいて悟は答えた。「そんな、たいしたことはしてない
よ。お袋も色々言い過ぎなんだよ…..。」それを聞いて詩織
は言った。「そんなことないわ…..。お義母さんもやはり
私たちの事を心配していってくださってるのだから…….。」

 「詩織さん。あなたね。お仕事も大事だとおもうけど
あなたももう次に妊娠できる時期になったら30なのよ。
 実際に子供がいつまでつくれると思っているの….。それ
だって本当に妊娠できるかだってわからないんだから…。
そこら辺を十分考えてもらったほうがいいわね…….。」

 敏子に言い放たれた言葉を思い起こしながら詩織は
つぶやくように答えた。
(次回につづく)
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【2006/03/31 23:23】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(25)
 「まあ過ぎたことは仕方がないしね。死んでしま
った子供はかわいそうだったけど……。次の子がで
きたら気をつけてもらうこととして。でも次の子も
すぐには妊娠できないんでしょう?」敏子がそうい
うと悟が言った。「なあ、お袋。まだ最初の子が流産
して詩織もショックから立ち直っていないのにそん
な事聞くなよ。少しは詩織の気持ちも考えて物をい
えよな…..。」敏子は息子の言葉を全く意に介せずに
言った。「ショックをうけて当然でしょう。これで
平気だったら気がしれないわよ。それに詩織さんだ
ってもう若くはないのよ。ただでさえなかなか妊娠
しなかったんだから。あなた今、おいくつでしたっけ。」
「29になります。」さらにまくし立てようとしている
敏子に向かって司郎がやや強い語調で言った。「母さん。
それくらいにしておけ。お茶がまずくなる。」敏子は
それを聞くと「そう。それは悪かったわね。」と一言
言って黙りこんだ。気まずい雰囲気が場を覆った。
少しして悟が言った。「まあお袋の言いたいことも
わからなくはないけど。またそれは俺が後日よく聞く
から今日はこれくらいにしてくれ。今日はともかく
流産してしまったことを報告しにきたんだ。心配
かけて済まなかったと思ってるんだ。それでさっき
母さんがいってた今後の事なんだけど、まず生理が
もどってくるまでに少し時間がかかるだろうって。
それで少し周期が落ち着いてきてからがいいだろう
って。半年から1年位は待った方がいいだろうって
話だったよ。」司郎は言った。「そうか。いずれにし
ても大変だったな。まあ詩織さんも早く立ち
直って元気だしてください。」司郎の言葉を聞いて
「有難うございます。」と答えて頭を下げた。

(次回につづく)
【2006/03/30 23:21】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(24)
 悟と詩織はリビングに通された。リビングには司郎がいた。悟は
言った。「父さん、お邪魔します。」司郎はテーブルで雑誌を読んで
いた。雑誌から視線をはずすと司郎が言った。「ああ、悟と詩織さ
んか。まあ遠いところご苦労さん。座ってくれ。」「お義父さん。
お邪魔いたします。」「どうも詩織さん。今回は大変だったみたい
だね。」「ええ色々お義父さん達にもご心配をかけてしまいすいま
せんでした。」「まあ仕方ないよ。こればっかりはね。藤川のご実家
も心配しているんじゃないかい?あちらはなにか言ってきていない
のかな。」「両親とも心配してくれています。母が一回家まできてく
れました。」「そうか。まあまず詩織さんもショックだったろうけど
まずは元気になってもらってね。」「ええ、有難うございます。」台所
からお茶とお茶菓子を敏子がもってきた。お茶を入れながら敏子は
言った。「まあ、詩織さん。大変だったとは思うけど、今回の事は
よく考えてもらわないといけないよ思うわよ。ちょっと色々無理し
ていたんじゃないのかしら…..。」司郎は言った「おいおい。わざわ
ざ大変な中、今日きてくれたんだ。いきなりの挨拶にそれはないん
じゃないか?」敏子は司郎の言葉を遮って言った。「あなたね。そん
なこというけど、大事なことじゃない?次に妊娠したときの事も
あるでしょう?同じこと繰り返されたらかなわないですからね。」悟
が言った。「お袋、いい加減にしろよ。詩織だってそれなりに注意
して生活していたんだ。先生だって、早期の流産は子供の遺伝子異常
とかが原因の事も多いっていってたんだ。詩織のせいにされても
困るよ。それに詩織だって今回のことでかなりショックうけている
んだから。」「悟ちゃんは甘いのよ。おなかの子供が死んでしまった
ことを重大に考えないといけないでしょう。詩織さんもショックを
うけたかもしれないけど。死んでしまった子供の方がかわいそうよ。」
「だから、お袋。それは詩織のせいじゃないっていっているだろう。
いい加減にしろよ。」詩織は言った。「悟さん。やめて。お母様のいう
ことも最もだと思うわ。それなりに自分でも責任を感じています。
お義父さんやお義母さんに心配かけて申し訳ありませんでした。」
敏子は言った。「まあわかってもらえればいいのよ。」

(次回につづく)
【2006/03/29 23:47】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(23)
 その週末に悟と詩織は篠崎の実家に挨拶と報告にいく
ことにした。悟も少し気が進まなかったが実家に報告に
いかないわけにもいかなかった。実家に向かう電車の中
で悟は詩織に言った。「なあ、お袋が色々いうかもしれ
ないけどあんまり気にするなよ。一応、俺たちの事を
お袋なりに考えての事で悪気はないんだ……。」「わか
っているわ…..。でも正直なにを言われるかドキドキし
ているの…..。」「大丈夫だよ。俺もいるから…。」そう
はいっても今回の事を自分の母親があまり好ましく考
えていないことは電話した時になんとなくわかってい
た。ただでさえ妻にとって心理的にデリケートな時期
であるのに….。余計なこといってくれるなよというの
が悟の偽らざる気持ちであった。最寄の駅につくと悟は
篠崎の実家に電話をかけた。「ああ、母さん。今駅につ
いたところだよ。家まで10分位でつくと思うから…..。
ああ、詩織もいっしょだから….。」もうすぐ到着するこ
とを伝えると二人は悟の実家に向かった。実家に到着
すると悟が呼び鈴を押す。インターフォン越しに敏子の
声が聞こえた。「もしもし篠崎ですけど……。」悟が言っ
た。「母さん、悟だよ。今着いたよ。」「いらっしゃい。
今、外に出るわ。」間もなく、ドアが開いて敏子が出
てきた。敏子は詩織を一瞥してから悟に言った。「どう
もいらっしゃい悟ちゃん。お疲れさま。詩織さんも
今回は大変だったわね。」詩織は軽く頭をさげ会釈し
て言った。「どうも今回は非常にご心配をかけてしまい
申しわけありませんでした。」敏子は詩織から視線を
ずらして言った。「ええ、全くね。まあいいわ、父さん
もいるし、まずはお上がりなさいな。」敏子の言葉に
詩織の表情は一瞬こわばった。それに気がつかれない
ように詩織はゆっくり頭を上げ言った。「ええ、お邪魔
させていただきます。」

(次回につづく)

 明日は当直でブログはお休みです。今日は早めに切り
上げて帰ってきました。早寝して明日に備えます。引き
続きつづきを楽しみにしていてくださいね…。
【2006/03/27 21:07】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(22)
 手術のあと2日休んで詩織は会社に出勤することに
した。自宅にいてもなにもやる気が起きなかったし
外にでる気持ちにもなれなかった。第一、悟も仕事に
でてしまえば、友人達も仕事しているわけであるし
いっしょに連れ立ってでかける相手もいなかったの
である。独りで出かけても気が沈むだけであるのは
わかっていたし体調自体は手術の後は悪くはないの
でずっと寝込んでいるのもきつかった。彼女は悟に
翌日出勤するつもりだと伝えた。悟は大丈夫か?と
彼女に言ったが、彼女は家に一人でいるとかえって
つらいし、自分にとってもよくないと思うと答えた。
翌日、会社に出勤すると周りの同僚や上司に「大丈
夫?」とねぎらいのことばをかけられた。彼女は周り
に気を遣わせまいとなるべく明るく振舞うように心
がけた。実際、仕事をしているほうが正直なところ
気が紛れて家にいるよりはずっと良かった。いつま
でも悲しんでいてもつらいだけだわ…….。このつら
い気持ちや悲しみはすぐには消えないかもしれない
けどなるべく気にしないようにしないと…..。時間が
いずれ解決するわ…….。彼女はそう考えた。

 その日の晩、夕食のときに悟は詩織に言った。
 「会社、大丈夫だったかい?」詩織は答えた。「ええ
体調も悪くなかったし、仕事はちゃんとこなせたわ。
仕事をしてたほうが気も紛れるし家にいるよりずっと
いいわ…..。」「そうか……。」「あなた。心配しなくて
大丈夫よ。本当になんていったらいいのかわからない
けど少し気がゆるむとどこからともなく悲しみがおそ
ってくるの。でもこれはどうしようもないことだわ。
 うまく感情を抑えていかないと。悲しんだり、悔や
んだりしながら過ごしても、楽しく笑ってすごしても
同じ1日よ。それだったら少しでも笑って過ごせた方
がいいに決まっているわ。悲しみもいずれ時間が解決
してくれるわ…..。あの子と少しでもいっしょの時間
が過ごせたことが幸せだったと思える時がくると
思う。つらいことだったけどあの子に色々教えても
らった気がするのよ……。お母さんもしっかりしな
いといけないと思うわ…….。」彼女は自分に言い聞か
せるように言った。

(次回につづく)
【2006/03/26 17:53】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(21)
 娘の様子を見て友代は言った。「あんまりつら
ければ、一旦うちにもどってきてもらっても大丈
夫よ。父さんも喜ぶとおもうし….。」詩織は少し
考えてから言った。「気持ちはうれしいけど、多分
家にもどってもつらいのは変わりないと思うわ。
結局、自分がしっかりしないとどうしようもない
と思うし、ただでさえ、悟さんに迷惑かけている
のにこの上、実家に帰るなんてできないわよ。」
「そう……。わかったわ。でもつらくなったら
いつでも戻ってきていいから。なにかあればすぐ
飛んでくるつもりだし….。」「有難う母さん。
気持ちだけで充分よ。今日も本当に助かってる
わ。独りだったらどんな気持ちになっていたこ
とかわからないし……..。」詩織はそう言って
溜息をついた。

 昼食は気分転換に母親に連れられて外に食事を
食べに行った。天気もよく、気候も穏やかであっ
た。このことがなければすがすがしい気分になれ
ただろうにと詩織は思った。昼間の時間帯、普段
なら仕事にでている時間である。小さな子供づれ
の母親と出くわす度に自分が周りから取り残されて
いくような感覚に襲われた。他人をみてそのような
気持ちになる自分にも嫌悪感を抱いていた。どこ
からともなく湧き上がる感情を彼女は必死に押さ
え込もうとしていた。許されるなら思い切り叫び
たい気持ちだった。友代は詩織を気遣いながら自
宅から数駅離れた洋食店につれてきた。友代は言
った。「ここのパスタはすごくおいしいの。少し
おいしいもの食べたら気分も少しは晴れるわよ。」
彼女なりに詩織に気を遣っていることは充分伝
わっていた。詩織は少し申し訳がない気がして言
った。「そうね。ちょっと元気でるかもしれない
わね…….。」

(次回につづく)
【2006/03/25 23:50】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(20)
 詩織は返事をするとアパートのドアをあけた。そこ
には友よの姿があった。友代の姿を確認して詩織は言
った。「お母さん。わざわざ来てもらってごめんなさい。」
「いいのよ。心配だったし。体は大丈夫なの?」「大丈夫
よ。手術うけておなかの子供がでてしまってからは吐き
気も悪心もなくなったし、体はもう大丈夫なの。食欲
もでてきたし……。でも正直かなり精神的にはつらいわ。
ともかくお母さん。中に入って。まだかなりちらかって
いるけど…..。」詩織は友代を部屋にあげるとお茶の準備
を始めた。テーブルに座って友代は言った。「今回は残念
だったわね。でも仕方がないわよ。まずはしっかり休ん
でね…..。あなたの好きな最中を買ってきたから…….。」
台所でお湯を沸かしながら詩織は答えた。「ありがとう。
お母さん。」詩織はお茶をいれてテーブルに運んだ。
「じゃあこれ開いていただきましょうか。」「ええそうま
しょう。」友代は答えた。お茶を飲みながら友代は言った。
「ともかく思ったより元気そうで少し安心したわ。」
それを聞いて詩織は頭を横に振って言った。「とんでもな
いわ母さん。正直なところかなり参っているの……。今
でもまだ現実を受け止められないでいる感じなの…..。」
「そう…….。」「体は楽になったの。でもともかく悲しい
のよ。うまくいえないけど、体全体から悲しみが湧き出
てくるような感じなの。本当に…..。動物的な悲しみって
いえば一番適当かしら…..。あとは悟さんに申し訳なく
って….。結婚して3年たってなかなか子供が出来なく
って不妊症も考えて産婦人科にもいっしょにいってもら
ってたし…..。彼には何も欠陥はなかったの。本当だった
ら相手が私じゃなかったら子供に恵まれていたかもしれ
ないし。そんなこと考えてたらどうにもこうにも…..。
向こうのご両親もがっかりされているでしょうし……。」
涙ぐみながら話す娘に友代は言った。「ねえ詩織。世の中
にはどうにもならないって事はいくらでもあるの。あなた
は精一杯おなかの子供のために頑張ってきたんでしょう。
たとえ短い間でも精一杯育てていたんでしょう。確かに
その子は死んでしまったかもしれないけれど、あなたが
本当に愛してくれていたことに感謝していると思うわよ。
いつまでも悲しんでいたらその子も浮かばれないわよ。」
 「ええ。そうなのよね……..。」詩織は友代の言葉に
そう答えた。

(次回につづく)
【2006/03/23 23:38】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(19)
 次の日は彼女は会社を休むことにした。体は大丈夫そう
であったが、精神的にかなり参っていた。悟も心配であっ
たが出勤しないわけにはいかない。今日は詩織の母親が覗
きにきてくれることになっていた。悟は出勤間際に詩織に
言った。「ともかく今日はゆっくり休んでくれよな。お母
さんにもよくたのんどいたから。」詩織は言った。「ええ、
いろいろ心配かけて悪いわね……。」「そんなことないさ。
詩織がつらそうな顔していると家の雰囲気も暗くなって俺
もつらいからさ、早く元気な詩織にもどってもらいたいし
……。」「ええ、自分でもそうしたいと思っているわ…..。
ただ、皆にあれだけ期待させてこんな結果になって、悟さ
んだってがっかりしたに違いないのに…….。本当に申し訳
ない気持ちが一杯で…..。」「馬鹿だな。別に詩織のせいじゃ
ないんだから…….。」「ええ。有難う。」「じゃあいってくるか
ら……。」悟はそう言ってアパートを出た。

 悟が家をでてから詩織は部屋でボーっとしていた。実際
なにもやる気が起きなかったのだ。体調はよかった。つわり
の気持ち悪さは嘘のようにとれたし、食欲ももどってきた
感じだった。でも気持ちが沈みきっている状態だった。寝室
に行き、まだ敷きっぱなしになっている布団の上に倒れこ
んだ。ここ数週間は本当に慌しい日々であった。思い出すと
医師に流産を宣告されたのがはるか彼方の出来事に思われた。
 手術を受けた時と受けた後のなんともやるせないこの気持
ちから解放される事ができるのだろうか……….。彼女はぼん
やりと考えていた。時計が10時半を指した時にアパートの
呼び鈴が鳴った。ノックと共に聞きなれた声が聞こえた。「
詩織ちゃん。母さんよ。大丈夫?」聞きなれた友代の声で
あった。

(次回につづく)

 ここ2日、なぜかネットに繋がらなくなってしまい今日は
ソフトを入れ替えて再設定してようやく繋がるようになりま
した。機械は便利なものですが、一回不都合が起こると時間
ばかり食ってどうしようもなくなることもあるので怖いです
ね。2日間更新できずにすいませんでした。昨日は半日以上
パソコンに向かって調整に四苦八苦する散々な休日となって
しまいました。
【2006/03/22 23:49】 春風 | トラックバック(0) | コメント(3) |
春風(18)
 彼女が点滴を終え、会計を終えて2人は病院を出た。
 院外薬局で薬をもらった後、病院前でタクシーをつか
まえて家へと向かった。帰りのタクシーの中で悟は言
った。「今日はお疲れ様。」夫の言葉に詩織は答えた。「
ええ、あなたもお疲れ様。」「どうだい。痛みは大丈夫か
い。」「まだ少し痛いけど大丈夫。体は大丈夫だけど
まだ精神的には….。なんだかまだ信じられない感じ
だけど…..。」「そうだよな….。まあ今日はゆっくり休
んで…。会社はどうする…..。数日は休むんだろう?」
「どうしようか迷ってはいるわ…..。どんな感じになる
かわからないし……。多分数日は休むことになるん
じゃないかとは会社には言ってあるけど……。でも
家で独りでいてもきっとつらいし……。」「あんまり
つらければ一時的に藤川の実家に帰ってもいいけど
…..。」「それはいいわ…..。ただでさえあなたにこれだ
け迷惑かけてしまったのに、その上実家に帰るなんて
…..。あなたのお母さんにも何を言われるかもわから
ないし….。それにあなたの傍にいたいし…。」「そうか
….。別に迷惑なんかじゃないよ。子供のことは2人
の問題なんだし……。」悟はそうつぶやく様に答えた。

 家に帰って詩織は少し横になって休んでから夕食の
準備を始めた。妊娠後に続いていたつわりの吐き気
や悪心は不思議なくらいにすっかり消失していた。
 その事がかえって子供を失った事を彼女に強く認識
させ彼女の悲しみを増大させた。

(次回につづく)
【2006/03/19 22:51】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(17)
 悟は面談室に誘導され椅子をすすめられた。医師が話を
始めた。「篠崎さん。掻爬は予定通り施行させていただき
ました。特にトラブルはありませんでした。少し外来で点
滴で様子をみさせていただいて問題なさそうなら本日は
帰っていただくつもりでいます。抗生剤と子宮収縮薬を処
方いたしますのでそれを飲んでもらいます。まれに出血す
ることがありますのでおかしな事がありましたらすぐ連絡
下さい。」「わかりました。」「それで今後の妊娠の事なので
すが、最初の生理が来るまで少し時間がかかると思います。
 子宮の状態が落ち着くまでの時間もありますし、半年位
が目安になるのではないかと考えています…..。」「そうで
すか……。」 一通りの説明を聞き彼は外来で休んでいる
妻の元に看護師に案内された。悟は詩織に声をかけた。
「お疲れさん。大丈夫か?」詩織は悟の顔を見ると言った。
「なんとか大丈夫そう。あっという間だったわ……。薬を
注射されて意識がなくなって….。目が覚めたらすべて
終わっていたわ。なんだかすごくあっけなかった感じよ。」
「そうか…..。」「痛みも大分落ち着いてきた感じだし、体は
大丈夫そうよ。」「まあ数日しっかり休んでもらった方が
いいかな。」「そうね……。それはまた体調みて考えるわ。
きっと何もしていないと気分がどんどん落ち込んでいって
しまう気がするし……。」「そうか。まあ、いずれにしても
点滴終わるまではゆっくり休んでもらって、今日はタクシー
で帰ろうな。」「ええ。」彼女は頷くとまた静かに目を閉じた。

 悟は一旦病院の外に出ると携帯電話で電話をかけた。
 「もしもし、藤川ですが…..。」「ああ、お母さんですか。
悟です。」「ああ、悟さん。どうも今回は詩織のことで
迷惑をかけて……。」友代がそういうと悟は言った。「そん
なことないです。かえって僕が傍にいながらこういう結果
になってしまって。それで今日の手術は無事に終わりました。
 今点滴して休んでいてそれが終われは今日は帰れそうで
す。」「そう。色々大変だったわね。」「まあ、それは仕方ない
ですよ。いずれにしても報告だけはしなくちゃいけないと
思って…..。また何があれば連絡させていただきますので…。」
「わかったわ。どうも連絡ありがとう。」「とんでもないです。
こちらも色々心配をかけてしまって…..。それじゃまた落ち
着いたら詩織にも連絡させますので。」「わかったわ。それ
じゃ。」「ええ、それでは失礼します。」悟はそういって携帯
の通話を切った。

(次回につづく)
【2006/03/18 23:14】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(16)
 受付を済ませて産婦人科の外来に向かう。産婦人科の外来
でしばらく待たされた後、看護師に産婦人科の病棟に2人は
案内された。「ご主人は食堂でお待ちください。」といわれ悟
は食堂で待たされる事になった。彼女は更衣室で着替えたあ
と分娩室に案内された。分娩台に上がると担当医師が現れた。
 「それでは篠崎さん。点滴のラインから麻酔薬を使いますの
で…..。それじゃラボナール10mlゆっくり静注して………。
篠崎さん。点滴入っているところが少し痛くなるかもしれま
せん……。」「はい。」彼女はそう答えると点滴の入っている
部位が少し熱くなる感じを覚えた。それと同時に急激な眠気
におそわれ意識が遠のくのを感じた。遠のいていく意識の
中で下腹部に痛みを感じた。どうして痛いのかしら……。
ぼーっとした意識の中で自分が今どうしているのかさえも
わからない状態であった。痛い…..。誰か助けて……..。
そう心の中で彼女が叫んだとき急激に意識が引き戻される
感覚に襲われた。彼女は意識を取り戻し、自分が手術の
ために分娩台に乗っていることを思い出した。医師が話し
かける。「篠崎さん。わかりますか。無事に終わりました
よ。」彼女は医師の顔を確認してから言った。「ええ。わか
ります。」「大丈夫そうですね。」「はい。」「それでは今日は
化膿止めの薬と子宮を収縮させる薬を出させていただき
ますので点滴で少し外来で休まれてからお帰りください。
もし後から出血してくるようでしたらすぐに連絡してく
ださいね。」「わかりました。」彼女は服を着替えると車椅子
に乗せられた。

 食堂で待っていた悟に看護師が声をかける。「篠崎さん
奥様終わりました。先生からお話ありますのでいらして
いただけますか?」「わかりました。」悟はそういうと席を
立った。

(次回につづく)
【2006/03/17 23:51】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(15)
 その日がやってきた。その日は朝からきれいに晴れ
あがった日であった。手術は日帰りの手術ということ
であったため悟はあえてお互いの実家の両親には手術
の日にちは伝えたが付き添いは自分がするので無理に
は来なくてかまわない旨を伝えていた。自分の母親が
詩織にあまりいい感情をもっていないことを悟は知
っていたし、余計な事を言われて詩織がますますふざ
ぎこむのは彼としても避けたかった。この日は彼が
彼女のそばにいてすべてを支えてやるつもりでいた。
 病院に向かうバスの中で彼女も彼も無言だった。
 天気とうらはらに彼女の気持ちは沈んでいた。ボー
っと窓の外をみていると今までのことが思い出されて
いた。妊娠に気付いたときのこと、どきどきして産婦
人科を受診し妊娠していることを告げられ嬉しかった
時のこと、夫とともに抱き合って喜んだこと。数週間
であったがおなかの中で新たな命が育っていたのが
実感されたこと。そして突然の事態の暗転。泣きは
らしたその夜のこと……。すべてがあっという間に
起こった夢のようであった。彼女は言った。「ねえ
あなた。」悟は彼女の方を向いて言った。「うん。
どうした…….。」悟の顔を見て彼女は言った。
「あなたで良かったと思ってるの。今傍にいてくれ
るのが…….。こんな結果になって、いつもいつも
迷惑かけて本当にごめんね…….。」悟は少し黙って
から言った。「お前は何も悪くないよ…….。あまり
余計な気を遣うなよ……。ただでさえきついんだ
からさ……。」そう言うと悟は窓の外に視線をやった。

(次回につづく)
【2006/03/16 23:55】 春風 | トラックバック(0) | コメント(1) |
春風(14)
 その後、数日彼女は普段どおりに仕事に出て生活して
いた。悟は少しやすんだらとは言っていたが家にいても
塞ぎこむだけであったし仕事をしていた方が気も紛れた
のだ。職場の上司には流産で来週の火曜日に手術である
旨を伝えた。上司は一言、「それは残念だったね….。」と
彼女に言った。同僚達にも今回の件を伝えた。いままで
お祝いの言葉をもらっていた後だけに周りの人々にも
気を遣わせてしまっている気がして、彼女はできるだけ
職場では明るく振舞うように心がけた。だが独りになる
と気持ちがどうしても沈んでしまう状態であった。確か
に仕方がないことであることはわかっているつもりであ
った。自分に大きな落ち度があったとも思えなかった。
だがなぜか死んでしまった子供と夫にたいしての罪悪感
が自然に湧き上がってきてしまうのをどうしようもなか
ったのである。

 その週末、悟は彼女を外に連れ出した。少しでも気分
転換になればという気持ちであった。昼食をとりに入った
レストランには子供づれの家族がちらほらとみられた。
 悟はしまったかなと一瞬考えたが、今日は日曜日だし
多分他の店にいってもたいしてかわらないだろうと考え
た。いずれにしても家にこもっているよりはよっぽど
いい…..。食事をとっていると詩織が悟に言った。「あな
た。いろいろ気をつかってもらって悪いわね…….。」
 悟は言った。「別に気なんかつかってないさ。ちょっと
色々あったからな、気分転換に美味しい物でも食べて
少し出かけた方が俺もよかったし、丁度仕事の関係で
買い物もしたかったから…..。」「そう…..。でも私もよか
ったわ。この子の母親でいられるのもあと2日だけだ
から…..。少しでもいっしょにいられた思い出もできる
し…….。少しはおいしいものも食べさせられたかな
って…..。」「おまえ…..。」「馬鹿馬鹿しいって思うで
しょう…..。もう死んでしまっているのにね…..。でも
わずかの間だったけど私の中にいっしょにいてくれた
のよ….。知らない間にいってしまったけど…..。」
 悟は一瞬言葉を失ったが少し考えてから言った。
「わかった。今日はこの子と過ごせる最後の休日だもの
な…..。いい日にしないといけないよな…….。」
「ええ。」詩織はそういってつぶやいた。

(次回につづく)

 どうもこのところ少しまた忙しくなってきています。
 今日も日が変わったあとの更新です。
 明日は当直のためブログはお休みです。ここのところ
更新が不定期になってすいません。
【2006/03/14 23:53】 春風 | トラックバック(0) | コメント(4) |
春風(13)
 医師の説明を聞いて2人は手術の承諾書に署名した。診察室
を出ると看護師に手術当日の準備などについて説明を受けた。
 様々な説明の書類を受け取ったあと会計窓口に向かった。
 会計を済ませて病院を後にした2人は帰りのバスの中でもお
互い無言であった。二人とも相手にかける言葉を失っていた。
覚悟していたこととはいえ悟自身もショックであったし、彼
以上にショックが大きいであろう彼女にどのような言葉をかけ
ていいかわからない状態であった。彼女にしても何か言葉を口
にすると感情があふれ出しそうで怖くて何も言えない状況であ
った。バスが自宅付近の停留所につく二人はバスを降りると
そのまま自宅のアパートに向かった。アパートについてドアを
あけ荷物を降ろすと悟は言った。「ともかくお疲れさん。大丈夫
か?詩織?」彼女はふーっとため息をつくと言った。「正直、あ
まり大丈夫ではないわ…..。でも仕方ないですものね…..。今
お茶いれるから……。」そういうと彼女は台所に向かった。やかん
に水を入れ火をかけている間に涙があふれてきた。どうしたって
いうの?もう半ば覚悟していたことじゃない?あれだけ仕方ない
って自分に言い聞かせてきたじゃない?どうしてまた涙がでてく
るの?あれだけ泣きはらしたじゃない?もう涙なんて出尽くした
と思っていたのに…….。詩織の肩が細かく震えるのを見て悟は
言った。「詩織……。今回は仕方ないよ…….。無理だとは思う
けどいつまでも悲しんでいても仕方ないじゃないか。俺だって
悲しいよ。でもいくら悲しんだっておなかの子供が生き返る訳
じゃない。悲しんでおなかの子供が生き返るならいくらでも
悲しむけど…..。それに先生も言っていたじゃないか。妊娠早期
の流産は子供の遺伝子の異常が原因の事が多いって言われている
って。決してお前のせいじゃないからって。」彼女は言った。「あ
なた…..。ごめんなさい。わかっているの。わかっているのよ頭
の中では…..。仕方のないことだって。だけど本当に悲しいの。
なんだか体全体から悲しいっていう感情が湧き上がってくるの。
つわりはつづいているのに子供が死んでいるなんて…..。なんだか
悲しくて悲しくて…..。どこからこんなに涙があふれでてくるん
だろう。どうしようもない感情がわきあがってきてしまうの….。
本当にごめんなさい……..。」悟は立ち上がると静かに詩織の肩を
抱いて言った。「なあ男の俺がおなかに宿した命を失った母親の悲
しみのつらさは充分理解するのは難しいと思う。俺が何を言っても
説得力はないかもしれない。でも俺が傍にいるから…..。だから大丈
夫だから。何があっても傍にいるから…….。」

(次回につづく)
【2006/03/12 21:52】 春風 | トラックバック(0) | コメント(4) |
春風(12)
 診察室に彼女は入って椅子に座った。医師は言った。「篠崎
さんですね。先週の超音波では胎児の心拍が確認されなかった
ということですね。また超音波でみてみましょうか……。」彼女
は内診室に移されて再度、経膣エコーが行われた。何度かエコー
の撮影の音が聞こえた。検査を終えて医師は看護師に言った。
「それでは患者さんを診察室に、家族の方も入ってもらってくだ
さい。」「わかりました。」看護師は答えた。

 待合室で悟はボーっと周りの人々を眺めていた。夫といっしょ
に来ている妊婦もいて、多分医師から渡されたのだろう胎児の
エコーの写真をみて楽しそうに話しているのをみるとなんとも
複雑な心境であった。他の人たちはおなかの子供が元気に育っ
ているのを確認して出産を心待ちにしているのだろうな…..。そ
れなのにうちは流産というのはなんとも…….。ここで待っている
のはなんともやりきれない……..。そんな事をぼんやりと考えて
いた。「篠崎さん。篠崎さんのご家族の方…….。」悟は看護師が
そう呼んでいるのに気がついた。彼ははっとして立ち上がると
診察室に入った。彼を見て医師は言った。「篠崎さんの旦那さん
でいらっしゃいますね。」「ええ。」「どうぞお座り下さい。奥様と
おなかのお子さんの事についてお話させていただきますね。」
 彼は妻の横に座った。「じつは先週診察したときの超音波で
胎児の心拍が確認されなかったんですが、やはり今日の検査
でも心拍は確認されませんでした。胎児の大きさも全く大きく
なっていません。胎児は死んでいるものと考えられます。
 多くの場合は胎児が体外に排出されるのですが、篠崎さんの
場合は胎児が死んだまま子宮に残ってしまっている状態です。
いわゆる稽留流産といわれる状態です。このまま置いておく
わけにはいきませんから死んだ胎児を外に出さなくてはなり
ません。掻爬術を行う必要があります。」彼は医師の説明を
半ば呆然と聞いていた。予想された結果ではあったがやはり
事が確定してしまったことにショックをうけていた。
「掻爬術は来週の火曜日に行いたいと思います。静脈からの
麻酔薬で軽く眠ってもらって行います。起こりうる合併症
としては……..。」詩織も悟も事の成り行きを理解しようと
するので精一杯であった。ともかくおなかの子供は死んで
しまっており、そのままになっているので取り出さなくては
ならないということはわかっていた。医師が説明を終え
彼の顔を見て言った。「以上ですが…..。なにかお聞きになり
たいことはありますか?」詩織が無言で悟の方を向いて
彼を見つめた。彼は静かに言った。「特にはないです….。
よろしくお願いします……。」

(次回につづく)

 昨日は緊急手術あり、帰りが遅くなって更新できません
でした。なかなか落ち着かない日々が続きます。
【2006/03/11 23:44】 春風 | トラックバック(0) | コメント(1) |
春風(11)
 次の週の受診日まで彼女はなるべく平静を保つように
努力していた。職場にも通常通りに出た。経過が少し
良くないということで1週間後に再受診しなくてはなら
ないと上司に話をして休みを取らせてもらうことにした。
 多分、前回の医師の表情と話ぶりから察するに流産は
ほとんど確定なのであろうが、一応、1週間様子をみま
しょうという医師の言葉にかすかな期待を持ちたい気持ち
はあった。だが、きっと医師が現実をうけとめる時間を
与えるための方便であろうことは想像はできていた。夫
はあえてこの話は持ち出そうとしなかった。夫の実家に
は夫が今回の事を報告してくれた。あえて夫は何も言わ
なかったが、義父や義母をがっかりさせたことは想像で
きた。稽留流産と診断されてから、夫が不自然に多弁に
なったりして流産のことからはなるべく話題をそらそう
とするのがわかった。それは不器用な夫が自分を気遣っ
てのものであることは感じていた。彼だって本当はすごく
残念に思っているはずなのに………。彼女は夫に対して
申しわけない気持ちで一杯であった。多分、次回病院に
言って聞かされる結果は想像はできた。2人とも重苦し
い思いをいだいている中、受診日が訪れた。

 その日は夫も休みをもらって病院に来てくれた。彼女は
正直ほっとしていた。独りで受け止めるにはあまりにもつ
らい宣告が行われるであろうことは予想できた。早い時間
にきたが相変わらず平日にもかかわらず外来は混雑して
いた。受付をすませ、すこし慣れてきた産婦人科の外来の
窓口に診察券を提出し夫と二人で待合室で待っていた。
 しばらくして彼女の名前が呼ばれた。彼女は夫の方を
向いて言った。「じゃあ、悟さん。いってくるから。」彼は
彼女の方を向いて言った。「ああ、多分あとで僕も呼ばれ
るんだろうね。待ってるから。」彼女は彼に向かって頷くと
診察室に向かった。

(次回につづく)
【2006/03/09 23:19】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(10)
 夕食をすませ、彼女を休ませたあと、悟は実家に電話
をかけた。まもなく電話には母親の敏子が出た。「も
しもし、篠崎ですが……。」「ああ、母さん。悟だけど。」
「あら、悟ちゃん。どうしたの。」「実は、詩織の事なんだ
けど、どうやら赤ちゃん駄目みたいなんだ。」「…………。」
敏子は無言になった。「母さん。聞いてるかい。」「ええ、
聞いてるわよ。一体どういうこと?」「今日、詩織が産婦
人科に行って診察をうけてきたんだ。なんでも超音波で
みて赤ちゃんの心臓の動きが認められないってことで
稽留流産とかっていうらしい。来週にまた検査してやはり
だめなら死んだ胎児を取り出す手術が必要らしいんだ。」
「ふ~ん。そう。」「また、追って報告するけど…….。」
敏子は言った。「それは残念だったわね。全く、なんて
こと…..。だから詩織さんには仕事やめなさいっていって
たのに….。大事な体なんだからって….。」「母さん。
詩織に余計なこというなよ。本人だってショックなん
だから。」「ショックうけてもらわなくちゃ困ります。
大事な子供を流産して大きな顔されてもね。」「それは
言いすぎだろ。詩織だって気を遣ってやってたんだ。
大体、今そんなこと言ったって始まらないだろう。」
「はいはい。悟ちゃんは優しすぎるのよ。言うべきこと
は言っておかないと。詩織さんだって若くはないん
ですからね。」「そんなことはもっと落ち着いてから
話せばいいことだろ。ともかく詩織には余計なこと
いうなよ。お袋の意見は俺が聞いておくから。」「はい
はい。しょうがないわね。父さんにも伝えるから。」
「ああ、頼むよ。それじゃまた連絡するから。」そう
言って悟は受話器を置いた。

(次回につづく)
【2006/03/08 23:42】 春風 | トラックバック(0) | コメント(3) |
春風(9)
 悟が自宅のアパートのドアのチャイムを鳴らした。「はい。」
中から詩織の声が聞こえた。「ただいま。悟だよ。帰ってきた
よ…..。」ドアが開く。「あなた。お帰りなさい。」 少し腫れ
ぼったい眼で詩織は夫を迎えた。「大丈夫か?」「正直、あんまり
大丈夫じゃないわ…..。」「ともかく中に入ろう。詳しく話を
ききたいし…..。」「ええ。夕食の準備は出来てるわ。荷物を
置いて、座って休んでて。」「ああ。」悟はそういって、荷物
を奥の部屋に置きにいった。机に座ると悟は言った。「今日。
大変だったな……。」「ええ…….。」詩織は静かに答えた。
「それでどんな感じだったんだ。先生はなんて言ってたん
だい?」彼女は少し黙ってからゆっくり話し始めた。「今日
病院に行って、エコーをあててもらったの。普通のエコー
ではまだよく見えないかなって、経膣でのエコーをしてく
れたの…..。そしたら…..。」「ああ。」「先生が赤ちゃんの
心臓の動きが認められないって…..。多分、赤ちゃんが
死んでいるだろうって…….。」彼女の目から涙がこぼれた。
「まず間違いないって…..。一週間後にまたエコーで見てく
れるって….。それで赤ちゃんの大きさが変わらなくて、
心臓の動きも認められなければ確実だからって………。
普通は流産なら赤ちゃんは出血といっしょに排出されるの
が普通の流産なんだけど、私の場合は死んでしまったまま
子宮の中に残っている状態らしくて….。稽留流産っていう
状態らしいの……..。それで1週間後にみて、赤ちゃんが
死んだ状態のままなら死んだ赤ちゃんを取り出さなくて
はならないって…….。」悟はじっと黙って彼女の顔を見つめ
ていた。「次の診察のときにはあなたにも来てもらってお話
したいって……。その手術のことも話したいって…….。」
「そうか…….。でも仕方ないよな…….。」「どうして…….。
なんでなの…….。ずっと、ずっと注意していたつもりだっ
たのに……。おなか冷やさないようにしてたし、仕事も
控えめにしてたわ…….。どうして……..。今も軽いつわり
みたいなのは続いているの…….。赤ちゃんが育っている
証拠だと思っていたのに……。全然なんの変化もなかった
のよ…….。全然、信じられないわよ……。あなた、本当に
ごめんなさい。私がもっと気をつけていれば、きっとこんな
ことには……。」「もう、いいじゃないか詩織。起こった事
は仕方ないよ…..。」「本当に、ごめんなさい……。せっかく
出来た子供だったのに……。」話しているうちに涙ぐんでし
まった妻に悟はかける言葉を失っていた。

(次回につづく)
 昨日は帰りが遅くなって更新できずにすいませんでした。
 ちょっとまた忙しくなってきています。インフルエンザも
未だにはやっています。皆様もお体大切にしてください。
【2006/03/07 23:10】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(8)
 彼が仕事を終えて帰り支度をしていると同僚が声をかけ
てきた。「どうだ、篠崎、帰りに一杯やっていくか?」「悪い
今日は嫁さんと家で食事するって約束してあるから……。」
「そうか、嫁さんもおめでただしな。この幸せもんが。さそ
って悪かったな。」「いやいいんだ。また機会あったら遠慮
なくさそってくれ。」「いいのか?」「ああ、それじゃまたな。」
 彼は同僚にそういうと部屋をでてエレベータへと向かった。
 会社を出て、地下鉄の駅に向かう途中で携帯の受診音が鳴
った。自宅からだった。詩織からか…..何だろう。彼は道路の
脇によって立ち止まると携帯電話の受信ボタンをおして電話
に出た。「もしもし、詩織か。どうかしたのか。今、会社を
でて帰る途中だけど……。」「悟。あのね。どうしても急いで
つたえなくちゃいけないことが出来て…..。」「どうかしたの
か?」「実は….。今日、病院に行ったんだけど、診察で稽留
流産じゃないかって言われて……。」「稽留流産?」「ともかく
おなかの赤ちゃんが死んでしまっているみたいなの…….。」
悟は彼女の言葉に一瞬言葉を失い、黙り込んだ。しばらく
お互い無言のままだった。「あなた。ごめんなさい。怒らない
でね。」詩織は涙声で言った。「詳しくは家に帰ってから話を
するわ。」悟は混乱する頭の中で思った。自分もショックだっ
たが、彼女のショックも大きかったに違いない。涙ながらに
話す彼女の声に悟は我にかえった。「ああ。わかった。それで、
お前は大丈夫か?」「正直あまり大丈夫じゃないみたい。どうし
ていいかわからなくなってしまって。ともかく悟につたえなく
ちゃって…….。仕事中だと悪いからって思って今電話したの。」
「わかった。ともかくこのまままっすぐ帰るから…….。」「わか
ったわ。待ってるから…..。」彼女がそう答えるのを聞いて彼は
携帯電話を切った。突然のことでにわかには信じられなかった。
 だが彼女の声は決して冗談などという雰囲気ではなかった。
 独りで病院に行って、赤ちゃんが駄目かもしれないと言われ
た妻のショックは相当なものに違いないことは悟にも想像が
できた。ともかく早く帰ろう。そう考えて悟は駅への足取りを
早めた。

(次回につづく)
【2006/03/05 22:41】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(7)
 彼女は呆然としながら自宅のアパートのドアを開けた。
 荷物をおくと玄関にそのまま座り込んだ。どこをどう
やって家にもどってきたのかも覚えていない状態だった。
 ただただ悲しかった。外にいてこらえていたものが一
気に吹き出てきた感じだった。彼女は床に突っ伏して泣
いた。一体どこからこんなに流れてくるんだろう.....。
あとからあとから涙が流れでて止まらなかった。夫に対
して、そして何よりもお腹の子供に申し訳ない気持ちで
一杯だった。しばらくして彼女の脳裏に夫の顔が浮かん
できた。ともかく悟にしらせなきゃ。でもどうしよう。
今仕事中よね。今電話したら、悟もショックうけるだろ
うし……。正直今、夫に一番側にいて欲しい気持ちでは
あったが、今連絡したら夫も動揺するだろう。終業間際
に連絡した方がいいわよね。彼女はそう考えた。彼女は
立ち上がると荷物を整理して鏡をみた。やだ、化粧が涙
で落ちてボロボロだわ…….。

 友代は夕食の買い物から帰ってきたところだった。電話
のベルがなり、彼女は受話器をとった。「はい、藤川です
が。」「もしもしお母さん。」「あら、詩織ちゃん。どうした
の突然。」「お母さん。あのね。」友代は娘の声が少し震えて
いるのに気づいて言った。「どうしたの。詩織ちゃん。な
にかあったのね。どうしたの。」「実は、お腹の赤ちゃんの
事なんだけど、どうも稽留流産らしいって言われて…..。」
 その後が言葉にならなかった。泣きじゃくる娘の声を聞
きながら友代は言った。「赤ちゃん駄目みたいなの?
そうなのね?」「どうやらそうみたいなの…..。私これから
どうしていいかわからなくなってしまって…..。」「そう。
今から母さんそっち行こうか?」「それはいいわ悪いから。
まだ悟さんにも伝えていないのよ。仕事中に連絡して
動揺させてもと思って。母さん、どうやって悟さんに
伝えればいいかしら。」「どうって、そう正直に伝える
しかないと思うわ。大丈夫よ、悟さんはちゃんと受け止
めてくれるわよ。」「でも、悟にも赤ちゃんにも申し訳
なくて……。私、何か無理してしまったのかしら……。
私のせいで流産ってことだったら…….。」「詩織ちゃん。
しっかりして。どんなに気をつけていても駄目な時は
あるものよ。それにそんなこといっていたって仕方
ないじゃないの。起こってしまったことは。」「そう
なのよね。そうなんだけど…….。」「ともかく時間に
なったら悟さんにきちっとお話なさい。なにかあった
らすぐ母さんいくから。」「うん。わかった。母さん
ごめんね。」「大丈夫よ。」友代が受話器を置くと
和夫が友代に声をかけた。「なんだ詩織からか。」
「ああ父さん。そう、詩織からよ。」「なにかあったの
か。」「ええ…….。」友代は少し言葉を濁らせた。
「またあとでお話しますね。」

(次回につづく)

 明日は当直でブログの更新はお休みです。
【2006/03/03 23:03】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(6)
 診察室の椅子に彼女が座ると医師は言った。「篠崎さん。
非常に申し上げにくいことですが…..。超音波でみさせて
いただいたところ、胎児の心臓の拍動が全く認められない
のです。非常に残念ですが、胎児は死んでいる状態だと
思います…..。」 彼女はにわかには目の前の医師がいって
いることが理解できなかった。「胎児の心臓が拍動して
いないって、一体どういうことですか?」彼女は頭の中が
真っ白になっていくのが感じられた。
「普通は胎児死亡すると子宮から排出されるのですが、
死んでいる状態で胎児が子宮に留まっている状態です。
いわゆる稽留流産といわれる状態です。」「けいりゅう…
りゅうざん….」「そのままとどまるようであれば死亡した
胎児を出すために掻爬する必要があります......。」

 彼女は半ば呆然として病院の会計をすませていた。医
師の言葉が頭の中に渦巻いていた。「1週間後にまたいら
してください。それで胎児の大きさがかわらず、心臓の
動きも見られなければまず間違いないとおもいます。ご
家族の方にも来ていただいて必要なら掻爬術の説明をさ
せていただきますので......。」
 信じられなかった。信じたくもなかった。やっとの思
いで授かった最初の子供のはずであった。自分も嬉しか
った。夫も喜んでくれた。夫がうれしそうに「男の子かな、
女の子かな?ぼくはできればかわいい女の子がいいな。詩
織みたいなね….。」と言っていたのが思い出された。友人
にも義父、義母にも祝いの言葉をかけてもらっていた矢先
である。どうやって伝えよう……。どうやって伝えたら
いいの…..。どうして…..。無理はしていないつもりだっ
た。冷やさないように気をつけていたし、仕事も控えめに
していたつもりだったのに…..。なぜ….。なぜなの..。
 考えがまとまらなかった。帰りのバスの中で涙が自然に
こぼれてきた。目の前の小学生くらいの女の子が彼女に
話しかけた。「おばちゃん。どうして泣いているの?」
 彼女ははっとして答えた。「なんでもないのよ。大丈
夫。気にしないでいいのよ。有難う。」彼女はハンカチを
取り出し涙を拭って少女に答えた。

(次回につづく)
【2006/03/01 23:30】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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