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春風(9)
 悟が自宅のアパートのドアのチャイムを鳴らした。「はい。」
中から詩織の声が聞こえた。「ただいま。悟だよ。帰ってきた
よ…..。」ドアが開く。「あなた。お帰りなさい。」 少し腫れ
ぼったい眼で詩織は夫を迎えた。「大丈夫か?」「正直、あんまり
大丈夫じゃないわ…..。」「ともかく中に入ろう。詳しく話を
ききたいし…..。」「ええ。夕食の準備は出来てるわ。荷物を
置いて、座って休んでて。」「ああ。」悟はそういって、荷物
を奥の部屋に置きにいった。机に座ると悟は言った。「今日。
大変だったな……。」「ええ…….。」詩織は静かに答えた。
「それでどんな感じだったんだ。先生はなんて言ってたん
だい?」彼女は少し黙ってからゆっくり話し始めた。「今日
病院に行って、エコーをあててもらったの。普通のエコー
ではまだよく見えないかなって、経膣でのエコーをしてく
れたの…..。そしたら…..。」「ああ。」「先生が赤ちゃんの
心臓の動きが認められないって…..。多分、赤ちゃんが
死んでいるだろうって…….。」彼女の目から涙がこぼれた。
「まず間違いないって…..。一週間後にまたエコーで見てく
れるって….。それで赤ちゃんの大きさが変わらなくて、
心臓の動きも認められなければ確実だからって………。
普通は流産なら赤ちゃんは出血といっしょに排出されるの
が普通の流産なんだけど、私の場合は死んでしまったまま
子宮の中に残っている状態らしくて….。稽留流産っていう
状態らしいの……..。それで1週間後にみて、赤ちゃんが
死んだ状態のままなら死んだ赤ちゃんを取り出さなくて
はならないって…….。」悟はじっと黙って彼女の顔を見つめ
ていた。「次の診察のときにはあなたにも来てもらってお話
したいって……。その手術のことも話したいって…….。」
「そうか…….。でも仕方ないよな…….。」「どうして…….。
なんでなの…….。ずっと、ずっと注意していたつもりだっ
たのに……。おなか冷やさないようにしてたし、仕事も
控えめにしてたわ…….。どうして……..。今も軽いつわり
みたいなのは続いているの…….。赤ちゃんが育っている
証拠だと思っていたのに……。全然なんの変化もなかった
のよ…….。全然、信じられないわよ……。あなた、本当に
ごめんなさい。私がもっと気をつけていれば、きっとこんな
ことには……。」「もう、いいじゃないか詩織。起こった事
は仕方ないよ…..。」「本当に、ごめんなさい……。せっかく
出来た子供だったのに……。」話しているうちに涙ぐんでし
まった妻に悟はかける言葉を失っていた。

(次回につづく)
 昨日は帰りが遅くなって更新できずにすいませんでした。
 ちょっとまた忙しくなってきています。インフルエンザも
未だにはやっています。皆様もお体大切にしてください。
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