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春風(20)
 詩織は返事をするとアパートのドアをあけた。そこ
には友よの姿があった。友代の姿を確認して詩織は言
った。「お母さん。わざわざ来てもらってごめんなさい。」
「いいのよ。心配だったし。体は大丈夫なの?」「大丈夫
よ。手術うけておなかの子供がでてしまってからは吐き
気も悪心もなくなったし、体はもう大丈夫なの。食欲
もでてきたし……。でも正直かなり精神的にはつらいわ。
ともかくお母さん。中に入って。まだかなりちらかって
いるけど…..。」詩織は友代を部屋にあげるとお茶の準備
を始めた。テーブルに座って友代は言った。「今回は残念
だったわね。でも仕方がないわよ。まずはしっかり休ん
でね…..。あなたの好きな最中を買ってきたから…….。」
台所でお湯を沸かしながら詩織は答えた。「ありがとう。
お母さん。」詩織はお茶をいれてテーブルに運んだ。
「じゃあこれ開いていただきましょうか。」「ええそうま
しょう。」友代は答えた。お茶を飲みながら友代は言った。
「ともかく思ったより元気そうで少し安心したわ。」
それを聞いて詩織は頭を横に振って言った。「とんでもな
いわ母さん。正直なところかなり参っているの……。今
でもまだ現実を受け止められないでいる感じなの…..。」
「そう…….。」「体は楽になったの。でもともかく悲しい
のよ。うまくいえないけど、体全体から悲しみが湧き出
てくるような感じなの。本当に…..。動物的な悲しみって
いえば一番適当かしら…..。あとは悟さんに申し訳なく
って….。結婚して3年たってなかなか子供が出来なく
って不妊症も考えて産婦人科にもいっしょにいってもら
ってたし…..。彼には何も欠陥はなかったの。本当だった
ら相手が私じゃなかったら子供に恵まれていたかもしれ
ないし。そんなこと考えてたらどうにもこうにも…..。
向こうのご両親もがっかりされているでしょうし……。」
涙ぐみながら話す娘に友代は言った。「ねえ詩織。世の中
にはどうにもならないって事はいくらでもあるの。あなた
は精一杯おなかの子供のために頑張ってきたんでしょう。
たとえ短い間でも精一杯育てていたんでしょう。確かに
その子は死んでしまったかもしれないけれど、あなたが
本当に愛してくれていたことに感謝していると思うわよ。
いつまでも悲しんでいたらその子も浮かばれないわよ。」
 「ええ。そうなのよね……..。」詩織は友代の言葉に
そう答えた。

(次回につづく)
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