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誤報(1)のエントリーは11月26日付けです。最初から読む方はカレンダーで11月までたどって26日をクリックすると誤報(1),(2)のエントリーに入れます。あとは順々に日にちをクリックしていってください。

(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
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春風(125)
 私は再びご家族を面談室に入れてお話することにした。
 ともかく内視鏡での止血術自体はなんとかできたのである
しご家族を安心させてあげる必要があった。面談室に改めて
ご家族を呼び入れる。3人は緊張した面持ちで面談室に入って
きた。私は言った。「まずはおかけください。」3人は軽く
会釈すると椅子に座った。私は内視鏡の写真をテーブルに出し
て言った。「まず先ほどまで出てきていた出血の場所はここ
になります。」私は写真を指し示しながら説明した。「胃の
上の方に潰瘍が散在していまして、そのうちの1つの潰瘍の
血管が切れてこのように出血していました。この部分が今回
の主な出血源であったといえます。この部分の止血自体はな
んとか内視鏡でできました。これで今までのような大量の
出血はとまったと考えていいでしょう。」3人から少し安堵
の溜息が漏れた。「クリップで止血を行い、止血剤のトロ
ンビンを撒いてきています。止血自体はうまくいったといえ
ると思います。ですが、他にも潰瘍があり、他の部分での
再出血の可能性もあります。今のところ胃の潰瘍の薬と
止血剤にて治療をしていますが......。もし再出血を起こす
ようだとかなり状況としては厳しいと考えられるでしょう。」
 敏子は言った。「でも内視鏡での止血はうまくいったん
ですよね? 大丈夫なんですよね?」「いや、お母さんそれ
はなんとも.....。」「大丈夫だと言ってください!」敏子は
泣き崩れるように言った。「おい、ちょっと落ち着け。先生
にそんなこといったってどうしようもないだろう。」「だ
ってあなた.....。」「まあお母さん。いずれにしても今の
状態自体がかなりきびしいんです。今の治療を継続していて
も他の部位から同様の出血が起こっても全然おかしくない
状態なんです。それに問題なのは.....。」「問題って、他
になにがあるというんですか?」敏子が問い詰める。「今の
潰瘍に対しての治療の間は肺梗塞の治療を中止しておかなく
てはならないのです。また血栓が飛んで肺梗塞を再発する
可能性があります。しかしながら今の状況でヘパリンを再開
すれば致命的な再出血が起こる可能性があります。ですから
潰瘍が一旦出血が大丈夫と考えられる状況になるまで抗凝固
療法はできないということになります。」「もしまた肺梗塞
が起こったらどうなるんですか?」司郎が私の顔を見ながら
言った。「その梗塞の大きさによりますが.....。大きい
梗塞が起こった場合は.....。」私は少し息をついて言った。
「突然死のように心肺停止が突発的に起こる可能性があり
ます........。」詩織はそれを聞いて息を呑んだ。面談室は
重苦しい空気の中、一瞬の静寂につつまれた。

(次回につづく)
 
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【2006/09/30 23:46】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(124)
 動脈性に出血している部分にクリップをかける。硬い感じ
はあったがうまくかかってこの部分の出血は止めることが
できた。「ふうっ。」私も飯島も息をついた。「なんとか
うまくいきましたね。」「ああ、だがこれだけで済むかな?」
 私はそういうと水で胃の中を洗って血液を洗い流して
全体像を確認しようとした。胃全体にびらんがあり、胃の上
部に深めの潰瘍が散在していた。AGML(急性胃粘膜病変)に
潰瘍を併発したような所見だった。一番出血していた部分は
止めることができたが、またどこからか出血してもおかしく
なさそうな所見だった。トロンビン末を散布して胃カメラを
終了することにする。内視鏡中、少し血圧の低下はあったが
無事に手技を終えて私は少し安心していた。内視鏡中の急変
も充分ありうる状態であったわけで事前に家族に説明してい
るとはいえ、万一のことがあれば家族が納得してくれるとは
かぎらない。すくなくとも検査をおこなっただけの成果が得
られたのだから.....。だがこれからが問題だった。胃潰瘍
の出血に関してガスターからオメプラールに代えて(より強
い胃薬を使用して)、止血剤を使っている状態だった。だが
今の治療は肺梗塞の再発を引き起こす可能性があった。ヘパ
リンを中止し、止血剤を使っているのだ...。しかし、この状
態でヘパリンを再開すれば胃からは再出血することは火をみ
るより明らかであった。先ほどのような動脈性の出血が再度
おこれば、血圧があっという間に落ちてしまい急変する可能
性が高い。だが肺梗塞もまた大きなものをおこせば突然死に
結びつく可能性がある.....。「先生.....。」カルテを前に
考えにふけっていた私に鳥海が声をかけた。「ご家族の方が
説明をまっています。どうされますか?」私ははっとして
答えた。「ああ、わかった。今準備をするから、もう少し
待っていてもらえるようにいってもらえるかな?」「わかり
ました。」鳥海はそう答えるとその場を立った。私は今後の
治療をどうするか少し悩みながらふーっと息をついた。

(次回につづく)

 どうも9月もすこしさぼり気味になってしまいすいません。
 10月の中旬に札幌での学会があって発表の準備もすすめなく
てはならなくてちょっと大変です。合間をみてブログもつづ
けていきますのでひきつづきよろしくお願いします。
【2006/09/29 23:30】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(123)
 昇圧剤は使用悟の血圧は80台をかろうじて維持し
ていた。輸血はおこなっていたが脈拍は130台で経過
しており出血性ショックの状態は変わっていなかっ
た。胃チューブからも血性の排液がつづいている。
 ヘパリンは停止し、プロタミンを投与して止血剤
を使っていたが出血が止まる兆候はなかった。危険は
あるが内視鏡で止血できるかやってみるしかないだろ
う.....。内視鏡施行中に急変してしまう可能性はあ
るが..。私は看護師に声をかけた。「鳥海さん。MAP
400あと3本追加で頼んでもらえないかな?」「わかり
ました。」「あと内視鏡をやる予定だから。内視鏡の
拘束の看護師を呼んだから。病院についたら機械を上
に上げるのを手伝って欲しいって。」「わかりました。
連絡入るんですね。」「そういってたよ。」私は悟の
尿道バルンから流れてくる尿量を気にしながら答えた。

 内視鏡室の看護師の飯島が到着して集中治療室に
内視鏡の機械が運び込まれた。準備が整ったところで
内視鏡をベットサイドで始めた。悟の体を右側臥位と
し、挿管された気管チューブを脇によせてマウスピー
スをかます。気管チューブが抜けないように看護師に
手を添えてもらい内視鏡の挿入を始めた。喉頭から食
道に入ると血性の貯留物が溜まっておりこれを吸引し
ながら胃の中に内視鏡を進めた。胃の中は凝血塊が貯
留していた。吸引と洗浄を繰り返しながら視野を確保
しようと努力した。かろうじて胃の全体を観察するこ
とができるようになった。どうやら胃体上部から中部
にかけて潰瘍が多発しているようだった。そのうち
の一つの潰瘍底に血管がありそこから動脈性の出血が
認められた。潰瘍底は固く、クリップがかけられるか
微妙ではあった。私は飯島にいった。「飯島さん。ク
リップ出してもらっていいですか?」「わかりました。」
 私は動脈性に血管から噴く出血に対して視野を確保ようと
努力していた。

(次回につづく)
【2006/09/27 23:01】 春風 | トラックバック(1) | コメント(0) |
春風(122)
「今はなんとか輸血でしのいでいますが、現状では穴の
空いたバケツに水を流し込んでいるようなもので出血が
とまらないと血圧が維持できなくなります。出血を止める
ことが重要なのですが....。ただこれだけ大量に出血
していると胃カメラでも止められるかどうかは微妙だと
思います....。カメラでだめなら手術で止めるしかない
ですが...。今の状態では麻酔をかけただけで命にかかわ
る可能性もあります。まずは内視鏡でみてみたいと思い
ますが.....。」詩織は言った。「ともかくできる事を
していただければ....。」「しかしながら先ほどもお話
させていただいたように内視鏡中に急変してしまう可能性
もあります。そのこともご理解してもらえますか?」
詩織は感情を押し殺すように言った。「わかりました。
よろしくお願いします......。」

 私はその他検査のこまごまとした説明を行い、内視鏡
の承諾書をもらって面談室からご家族を外に送り出した。
 ご家族を部屋から送り出したあと内視鏡室の拘束の看
護師に連絡をとる。「もしもし飯島さんのお宅ですか?」
「はいそうですが...。」「この時間で申しわけない。
外科のnakanoですが....。実は病棟で吐血している患者
さんがいて、ベットサイドで内視鏡をしたいんだ。今か
らきてもらえますか?」「わかりました。今から準備し
てでます。20分くらいでいけると思います。」「有難う、
助かるよ.....。」「病棟はどちらですか?」「ICUです。」
「わかりました。病院についたらICUに内視鏡上げます。
ICUの看護師さんにも手伝ってもらうことになるので。」
「わかった、伝えておくよ。」私はそう言うと電話を切
った。私は面談室を出るとICUの悟のベットサイドに向か
った。

(次回につづく)
【2006/09/25 22:39】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(121)
 ご家族が来ているということを聞いて、私は説明の準備
を手早く整えて面談室に向かった。ご家族を面談室に招き
いれる。患者さんのご両親と奥さんが緊張した面持ちで
面談室に入ってきた。私は言った。「どうも、夜分お呼び
して申し訳ありません。実は夜になって篠崎さんが突然
吐血しました。どうも上部消化管で出血が起こったよう
です。今回の肺梗塞に対しての治療でヘパリンを使用して
いますが、これは血を固まりにくくもするのです。今回の
ように人工呼吸器をつけた状態ではストレス性に胃や十二
指腸に潰瘍ができたりすることがあるので、抗潰瘍薬は
使っていたのですが、多分潰瘍ができてそこから出血して
きている可能性が高いと思われます。出血の量はかなり
多くて、血圧が低下してしまうほどだったので輸血を開始
しています。胃にチューブをいれていますが、ここからか
なり血液に近いものが多量に引けてきているのです。ヘパ
リンの効力を抑えるためにヘパリンの中和剤であるプロタ
ミンを使い、止血剤なども使っていますが今のところ出血
がつづいている状態です。」司郎が言った。「出血がとま
らなかったら.....。」私は答えた。「もちろん命にかか
わります。今も輸血しないと血圧が維持できない状態で
すから.....。止血できるかどうが微妙ではありますが、
内視鏡はやってみようとは思っています。内視鏡で出血
源がわかって止血できればいいのですが、いまぐらい出血
していると、胃の中は血液で充満していて視野がとれなく
て出血源もわからない可能性もありますし、出血がとめら
れない可能性もあります。それに、出血がその場では止め
られてもまた再出血してしまう可能性があります。また状
態が状態ですので内視鏡の最中に急変してしまう可能性も
ないとは言えません......。」「それでも出血がとまら
なかったら悟は助からないんだね.....。」司郎がつぶやく
ように聞いた。「そうです.....。」私は静かに答えた。

(次回につづく)

 どうもしばらく更新が途絶えてすいませんでした。
 忙しいですがなんとか元気でやっています....。
【2006/09/24 22:53】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(120)
 血圧は上がらず、脈拍は早くなる一方だった。胃チ
ューブからは胃のなかで出血しているであろう血液が
次から次へとあふれ出してきていた。潰瘍でもできて
いたのだろうか.....。到着したMAP(濃厚赤血球液)
をポンピング(注射器を3方活栓につけて強制的に
急性輸液する。)しながら私は考えていた。内視鏡し
てみるか、でもこの出血の状態では視野をとるのも
困難かもしれない...。止血できる状態であろうか?
最悪は緊急手術で止めにいくかだが、今の状況では
麻酔をかけただけでも心停止するおそれもあった。
プロタミンを使ったが手術で出血がとまらなくなる
おそれはないか?内科的にねばるしかないのではない
だろうか?それでも若い人であるから一か八かの手術
をするか......。そんなことを考えていると看護師が
私に声をかけた。「nakano先生、ご家族の方が見えま
した。」「わかった。ポンピング代わってもらえる
かな....。」「ええ、代わりますけど。」「よろしく
たのんだよ。」私はそういうと悟の病室を出た。

 詩織と敏子と司郎は集中治療室の待合室にいた。3人
とも押し黙っていた。ここ数日の出来事をにわかには
信じられなかった。つい3日前は元気にしていたのだ。
 話もできていたし、事故後の手術の経過は順調にみえ
ていたのに.....。いきなり肺梗塞になって、少し落ち
着いたと思ったら吐血したという。一体どうなってしま
うのだろうか.....。やっぱり助からないのであろうか?
考えたくもない考えが否応なしに浮かんでくる。重たい
空気が流れる中、看護師が3人に声をかけた。「篠崎
さんのご家族の方ですか?」司郎が顔を上げると答え
た。「ええ、そうですけど。」「篠崎悟さんの病状に
ついて先生がご説明したいということです。こちらに
いらしていただいてよろしいでしょうか?」「わかり
ましたすぐ行きます。」司郎はそう答えた。

(次回につづく)
【2006/09/20 23:08】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(119)
詩織はふっーと息をつくと涙をぬぐった。そうだ、
泣いている場合じゃなかったわ。篠崎の家に連絡い
れなくちゃいけないし、まずはやく病院にいかない
と...。詩織はそう考えるといそいで電話の受話器
をとった。篠崎の家に電話をかける。ほどなく敏子
が電話にでた。「もしもし、篠崎ですが...。」
「もしもし、御義母さんですか、詩織です。」詩織
からの電話とわかって敏子は少しつっけんどんな口
調で言った。「あら、詩織さん。こんな時間にどう
したのかしら。」「夜分すいません。お義母さん。
実は、今病院から電話があって.....。悟さん、また
状態が変化したようなんです。」敏子は一瞬黙って
からいった。「それはどういうことなの?」詩織は
言葉を選びながらなんとか説明しようと必死に頭を
働かせていた。「その...。病院から悟さんが吐血し
たっていうんです。それで血圧が下がってきていて
状態が悪くなっているのですぐ病院に来てほしいっ
てことなんです。」敏子は言った。「まあ、なんて
こと....。」「ともかく私はすぐこちらをでますの
で、御義母さんたちもすぐ病院に向かってください。
 私は今すぐに準備して病院に行っていますので..
....。」そういって詩織は電話を切った。
 一刻も早く悟さんのところにいかなくちゃ....。
 その考えで詩織は急いで出かける準備を始めた。

 敏子は詩織からの電話をうけて呆然としていた。
まったくどういうことなの....。少しずつ良くなっ
てきていると思っていたのに....。うそでしょう。
信じられないわ.....。また詩織さんなにか間違え
ているんじゃないかしら....。だが病院からこの
時間に電話があってすぐ来いといっていたという
のだ。これはあまり只事ではないだろう。それなら
いそがないと.....。敏子はビールを片手にテレビを
みていた司郎に言った。「あなた....。悟がどうやら
状態悪くなったみたいなの。すぐ病院にきてくれって
.....。」司郎のグラスを持った手が止まった。「それ
は本当か?」「ええ、本当よ....。」司郎はおもむろ
に立ち上がって言った。「わかった。すぐ家をでよう。
お前運転できるか?」「できないことはないと思うけど
.....。」涙ぐんでいる敏子の顔を見て司郎は言った。
「電話でタクシーを呼んでくれないか。今のお前は
運転は無理そうだ。」

(次回につづく)

【2006/09/19 23:52】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(118)
 詩織は2人の住んでいたアパートに泊まっていた。篠崎
の実家に泊めてもらうことも考えていたが、悟の入院して
いる病院はむしろ2人のアパートの方が近かったし、敏子
との折り合いもあり独りでいた方が気が楽だったのも正直
なところあった。それに悟が入院してからアパートはその
ままになっていたのでアパートの掃除をふくめた手入れを
する必要もあったのだ。部屋の掃除や持ち帰った洗濯物の
洗濯など一通り終えたあと、詩織は風呂に入って一息つい
ていた。時計は夜の8時を回っていた。なんにしても少し
悟さん落ち着いてきたみたいだし大丈夫よね。一日も早く
元気になってもらわないと..。そんなことを考えていたと
ころに携帯電話の着信音が鳴った。この時間にどこからか
しら...。まさか病院から?やな予感がした。詩織は携帯
電話を手にとると電話に出た。「もしもし、篠崎ですが..。」
「もしもし、篠崎詩織さんの電話でよろしいでしょうか?
こちらM総合病院の看護師の鳥海と申します。じつは篠崎悟
さんの件でお電話させていただいていたのですが...。」
「はい....。」詩織は脇にいやな汗がにじむのを感じて
いた。「先ほど吐血されて急激に血圧が下がってきてい
ます。状態が急に悪くなってきていて先生の方からお話
をさせていただきたいということなのですが、すぐこちら
にくることができますか?」「はい、わかりました。すぐ
向かった方がいいのですね?」「ええ、すぐにいらして
ください。どれくらいでこちらにくることができますか?」
「いまからすぐに準備にしていきますので20分位で....。」
「わかりました。他の家族の方への連絡をお願いしてよろ
しいでしょうか?」詩織の頭に敏子の顔が浮かんだ。
きっとこの事を伝えたらかなり取り乱すかもしれないわ....。
一瞬どうしようか悩んだ。何を馬鹿なこと考えているの、
夫の一大事を自分でお義母さんにつたえなくてどうする
のよと詩織は思い直した。「ええ、私の方から伝えます
ので.....。」そう答えると詩織は電話を切った。電話を
切ったあと詩織の目からとめどもなく涙があふれでてき
た。悟さん。すぐいくから。お願い頑張って。私を独り
にしないで...。

(次回につづく)

【2006/09/18 18:03】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(117)
 胃チューブを鼻から胃に挿入する。チューブ
内容を引くと暗赤色の血液が大量に引けてきた。
 まだ出血は続いているようだった。この状況
では上部消化管内視鏡をおこなっても視野がと
れない可能性もある。だがともかく出血をおさ
えなくてはどうしようもないことははっきりし
ていた。やはりヘパリンはとめるべきだろう。
そう考えて、私は看護師に言った。「ヘパリン
投与を中止にして硫酸プロタミン10mgを生理食
塩水100mlに入れて15分で落としてください。」
「わかりました。」「ご家族には連絡ついたか
い。」「連絡つきました。20分くらいでこれる
そうです。」「わかった。」看護師がヘパリン
のポンプを止め、プロタミンの滴下を始める。
そうこうしているうちにも血圧がじりじりと低
下していく。脈拍は130~160/min位で経過して
いた。出血性のショック状態なのははっきりし
ていた。「点滴は全開で落として。MAPはいつ
来るかな。」「検査室でクロスマッチが終わっ
たらすぐ上げてくれるそうです。」「仕方ない
な、とりあえずアルブミナーを上げてもらって。
5%250mlのやつをとりあえず2本。きたところ
でポンピングしながら入れよう。あと検査室に
MAPあと1200追加で取り寄せてもらうように頼
んでくれるかな。」「わかりました。」ともか
く状態が悪い.....。この状態だと結構な出血な
のは間違いなさそうだった。なんとか輸血で
ショック状態がしのげれば.....。私は到着した
アルブミナーをシリンジでポンピングしながら
そう考えていた。

(次回につづく)

 どうも当直もかかって数日更新できなくてすい
ませんでした。今週の当直の時にも交通外傷がきて
この人は頭蓋底出血と肺挫傷と全身の多発骨折が
あって2日粘りましたが助けられませんでした。
 皆様もくれぐれも交通事故にはお気をつけください。
【2006/09/17 19:50】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(116)
 「わかりました。そちらに向かいます。」私は電話を
切ると標本整理もそこそこにICUにいくことにした。手術
室の看護師に声をかける。「ごめん。今病棟で急変があ
って....。標本そのままおいておいていいかな。まだ標本
整理終わっていないんだけど。」看護師は答えた。「いい
ですよ、先生。でもあまり遅くなると私たちは鍵を閉め
て帰ってしまいますので後の始末だけして戸締りしてく
れれば。」「わかった。あまり時間かかるようなら当直
事務に頼んで鍵かりてくるから大丈夫だと思うよ。」私
はそういって術衣に白衣を羽織って手術室を出た。
 いったいどういうことだろう。ヘパリンをつかってい
たから胃から出血したかな...。オメプラール(かなり
強い胃薬)はつかっていたんだが.....。急いでICUに
向かう。 悟のベットのそばについた。頭付近は吐血
した血液で広範に汚染されていた。鳥海が傍にきて報
告した。「先ほど急に嘔吐があって、かなりコアグラ
(血餅)まじりの吐血でした。量も多かったです。血
圧が70台まで低下してきていてカタボンHiを時間9ま
で上げています.....。」「上部消化管の出血なのは
間違いなさそうだね。オメプラールは使っていたんだ
けどな...。」「脈拍も140位になっています。」「出
血性のショックだね。ともかく輸血はしないとだめだ
ろう。とりあえずMAP800とって輸血しよう。検査室に
連絡お願いします。ラクテックで末梢から別にライン
をとって全開で落としてください。ラインとった時に
血算と生化学採血しておいて。あと家族を呼んでもら
っていいかな。」「わかりました。」「気休めだけど
止血剤とビタミンKもつかっておこう。指示出してお
きますから。ラインとってご家族に連絡とれたら胃チ
ューブをいれます。」私は看護師にとりあえずの指示
を口頭でだしてカルテの指示簿に必要な指示を書き込
みだした。MAP800で足りるかな....。出血がとまらな
いとちと厳しい状況になるが....。内視鏡をやった方
がいいか...。だがヘパリンをつかってPTINRが2以上
の状態ではあるが.....。プロタミン(ヘパリンの中和
剤)を使うか.....。この際、背に腹は変えられないか
らな....。私は焦る気持ちの中で必死に次に打つべき
手を考えていた。

(次回につづく)
【2006/09/12 23:41】 春風 | トラックバック(1) | コメント(0) |
春風(115)
 その日の午後の手術を終えた時は時計は午後の6時半
を回っていた。「お腹の所見では他に転移はありません
でした。予定通りの手術になっています。術中は特に
大きなトラブルもありませんでした。まず大丈夫だと
思いますが、何か予期しないことがありましたらご連
絡いたします.....。」患者さんの家族に説明を終え、
私は患者さんを集中治療室に送り出した。集中治療室
での術後の患者さんの処置を終えた後に私は悟のベッ
トの傍にいき、モニターの数値と温度板を確認した。
 手術中も特に篠崎さんの件で連絡が来ることはなか
ったので安心ししていたが、昼間は状態は落ち着いて
いたようだった。(手術中でも病棟で何かあるとすぐ
連絡がきて判断を仰がれることも珍しい事ではないの
が現実である。)血圧も脈拍もまずまずで大きな低下
はなかった。尿量もそこそこでてきていた。私は少し
ほっとした。「まずまずいい兆候だな.....。なんと
か山場は越えたかな....。」
 私はそう思いながら悟のカルテの医師記録に記載を
して集中治療室を後にした。手術室に戻って手術した
患者さんの検体の標本整理(摘出した臓器を病理の検
査に提出するためにリンパ節などをはずしてホルマリ
ン固定する)をしなくてはならない。標本の整理室に
いき私は標本の整理を始めた。手術中はまだ気が張っ
ていたためあんまり感じなかったが、気がゆるむとぼ
ーっとしてあくびが出てくる。昨日もほとんど寝れな
かったし今日はさすがに早めに仕事切り上げなくちゃ
厳しいな。明日も手術があるし.....。まあ篠崎さん
が落ち着いてくれたから今日はなんとか大丈夫だろう。
 私はぼんやりとそんなことを考えていた。そんなと
きに私の院内PHS(医療用に電波が弱い専用のPHS)が
鳴った。なんだい一体、また病棟からの処方切れかな
にかの催促の電話かな。私は少しため息をついてから
受話器を取った。「もしもし、nakanoですが......。」
 電話の内容は私を打ちのめすのに充分な内容であった。
「集中治療室の鳥海です。先生、篠崎さんが吐血です。
血圧も下がってきています。すぐICUに戻ってきてくだ
さい。ご家族にはすぐ連絡しますか.......。」

(次回につづく) 
【2006/09/10 22:15】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(114)
 肺梗塞を起こした翌日、朝の回診時にICUに
来た私は悟の温度板とモニタをみながら悟の
状況を確認していた。人工呼吸器管理でヘパ
リンを使用し、PCPSまで回していた。できる
限りの治療に反応してか悟の状態は小康状態
とはなっていた。昇圧剤も少し減量しながら
尿量が維持できるくらいの血圧が維持できる
ようになりつつあったし、人工呼吸器の設定
もFiO20.6(酸素濃度60%)でかろうじて充分
な血液の酸素分圧を保てるようになっていた。
 少なくとも前日よりは状態は改善している
ことははっきりしていた。若さもあるしなん
とか回復してくれる見込みもあるかもしれな
いとかすかに希望がもてる状況になっていた。
 看護師の早坂が声をかけてきた。「先生、
篠崎さん血圧でてきてカタボンHi時間5まで
減らせましたよ。」「それはよかった。一応
利尿かけたいので時間3まで下げられたらそ
のままキープしてもらっていいかな。」「わ
かりました。先生、昨日は泊まりですか?」
「篠崎さんの状態が落ち着かなかったのでね、
他にも一人状態がよくない人がいてね。でも
篠崎さんは辛うじて復調の兆しがありそうだ
ね。厳しいことにはかわりないけど、昨日の
夜の状態よりは希望がもてそうだ。このまま
いい方向に行ってくれればいいんだけど。」
「本当にそうですね。腹部の創のガーゼ交換
しますか?」「ええお願いします。」私は答
えた。腹部の創の確認を行う。篠崎さん。大
変だろうけどもう少しがんばってください。
 なんとか元気になってもらおうとしていま
すからね....。私はそう心の中で呟きながら
悟の腹部の創の包交を行った。

(次回につづく)
【2006/09/09 23:32】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(113)
 インターフォンを押すと看護師が応答した。「はい
どちら様でしょうか?」敏子は言った。「篠崎 悟の
家族のものですが...。」「わかりました。消毒液で
手を消毒してからお入りください。」3人は手を消毒
してICU病棟に入った。悟のベットの脇に向かう。悟
の周りには人工呼吸器をはじめ多くの医療機器に囲ま
れている状態であった。多数の管につながれている
姿は非常にいたいたしかった。詩織は悟の今の状態が
にわかには信じられなかった。昨日まではあんなに
元気だったのに.....。詩織は悟のベットのそばに寄
った。口からは呼吸のための管が繋がれており、意識
はなさそうであった。悟さん。ようやく私達の子供が
授かったのよ。流産してつらい思いして、妊娠の時の
悪阻もひどくて、悟さんにあれだけ助けられてやっと
元気な子供を授かったっていうのに.....。私の勝手
をゆるしてくれてずっと守ってくれたじゃない。悟さん
だってつらいこともあったろうに何一つ私に文句も
言わないで助けてくれたのに。まだ子供の名前だって
決めていないのに。これからいっしょに家庭をつくっ
ていくはずでしょう?まだ子供の顔だってみていない
じゃない。こんなのあんまりだわ.....。一体どうし
て、どうしてこんなことに....。あなたを必要として
いる人間がいるのに.....。いままでの流産から出産
までの悟との苦労した思い出が頭によぎる。詩織の
目からは涙があふれだし、自然にこみ上げてくる嗚咽
を抑えることができなかった。

(次回につづく)
 昨日とおとといは土曜日に緊急手術した人の状態が
おちつかなくてほとんど家に帰れない状態でした。
 今日はちょっとおちついたので帰ってこれましたが
明日は当直です。日曜日から子供の起きている姿に出会え
ない日がつづいています....。でも患者さんの状態が
よくなってくると元気がでてきますね。なんとかがん
ばって明日の当直をこなしたいと思っています。
【2006/09/06 23:50】 春風 | トラックバック(0) | コメント(2) |
春風(112)
 詩織が悟の入院する病院に到着したのは夕方
の6時ごろだった。受付で患者の家族であること
を説明しICU病棟への行き方を教えてもらった。
 エレベータに乗り、ICU病棟のフロアで降りる
とすぐ家族の待合室があった。詩織は敏子と司郎
がそこにいるのに気づいた。待合室に入ると詩織
は二人に声をかけた。「こんにちわ、お義父さん、
お義母さん。どうもいつもお世話になっていま
す。」二人は顔を上げて詩織の顔を見た。司郎は
言った。「どうも詩織さん。お疲れさん。体の方
は大丈夫なのかい?」詩織は司郎の言葉に答えた。
「ええ、なんとか大丈夫です。それで悟さんの
状態はどうなんですか?」敏子は力なく言った。
「どうもこうもないわ。昨日までは元気になって
きていたのに、今日突然状態が悪くなって...。」
 司郎は言った。「ああ突然のことで我々もにわ
かには信じられなかったんだが....。なんでも肺
梗塞、肺塞栓症だったかな。そういった状態らし
い。足の付け根にできた血の塊が飛んで肺の血管
を詰まらせたらしいんだ。人工呼吸器につながれ
て機械で呼吸をしている状態で意識もないんだ。
医者はかなり厳しいっていっていたけど.....。」
 詩織は司郎の言葉がにわかには信じられなかっ
た。「本当なんですか?それで悟さんには会える
んですか?」「インターフォンで面談を希望すれ
ば、履物を履き替えて手を消毒して中に入ること
はできるよ。でも今は見るのがつらいような状態
だよ。色々な管がつながれてしまっていてね。ま
あでも詩織さんも大変な中きてくれたんだ。悟に
会っておかないとね。みてショックをうけないよ
うにしてね。」「わかりました。」3人は悟のと
ころに一緒にいくことにして、ICUの入り口のと
ころに向かった。

(次回につづく)
【2006/09/03 17:56】 春風 | トラックバック(0) | コメント(0) |
春風(111)
 病院に外出届けを出して詩織は東京に向かう
電車に乗っていた。友代の言葉が思い浮かぶ。
「詩織ちゃん。ともかくはやく悟さんのところ
に行ってあげなさい。赤ちゃんは私がなんとか
することできるから.....。旦那さんの一大事
なんだし傍についていてあげないと.....。」
友代の言葉に甘えて詩織は一刻も早く悟のとこ
ろにいくことにしたのである。正直なところ
できることなら一瞬のうちに飛んで行きたいくら
いだった。悟の状態は一体どうなのだろう。敏子
の電話の様子だとかなり深刻な状態のようだ。
「間に合わなかいかもしれないわよ.....。」一体
どういうことだろう。まさか死にそうな状態なの
だろうか。ともかく病院にいかなくては状況がわ
からない。集中治療室といっていたからかなり重
症な状態なのだろう....。悟さん、まだ子供の顔
もみていないのになんていうことなの...。考えれ
ば考えるほど詩織は不安になっていった。

 敏子と司郎はずっと病院にいた。病院を後にす
る気にもなれなかった。ともかく非常に不安定
な状態なのは素人の二人からみても明らかであった。
 必死に医師たちが治療をしてくれているのは
よくわかっていた。だが、医師たちの治療にもか
かわらず、どうやらうまく治療に反応していない
状況らしい。いつ急変してもおかしくない....。
 実際心臓が1回止まっているのだ....。人工呼吸
器をつけても充分な酸素交換ができない位、肺の
機能が低下していて足の付け根から機械をつない
で機械で酸素を血液に送る装置をつけるという...。
 一体どうなってしまうのだろう。やはり治癒す
る見込みはかなり薄いのだろうか...。あれだけの
事故であったのだから仕方がない結果なのだろう
か...。何か言葉を交わせば悪い事しか口に浮か
んできそうもなかった。二人はかけあう言葉もみつ
けられないまま待合室でお互い無言で座り込んで
いた。

(次回につづく)
【2006/09/02 23:51】 春風 | トラックバック(0) | コメント(4) |
藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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