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誤報(1)のエントリーは11月26日付けです。最初から読む方はカレンダーで11月までたどって26日をクリックすると誤報(1),(2)のエントリーに入れます。あとは順々に日にちをクリックしていってください。

(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
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春風(44)
 そんなある日、友代が病院に見舞いにやってきた。
 友代が詩織の病室に入ってくると詩織はそれに気づいて
「母さん…..。」といった。「どう、大丈夫?」と声をかけ
た友代に詩織は言った。「有難う、母さん。なんとか
大丈夫そう。入院したときはかなりショックだったけど
ようやく状況を受け入れられるようになってきた感じ….。
 だんだん落ち着いてきた気がするわ。」「それで赤ちゃん
はどうなの。」「一応今のところは大丈夫みたい。切迫流産
といって流産しかかってしまっている状態らしいわ……。
ともかく安静にしてなくちゃならないっていうし……。
点滴から子宮の収縮を抑える薬と止血剤を使ってもらって
いるんだけど出血はまだなかなかとまらないの…….。でも
一時より少し落ち着いてきた感じだから…。でもやっぱり
不安よ。前みたいなことになってしまったらって考えてし
まって。もしも前みたいなことになってしまったら私きっと
耐えられないわ……。」
「そう…..。心配よね。こればっかりは母さんもどうする
こともできないし….。ともかくなんとかこの状況をのり
きってもらわないと。」「そうね……。でも正直少しくじけ
てしまいそう。落ち込んでいても仕方ないのは前の子供
に教えてもらったのにね.。本当にだめなお母さんよね。」
「そんなことはないわよ。よくがんばっていると思うわ。」
「でも本当に母さんにはいつも心配かけてごめんなさい。
いつもしっかりしないといけないのに甘えてしまって….。
 悟さんも毎日忙しいのに見舞いにきてくれるし、本当に
申し訳なくて….。」「それは悟さんだってわかってくれて
いると思うわよ。つらい時、大変な時こそ支えあうのが
夫婦なんだから…..。悟さんはなにか言っているの?」
「ともかく今は我慢するしかないんだからって。あせって
もいいことはないからって。」「そう。」「わかってはいるん
だけど……。なかなか自分の中で納得できていなくてね…。」
 詩織はそういってうつむいた。

(次回につづく)
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【2006/04/30 22:23】 春風 | トラックバック(0) | コメント(3) |
春風(43)
 しばらくの沈黙の後、詩織は悟に言った。「一体、何が
悪かったっていうのかしら……。前回も本当に気をつけ
ていたし、今回も前回に増して注意していたのに…….。」
 他の人たちは何事もなく妊娠、出産しているのにどうし
て私だけ……。何が悪かったっていうのよ…….。」詩織
の目にはうっすらと涙が浮かんだ。悟は詩織にかける言葉
を失っていた。「お前は何も悪くないさ……..。どうしよう
もないことってのはあるんだから……。」「あなた…….。
あなたには判らないわよ。おなかの中で命が育っている
のを実感していたのにいきなりそれが駄目になってしま
ったり、今にも駄目になってしまいそうになってしまった
私の気持ちなんか……..。」悟はそれを聞いて黙った。
 気まずい雰囲気が2人の間に流れた。悟が口を開いた。
「多分、お前の気持ちや悲しみの深さは男の俺には分か
らないと思う。それも仕方のないことだ。俺は傍にいて
やるしかやってあげられることはない。」詩織はそれを
聞いてはっとして言った。「ごめんなさい、あなた。つま
らないことを言ってしまったわ…..。」悟は言った。「いい
んだ。お前も疲れているんだよ。まあゆっくり休んでく
れ。俺はなんとか一人でも生活できるから…….。」「色々
気を使わせてしまってごめんなさい。」詩織はそう言って
ふーっとため息をついた。

入院生活は非常に退屈なものであった。ともかく安静に
して流産を避けなくてはならない。ほとんどベット上の
生活で腰も痛くなってくるし、つわりも継続しており、
病院の特有の消毒液の匂いもきつかった。持続で点滴を
つながれ、子宮収縮抑制剤と止血剤が投与された。
 治療を行ってもなかなか出血はとまらないまま4日が
たち5日が経っていた。悟も忙しかったがともかく1度
は帰りに病院に寄って詩織を見舞うようにしていた。
 ともかくおなかの子供のことが心配であった。今の
ところはなんとか大丈夫らしい。出口の見えないまま
日にちが経過していった。何もできないまま時間だけが
経っていく感じだった。自分が世の中から取り残される
ようで非常な不安感に駆られた。詩織は自分に言い聞か
せた。「実際、無理をしていたのよ。おなかの赤ちゃん
が無理をしているって休むように言ってくれているの
だから……。」

(次回につづく)
【2006/04/29 23:09】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(42)
 面談室に通されると医師が悟に一礼した。「どうもご苦労
様です。突然の呼び出しで申しわけありません。」悟は椅子
に座ると「いいえとんでもないです。それで詩織の状態は
どうなんですか?」と医師に問うた。「今日の10時半ころ
に勤め先で出血があってとまらないということで救急車で
こちらまで運ばれてきました。出血は今も続いています。
切迫流産という状態で流産しかかっている状態です。現在
止血剤と子宮収縮抑制剤をつかって流産をおさえようとし
ているところです。今のところエコーでみるかぎりでは
おなかのお子さんは大丈夫なようです。」「そうですか……
…..。」「ともかく出血が収まって状態が安定するまでは入
院が必要です。なるべくベット上で安静にしていてもらっ
て現在の治療でしのいでいく形となります。うまく出血が
とまって状態が安定してくれればいいのですが….。そのま
ま流産になってしまう可能性も否定はできません……。
 このまま落ち着いてくれると考えていますが、またなにか
あればお話させていただきます。」「わかりました。ともかく
よろしくお願いします。」悟はそういって医師に頭を下げた。

 説明をうけてから悟は詩織の病室に戻った。部屋につくと
悟は詩織に言った。「お話聞いてきたよ。」詩織は言った。
「先生はどんなこといってたの?」悟は答えた。「だいたい
お前が言っていたのと同じことだな。流産しかかって出血
してるから薬をつかって安静にして様子をみていくって
ことだった。万一のこともないとは言えないけど治療して
いれば大丈夫だろうっていってたよ。」「そう….。」詩織は
そう答えてうつむいた。

(次回につづく)


【2006/04/26 23:56】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(41)
 悟は詩織に言った。「なんか出血があったとかで救急車で
運ばれたって話だったから、慌ててこちらに駆けつけた
んだ。同僚に仕事を押し付けてね…….。ともかくびっくり
したよ。それでどんな状況なんだ?大丈夫なのか?」詩織
は少し頭をたれて言った。「正直あまり大丈夫じゃないわ。
ちょっとまたショックで…….。突然なの….。、会社で仕
事をしていたら急に出血があってとまらなくなってし
まったの…..。とても驚いたわ……。それで会社の人が
救急車を呼んでくれて….。かかりつけの病院がいいだろ
うって会社からこの病院まで運んでもらったの。すぐに
診察してもらって、先生の話だと切迫流産ていって、ま
だ流産しているわけじゃないけど流産しかかっている状
態みたいなの…….。止血剤と子宮収縮抑制剤を点滴して
ベットに安静にしていなくてはならないらしいわ……。
なにかのはずみで流産してしまう可能性もあるって。」
「そうか…….。でもとりあえずはお前もおなかの赤ちゃ
んも今のところは大丈夫ってことなんだな……。」「本当
にそうならいいんだけど…….。でもまた流産なんてこと
になったら……..。」「まあ余計なことは考えるなよ…..。
ともかく今はまだ流産したわけじゃないだろう。それを
予防するために治療をしているのだろうから…..。」「ええ、
そうなんだけど…..。」詩織と悟が話をしていると病棟
の看護師が病室を訪れ、悟に声をかけてきた。「篠崎さん
のご家族の方。先生がきましたので奥様の病状について
お話をさせていただきたいのですが…..。」悟は振り返ると
「わかりました。有難う。」と答えた。「それではこちらに
いらしてください。」看護師とともに病室をでるとき、悟
は詩織に「じゃあいってくるから。」と言った。詩織は黙
ってうなずいた。看護師は病室から病棟の面談室に悟を
案内した。

(次回につづく)
【2006/04/25 23:35】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(40)
 悟は病院につくと受付の窓口に向かった。「すみません。
救急車で運ばれた篠崎詩織の家族のものなのですが…..。
病室等わかりますでしょうか….。」窓口の事務員は「少々
お待ちください。」といい端末を打ち、検索をかけた。「篠崎
詩織さんですね。お年は30歳の方でよいですか?」「ええ。」
「C棟5階の産婦人科になりますね。この廊下をまっすぐい
かれて2つ目の十字路を右にいってください。渡り廊下を
こえたところがC棟になります。エレベーターで5階まで
いっていただいてそこのナースステーションでまた病室を
聞いてください。」「わかりました、有難う。」悟はお礼を
いうと産婦人科の病棟に向かった。エレベーターを降りて
産婦人科病棟のナースステーションに向かう。窓口で悟は
声をかけた。「すいません。篠崎詩織の家族のものなの
ですが……。」記録をしていた看護師が振り向き悟のそば
にやってきた。「あの….。今日救急車で運ばれたというこ
とで呼び出されてきたんですが…….。」看護師は患者の部屋
番号の板を確認して言った。「少々お待ち下さい…….。病室
は520号室になりますね。先生も今回の件の説明をしたいと
いっていましたので病室でお待ちいただいてよろしいでしょ
うか。」「わかりました。有難う。」悟はそういうと詩織のいる
病室に向かった。一体なにがあったんだろう。急に入院になる
なんて….。まず詩織の傍にいってやらないと….。悟の頭に
様々な考えが浮かんだ。病室は4人部屋であった。病室に入
り各ベットを覗き込む。窓際のベットに詩織はいた。
 詩織と悟の視線があった。悟は言った。「詩織、大丈夫か?」
 詩織は悟の顔をじっと見つめてから言った。「あなた…….。
ごめんなさい…….。」

(次回につづく)

 明日も急遽代行の当直になりました。ちょっと体がきつい
ですけど連休も真近ですしがんばります。明日もブログお休み
になりますすいません。
【2006/04/23 23:52】 春風 | トラックバック(0) | コメント(3) |
春風(39)
 悟は上司のところにいくと言った。「課長、申し訳ない
のですが妻が救急車で病院に運ばれたといま連絡があり
まして、このまま病院にいかせていただきたいのですが。」
 上司は悟の顔を見上げてから言った。「そうか、それは
大変だな…..。今日の取引先との打ち合わせはどうする?」
「とりあえず今日は佐々木に対応してもらおうと考えて
います。一応、いままでの流れも分かってますし、相手側
もよく知っているので今日は僕がいなくても大丈夫だと
思います。もちろんなにかあればすぐ連絡してもらうよう
にしますので…..。」「わかった。それならいいだろう。佐
々木とその打ち合わせだけすませてもらったら今日は帰
ってもらってかまわないから。」「すいません、課長。恩
にきます。」悟は一礼をして上司の机から離れた。同僚の
佐々木に声をかけた。「すまない佐々木。実は妻が急病で
病院に搬送されたんだ。ともかく病院にいかなくちゃなら
ない。今日の取引先との打ち合わせを一任したいんだが。」
佐々木は少し驚いた顔をしていった。「ええっ。突然に
言われても困るけど…..。まあでも事情が事情だから仕方
ないか….。2,3の要点だけ教えてもらえればなんとか
なるかな。」2人は15分ほどで今日の打ち合わせの申し
送りを行った。佐々木は言った。「篠崎、なんとかこれで
うまくやれると思う。はやく奥さんのところへいってや
れ。」「すまない。それじゃ任せたよ。」悟はそういうと
急いで事務所を出た。一体なにがあったというんだ…。
出血っていってたな……。おなかの子供と詩織は大丈夫
なんだろうか……。前回の時のいやな思い出も蘇る。
 まったく……。でも一刻もはやく詩織の側にいって
やらないと…..。医師の話もきかなくてはならないだろう
し…….。悟は様々なことを考えながら歩みを速めた。

(次回につづく)
【2006/04/22 22:27】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(38)
 詩織はどうしようもない不安を抱きながら産婦人科の
外来の処置室に寝かされていた。止血剤と子宮収縮抑制
剤の点滴を受けながら呆然としていた。

 気が動転していたが詩織は這い出すようにしてトイレ
から出て事務室に向かい、同僚の恭子に震える声で声をか
けた。「恭子。ごめん。血性の下り物がどんどん出てきて
とまらないの….。どうしよう…..。」「ええ、詩織。大丈
夫?あなた妊娠してるんでしょう?赤ちゃん大丈夫なの?」
「わからないわ….。でもこれって、流産なのかしら….。」
「ともかくどこかで休んでて、課長に相談するわ…….。」
「わかった。」詩織は恭子に支えられて事務室のソファー
に横になった。恭子は詩織を横にさせると上司に相談に
行った。事情を聞いて上司は救急車を要請した。
 担架で詩織は救急隊員によって救急車に運ばれた。
 「篠崎さんどうしたのかしら…..。」会社で救急隊員に
担架で人がはこばれているというあまりない光景に
周りから視線が注がれる。今起こっていることの不安と
気恥ずかしさで彼女はどうにかなってしまいそうで
あった……。

 「救急車で運ばれたって、どういうことですか?」悟は
電話をかけてきた看護師に問いかけた。「詳しいことは
先生からまたお話がありますが不整出血がかなりあって
運ばれました。多分入院が必要になります。こちらには
すぐ来ていただけますでしょうか?」行くもなにも妻の
一大事である。悟は言った。「わかりましたできるだけ
早く参りますので……。」そういうと悟は電話を切った。
 
(次回につづく)

 明日は当直でブログ更新はおやすみです。
【2006/04/20 23:48】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(37)
 その後、詩織はやや強いつわりに悩まされていたが
仕事も継続していたし普通に生活していた。前のこと
もあり不安はあったが心配していても仕方のないこと
である。大丈夫、なんとかなるわ…..。彼女は自分に
そう言い聞かせていた。無事に4ヶ月の健診を終え、
おなかの赤ちゃんは無事にそだっていることが確認さ
れていた。「大きさも順調に大きくなっていますし、
大きな問題はないと思いますよ…..。少し胎盤が子宮
の出口に近い感じはありますけど問題なさそうです。」
「そうですか…..。」医師の言葉のひとつひとつが気に
なってしまうのが自分でもわかった。子宮の出口に
近いって?でも先生が大丈夫っていってるんだから
大丈夫よね……。色々な考えが頭の中を駆け巡る。
 でも心配したって仕方ないことなのだ。こればかり
は授かりものなのだから…..。なるようにしかなら
ないし、自分なりに出来るだけ気をつけているのだ
から…..。
 
 17週に入ってまもなくのある日、彼女は勤める会社
の事務所で書類の整理をしているときだった。詩織は
「あらっ」と思った。どうも多量に下り物があったよう
だ。「やだっ。服を汚しちゃう……。」と彼女は心の中
でつぶやいて同僚に一言かけトイレに向かった。下着
を下ろしてみると血性の下り物がでていた。彼女は背
筋に冷たいものが走るのを感じた。拭いてもおさえて
もあとからあとから血性の下り物が出てくる。
出血がとまらない……。一体どういう事?何があった
の…….? 彼女は頭の中が真っ白になるのを感じていた。

 仕事中の悟の携帯電話が鳴った。悟は電話をとった。
「もしもし、篠崎ですが…..。」「もしもしお忙しいとこ
ろすいません。こちらH総合病院の看護師の笹川と
いいます。篠崎詩織さんの旦那さんでよろしいでしょう
か?」病院から?悟は戸惑いながら答えた。「はい。そう
ですが…..。」「実は奥様が救急車で当院に運ばれまして…。」
 悟は一瞬息を飲んだ。
(次回につづく)

 昨日は緊急手術があり更新を断念しました。仕事の方はなか
なか落ち着かない状態がつづいていますが元気に乗り切ってい
きたいと思います。
【2006/04/19 23:58】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(36)
 その夜、悟は詩織の妊娠の報告のために実家に電話した。
 電話の呼び出し音の後に敏子の電話に出る声が聞こえた。
 「もしもし篠崎ですけど…..。」「もしもし、母さん。夜分
にすまないね。悟だよ。」「ああ、悟ちゃん。どうしたの。」
「実は詩織の事なんだけど。どうやらまた妊娠したみたい
なんだ。今日、病院に行ってさ、8週越えたくらいだって。」
「そう。それはおめでとう。良かったわね。前からちょうど
1年位かしら。思ったより早くまた子供が出来てよかった
じゃない。」「ああ。お蔭様でね。ともかくしらせなくちゃ
と思って今電話かけたんだ。」「そう。今回は前みたいな事
がないようにしてもらわないといけないわね。」「母さん。
別に前の流産だって詩織のせいじゃないんだから…..。」
「全く悟ちゃんは甘いんだから。お仕事も大切かもしれ
ないけどね……。」「まあ母さん、ずいぶんな挨拶だな。
それくらいにしておけよ。今日は素直に詩織が妊娠した
ことを喜んでもらいたかったんだから……。」悟の言葉に
敏子は続けようとしていた言葉を飲み込んだ。「わかった
わ。ごめんなさい。今日は連絡ありがとう。ともかくお
めでとう。今回は無事に赤ちゃん育ってくれるといいわ
ね。」「ああ。今回はきっと大丈夫さ。」「そうね。今、
父さんもいるから電話かわるわね。」「ああ、たのむよ。」
しばらく電話の保留音が聞こえたあと司郎が電話にでた。
「もしもし、悟か。」「ああ、父さん。僕だよ。」「なんだ
って。詩織さんまた妊娠したんだって。」「ああ、そうな
んだ。今日病院にいってね。予定日は来年の3月25日
だってさ。」「そうか。ともかくおめでとう。」「有難う。」
「まあ詩織さんも体を大切にしてもらって元気な子供を
生んでもらわないとな。詩織さんによろしくいっておいて
くれ。」「わかった。そうするよ。」「まあ、母さんも色々
いうけどお前達を心配しているからだからあまり気にす
るなよ。」「ああわかってる大丈夫だよ。それじゃまた
何かあったら連絡するから。」「わかった。そうしてくれ。」
「じゃあ父さんまたね。」悟はそう言うと受話器を置いた。

(次回につづく)
【2006/04/17 23:31】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(35)
  病院の会計をすますと2人は病院を出た。悟は詩織に
いった。「ともかくよかったな。赤ちゃんも元気だという
し。」詩織は悟の顔を見て言った。「有難う。まずはほっと
したわ。でもこれからね。前みたいなことがあっては困る
し……。」悟は言った。「今度は大丈夫さ。まあ体を大切に
してもらって無事に出産までこぎつけてもらわないといけ
ないな。」詩織は言った。「もちろんよ。またあんなことに
なったら私耐えられないわ…….。」「まあそんなこと考える
なって。ともかく今日はお疲れだったな。」「あなたもね。
折角の休日だったのに結構待たされて大変だったでしょう。」
「なに、大したことじゃないさ。おまえだってつわり結構あ
ってつらいんじゃないのか?」「正直そうね。なんだか胃が
押し上げられるみたいでつねになにかむかむかしている
感じね……。」「まあ、今日は早く家に帰ってゆっくり休んで
くれよ。」「有難う。今日はお言葉に甘えてそうさせてもら
うわ…….。それでご実家への報告はどうするの?」「今日
僕が電話夜にしておくよ。親父もお袋も喜ぶとおもうよ。
お袋もあんなこと言うけど結構心配してくれていたしな。」
「そうね。そう思うわ……..。」と詩織は答えた。

 自宅につくと詩織は荷物をおいて悟にお茶を入れた。悟は
詩織に言った。「今晩、うちの実家には連絡いれておくから。
藤川の家にはどうする。僕から連絡をいれてもいいけど…。
お前が直接連絡したほうがお母さん喜ぶんじゃないのか?」
詩織は椅子に座りながら言った。「そうね。前回の事でも
かなり心配していたし…..。私からまた後で連絡いれてみる
わ……。」「そうだな。きっとお母さんも色々話したいと
おもってるに違いないからな……。」悟はお茶を飲みながら
つぶやくように言った。

(次回につづく)
【2006/04/16 18:23】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(34)
 診察室に入ると医師が詩織に声をかけた。「篠崎詩織さん
ですね。まずはお座りください。」彼女は「はい。」と答える
と椅子にすわった。「昨年に流産されていらっしゃるんです
ね。」詩織は「ええ。」と答えた。「生理はそのあと順調にきて
いましたが今回、生理もとまりましたし基礎体温も上がった
ままになっていますので市販の妊娠検査薬で確認してみたら
陽性だったので。」「そうですか。尿の検査でも妊娠反応は
陽性です。それでは診察してみましょうか…….。」詩織は
内診台に移され、内診、経膣エコーが行なわれた。「何も
問題はないに決まっているわ…..。」彼女は自分に言い聞か
せながら検査を受けていた。一通りの診察と検査を終え
彼女は診察室にもどるように言われた。
 彼女が椅子に座ると医師は彼女に言った。「赤ちゃんも
元気そうですね。おめでとうございます。エコーの所見
での大きさだと8週の半ば位のようですね。」詩織は
ほっとして言った。「そうですか。有難うございます。」
「今日は旦那さんもいらっしゃるのかな?」と医師は彼女
に言った。「ええ。」と詩織が答えると医師は言った。「それ
では旦那さんにも入ってもらいますか…。」看護師に呼ばれ
て悟も診察室に入ってきた。医師は言った。「旦那さんで
すね。どうぞお座りください。」悟は椅子をすすめられて
座った。医師はつづけて説明を行なった。「妊娠反応は
陽性でした。エコー上、赤ちゃんも元気そうです。大きさ
は8週を丁度越えたところですね。こちらがエコーの写真
になります。」医師は2人にエコーの写真を差し出し見せた。
「ともかくおめでとうこざいます。前回の流産はありまし
たが今回は無事にいってもらいたいと思います。くれぐれ
も大切にしてください。」医師がそういうと悟は「どうも
有難うございます。」といって頭を下げた。

(次回につづく)
【2006/04/15 23:52】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(33)
 その週の週末に詩織と悟は2人で病院に行くことにした。
 二人でアパートからバス停に向かう道で悟は詩織に言った。
 「大丈夫かい?」「大丈夫よ。正直、ちょっと緊張している
けど…..。あなたもいるし。」「ならよかった。今日はいい結果
が聞けるに違いないさ。」「私もそう信じているわ……..。」
 病院に近づくにつれ二人は無言になった。詩織は正直なと
ころ忘れかけた記憶がよみがえってきそうで嫌であった。
 だがそんなこと考えていてもしょうがないわ…..。と彼女
は自分に言い聞かせていた。
 病院について窓口で手続きを行う。意識していなくても
1年前の情景が思い浮かぶ。「あの時と全く変わっていない
わ……。」詩織は思った。あの日の事が否応なく思い出される。
二人は産婦人科外来に向かった。週末の外来はいつも混雑
している。悟は言った。「これは結構また待ちそうだね……。」
詩織は答えた。「まあそれは覚悟はしていたから。ゆっくり
待つしかないわ…..。」彼女はふっと溜息をつくと待合室の椅子
に座った。看護師にもらった問診表にいままでの経過を書き込
んで窓口に提出して待っていると彼女は採血と検尿に呼ばれた。
 検査を終えて詩織は悟の元にもどってきた。悟は詩織に言った。
「まだ結構かかりそうだね。」「ええ。まだまだ順番待ちの人
たくさんいそうだしね……。」「大丈夫かい?」「大丈夫よ。」
 軽いつわりもあり待っているのは正直少しつらかったが
詩織はなるべくそれを悟に知られないように微笑んだ。
 しばらくして看護師が彼女を呼んだ。「篠崎詩織さん。
中待合にお入り下さい。」詩織は立ち上がって悟に言った。
「じゃあ、あなたいってくるわ。」悟はうなずいて言った。
「ああ、ここで待っているから…..。」詩織は悟にふっと微
笑むと中待合室に向かった。

(次回につづく)
【2006/04/14 23:55】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(32)
 その日の夜に詩織は仕事から帰ってきた悟に言った。
 「あなた。私どうやら妊娠したようなの。」悟は詩織の
顔を見ると言った。「本当かい?」「まだ病院に行ってな
いからはっきりしたことはいえないけど……。生理もと
まっているし、今日妊娠検査薬で調べてみたら陽性にで
ていたからまず間違いないと思うわ……。」「そうか。
それはよかった。」「ええ、それであなた。お願いなんだ
けど今週の土曜日にいっしょに病院に行って欲しいの。
いいかしら。」詩織の言葉に悟は少し考えて言った。
「ああ、多分大丈夫だよ。よっぽどの事がなければ必ず
都合をつけるさ。」「本当に?」「ああ。今度の子は元気に
育ってくれるといいな。」「ええ。あんな思いはもうたくさ
ん。1年たった今でも思い出すと胸が締め付けられる感じ
がするの…..。でも今度は大丈夫だと思うわ…..。元気に
生まれてきてもらわないと……。」彼女は自分に言い聞か
せるように言った。「それで、あなた…..。ご実家には
報告どうしようかしら….。」悟は少し黙ってから言った。
「まあ妊娠が確定してからでいいんじゃないか。あまり
早まって知らせて違っていたっていうとまた話が面倒に
なってしまうしな…..。」「そうね…..。」「病院いってはっき
りしたら知らせればいいさ……。」「わかったわ。そうしま
しょう。」そういうと詩織は台所に向かった。その背中に
向かって悟は言った。「詩織。」詩織は悟の方に振り返った。
「何?」「つらかっただろうがよく頑張ったな。とりあえ
ずおめでとう。」詩織は微笑んで答えた。「有難う。」

(次回につづく)

 どうも祖父の一周忌で実家にこの週末にいって、週明け
からはちょっと忙しくなってしまって昨日は当直だった
りして更新が数日滞ってしまいました。読者の方々に
少し心配かけてしまったのではないかと思います。
 今日は当直明けで疲れもたまってきていたので早めに
帰ってきて更新しました。仕事が忙しくなって一時的に
更新が滞っても基本的には気長にこつこつ続けていく
つもりですので心配しないで引き続き覗きにきてくだ
さいね。今後ともよろしくお願いいたします。
【2006/04/13 20:31】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(32)
 つらい出来事を乗り越え、二人の関係はより落ち着いた
ものとなり次第に自然な関係にもどっていきつつあった。
 ときおり自然に沸き起こる悲しみが詩織をおそってきた
が、落ち込んだり、悩んだりする時間は短くなった。時間
が次第に彼女の悲しみを和らげていっているのが彼女にも
わかった。時間の経過とともに仕事も夫婦関係も概ね順調
にいっていた。「どうであれ、今は環境的に恵まれているわ
…….。それなりに幸せなんだと思う…….。一回はだめだっ
たけどまた次もあるわ。亡くなった子供が短い間だったけど
色々教えてくれた。くよくよしていたって亡くなった子供
は帰ってこないわ。でも短い間だったけどいっしょにいれて
本当によかった。本当に有難うって言ってあげられるように
ならないと。悟さんもついているわ。大丈夫、まだがんば
れるわ………..。」流産して5ヶ月ほどで生理がやってきた。
その後も不順な時もあったが次第に安定していった。

 流産から1年半経過していた。詩織はなんとなく一日中
だるい感じと胃がおされるような感じが続いているのに気
づいていた。順調にきていた生理が2ヶ月間こない。詩織
は自分の体の変化に新たな生命が宿った感覚をぼんやりと
感じていた。夫にはまだだまっていた。ある日の仕事の帰り
に薬局で妊娠検査薬を購入した。悟より早く自宅についた
彼女は妊娠検査薬で尿を検査してみた。しばらくして陽性
であることが表示されたのを確認した。なんともいえない
嬉しいような不思議な感覚だった。「この子は元気に産んで
みせるわ…….。絶対に………。」彼女は心の中で静かにつ
ぶやいた。

(次回につづく)

 今日も結構忙しかったですがなんとか一段落つけて帰
ってきました。明日と明後日は祖父の一周忌で地元に泊
りがけで帰るのでブログ更新お休みになります。それこ
そ自分で事故を起こさないように気をつけて運転していく
つもりです。

【2006/04/07 23:38】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(31)
 悟と落ち着いて話ができたことで詩織も少し気持ちが
落ち着いた。少なくとも悟が自分のことを大切に考えて
おり、それが今回の流産で変わることがなかったことが
わかったことが彼女を安心させたのである。もちろん流産
したことで彼女は死んでしまった子供に対してまず一番
申しわけなかったという気持ちが強かったが、その次に悟
に対して申し訳ないという気持ちが強くあった。それは
なかなか妊娠しなかったことで、周りからのプレッシャー
を感じていた中での待望の悟の子供をお腹に宿したにもか
かわらず流産してしまった。(彼女の中ではさせてしまった
という思い込み)ということへの罪悪感であった。
今回流産したことで向こう1年は妊娠は許可されない
という現実がより一層彼女の罪悪感を強いものにしていた。
1年経ってしまうと自分は30になってしまう。いまま
でもなかなか妊娠しなかったのに、年を重ねれば条件は悪
くなる…….。初産での流産……。本当にまた妊娠すること
ができるのかという不安。また妊娠しても流産してしまう
のではないかという不安が彼女を押しつぶしそうであった。
その心の葛藤の中で、表面上は平常を装ってはいたが、
内心のどこかで今回のことで悟から離婚を宣告されること
も半ば覚悟していた部分もあったのである。
 今回話したことで悟の詩織に対する思いが妊娠、出産
の成功の有無で左右されることがないことが確認できた
こと、悟が決して表面上の同情の言葉をかけているだけ
でないことを詩織は確信できた。そのことは逆に彼女の
愛する人の子供が欲しいという気持ちを強くさせた。

(次回につづく)

 昨日の当直はとんでもなく忙しかったです。高速道で
の交通事故の患者さんが2人同時に運ばれてこの対応で
手一杯のところに救急車が絶え間なく患者を搬送されて
くるという状況でここのところでは一番あたった当直で
した……。今日はすこしふらふらの状態で更新しています。
 皆さんお体も医療資源である医者も大切にしてくだ
さいね…..。とりあえずお休みなさい…..。
【2006/04/06 23:58】 春風 | トラックバック(0) | コメント(4) |
春風(30)
 次の週末に詩織と悟は連れ立って外出した。天気はよく
外出びよりであった。昼食をとるためにレストランに2人
は入った。食事をとりながら二人はたわいのないことを話し
ていた。悟は言った。「仕事の方はどうだい。だいぶ調子の
方ももどってきたのかい?」詩織は答えた。「まあまあね。
ほとんど元通りに仕事できているし、大きな問題はない
わ。体の方も調子は悪くないし…..。」「そうか……..。」
「その後、お母さんの方はなにかいってきているのかしら。」
「特には何もいってこないよ。母さんもああはいっている
けど母さんなりに心配しているんだ。特に悪気があるわけ
じゃないから気にしないほうがいいよ。」「そうね。それで
悟さん。」「なんだい?」「悟さんは今回の件についてどう
考えているの?」「おいおい、それはどういうことだい。」
「その、今回の流産のことなんだけど。正直いって今回の
事は私にとっては本当にショックだったの。本当にまた
妊娠しても同じ事がおこってしまうんじゃないかと心配な
の。もしまた同じようなことが起こってしまったら私耐え
れられないと思うの…..。」「うん…….。」「本当に子供は
欲しいの。あなたの子は欲しいわ….。でもまた妊娠でき
るかもわからないし、妊娠したとしてもまた流産して
しまったりしたらと思って……。」「詩織。お前には本当
につらい思いをさせてしまっていると思う。でも、子供
に関しては授かりものだからどうしようもないしおまえ
のせいじゃないから。たしかに妊娠できないかもしれない
し、妊娠してもまた流産してしまわないとはいえないと
は思うけど、今からそんなこといっても仕方ないと思う
よ。そうなったらそうなったときでそのときに考えるし
かないじゃないか。」「でも、私、悟さんの子供を生めな
いかもしれないのよ…。」「そんなのまだ決まってないじゃ
ないか。それにどうしても子供ができなければ養子をと
ったていいんだし。」「悟さん…..。」「まああまり気にする
なよ。とりあえず今はお前が健康でいてくれればいいんだ
から……。」悟はコーヒーを口に運び窓の外を見ながら
つぶやくように言った。

(次回につづく)
 今日は少し帰りがおそくなりました。明日は当直なので
ブログはお休みしますね。
【2006/04/04 23:52】 春風 | トラックバック(0) | コメント(1) |
春風(29)
 友代が言った。「ねえ詩織。物事には自分ではどうしよう
もないこともあるの。努力してもどうしようもないことが
ね。今回のこともそういうことなの。自分を責める必要は
ないわ。それに悟さんが今回の事であなたを責めたりは
していないんじゃないの?」「悟さんは今回の事では私の
ことは何もいわないわ…..。どう思っているかはわからない
けど…..。」「じゃあ、それでいいじゃない。」「でも……...。」
「じゃあ、直接に悟さんに今回の事をどう思っているか率直
に聞いてごらんよ。一回の流産くらいで女を見放すような
人ではないと母さんは思っていたけど。だからこそあなたは
ついていこうとしたんではなかったのかしら。」「それはそう
なんだけど…….。」「ねえ、詩織。結局はあなたたちの事な
の。母さんには励ましたり、傍にいてあげることはできる
けど、結局はその悲しみやつらさは自分で乗り越えていく
しかないのよ。目の前の問題は自分で片付けないかぎりは
無くなることはないわ……。そのつらさを代わってあげら
れれば代わってあげたいけどそれはできないし、すんでし
まったことは元にもどすことはできないわ。でもあなたと
悟さんにはまだまだ色々な可能性があるはずだし、この困
難を乗り越えていくことがきっとできると思うわ。くじけ
ないで、人生は長いのよ。その長い道のりを共に歩くとあ
なたが誓った相手を信じないと…..。大丈夫。あなたたち
ならきっとうまくいくわ。このことをバネにしてきっと
もっといい関係になれると思うし、またいい子に恵まれる
と思うわ…….。母さんそう信じてる……。」「母さん…..。」
「ともかくぎくしゃくしてるならもう一回きちっと悟さんと
話をしてみたらいいよ。おまえの気持ちを思いっきりぶつ
けてみればいい。きっと答えてくれると思うよ…….。」
友代はそういうと詩織は呟くように「そうね…..。母さん。
今日は有難う。」といった。

(次回につづく)
【2006/04/03 23:42】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(28)
 悟が会社の飲み会で帰りが遅くなったある日、詩織は外で
友人と食事をとって家に帰ってきた。アパートに一人でいて
ぼんやりとテレビを見ていると電話がかかってきた。詩織は
電話をとった。「はい、篠崎ですが…..。」「ああ、詩織かい。
母さんだけど。」友代の声だった。「ああ、母さん。」「その後
どうかなと思ってね。大丈夫かい。」「うん。まあまあね。
体の調子はいいんだけど…..。悟さんは気を使ってくれている
し…。」「じゃあとりあえずは落ち着いているのね。」少し考えて
詩織は言った。「どうなのかな……。うまく言えないんだけど
なんとなくギクシャクしている感じなの….。」「ギクシャク
しているって…。どういうこと?」「なんていうのかな。う
まく説明できないんだけど、今までの自然な雰囲気が無くな
ってしまったっていうか。」「そうなんだ。でもまだ流産から
間もないししょうがないんじゃないかしら。2人ともショック
だったろうし……。」「そうね….。」「時間がたてばまた元通り
になるわよ。いずれまた子作りもしなくちゃならないし。」
「母さん。本当の所、正直、今回の事で少し妊娠するのが
怖くなってしまったの。本当に手術を受けたときの悲しさ
やつらさといったら言葉には言い表せないくらいのものだ
ったの。あんな思いをまたしなくちゃならなくなってしま
ったら私正気でいられるかわからないわ…..。」「詩織…。」
「それに、このまま悟さんといっしょにいていいのかしら
っていう考えが浮かんできてしまって….。」「それはどうい
うこと?」「だって、私でなかったら悟さんだってこんなこと
で苦しまなくてもよかったかもと思ってしまって…..。」
二人の間に沈黙が流れた。友代は言った。「詩織。今回
つらかったのはよくわかるわ……。でもあなた以上に
悟さんだってつらいと思うわよ。ましてやあなたがそんな
事を考えているんならなおさらね。亡くなった子はそれが
運命だったんだと思わないと…..。」

(次回につづく)
【2006/04/02 18:42】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(27)
 家に帰ってから詩織は努めて明るく振舞った。
あせったて悲しんだって何も変わりはしないわ
……。いちいち悲しんでいたら悟さんだってつ
らくなってしまうし…..。夕食の時、悟もそんな
詩織の様子をみてあえて今日の訪問の事はふれな
いようにしていた。ここのところの仕事関係の話
などたわいのないことを話すようにしていた。明
日からはまたお互いに仕事にでなくてはならない。
二人はその日は早めに床に入った。寝る前に悟
は詩織に言った。「なあ、余計な事は考えなくてい
いからな。子供はまた落ち着いたところでつくれ
ばいいんだから……。」詩織は悟を見てから言った。
「そうね。わかっているわ……。本当に心配かけ
て悪いわね。私は大丈夫よ。大丈夫でないといけ
ないわよね……。」

 その後、2人は以前の生活にもどったように
見えた。お互いいっしょに朝食をとり、出勤し、
連絡をとっていっしょに夕食をとった。表面上
は以前と何も変わらないようであった。しか
しながらなんとなくお互い気をつかってしまい、
いままでの自然な雰囲気が失われていた。悟も
詩織もこの不自然さにとまどっていた。見えな
い壁が2人の間を隔ててしまったかのようだっ
た。お互い特に嫌いになったわけではなかったし、
今回のことでお互い気を遣いあっていたはずなの
だが…..。時間さえ経過すれば流産した子供に対
しての申し訳なさや悲しみは薄れるものだと詩織
は思っていた。だが悲しみが消え去ることは
なかった。どこからともなく湧き上がる感情を悟に
漏らしたい気持ちはあったがそれを口に出すこと
が躊躇われた。2人ともお互い苦しんでいた。そん
な二人の思いと関係なく時だけが静かに流れていた。

(次回につづく)

【2006/04/01 21:54】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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