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春風(15)
 その日がやってきた。その日は朝からきれいに晴れ
あがった日であった。手術は日帰りの手術ということ
であったため悟はあえてお互いの実家の両親には手術
の日にちは伝えたが付き添いは自分がするので無理に
は来なくてかまわない旨を伝えていた。自分の母親が
詩織にあまりいい感情をもっていないことを悟は知
っていたし、余計な事を言われて詩織がますますふざ
ぎこむのは彼としても避けたかった。この日は彼が
彼女のそばにいてすべてを支えてやるつもりでいた。
 病院に向かうバスの中で彼女も彼も無言だった。
 天気とうらはらに彼女の気持ちは沈んでいた。ボー
っと窓の外をみていると今までのことが思い出されて
いた。妊娠に気付いたときのこと、どきどきして産婦
人科を受診し妊娠していることを告げられ嬉しかった
時のこと、夫とともに抱き合って喜んだこと。数週間
であったがおなかの中で新たな命が育っていたのが
実感されたこと。そして突然の事態の暗転。泣きは
らしたその夜のこと……。すべてがあっという間に
起こった夢のようであった。彼女は言った。「ねえ
あなた。」悟は彼女の方を向いて言った。「うん。
どうした…….。」悟の顔を見て彼女は言った。
「あなたで良かったと思ってるの。今傍にいてくれ
るのが…….。こんな結果になって、いつもいつも
迷惑かけて本当にごめんね…….。」悟は少し黙って
から言った。「お前は何も悪くないよ…….。あまり
余計な気を遣うなよ……。ただでさえきついんだ
からさ……。」そう言うと悟は窓の外に視線をやった。

(次回につづく)
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