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春風(150)
 悟の死から3年が経ったある春の日、詩織は悟の墓参りに娘と
きていた。やわらかい日差しの中、詩織は花と水桶を持ち、娘と
篠崎家の墓の前に立った。娘は言った。「お母さん。お父さん
ここに眠っているの?」詩織は言った。「そうね。お父さんは
いつも春華とお母さんの傍で見守ってくれているんだけど、
お家はここになるのよ。ここには春華のお父さんもそうだけど
ほかのご先祖様も住んでいて必要なときに私たちの傍にきてく
れて守ってくれるのよ。」「どうしてお父さんは春華とお母さん
といっしょにいられないの?」「そうね.....。お父さんも本当は
お母さんと春華と一緒に暮らしたかったんだと思うんだけど、
お父さんはいい人だったから神様がそばに来て欲しかったのか
もしれないね.......。どうしていっしょにいられないのか
っていうことは春華がもう少し大きくなって色々な事がわかる
ようになったらおかあさんがきちんと教えてあげるわ.....。」
「そうなんだ....。でもお父さんに会いたいな.....。」春華は
そう言って黙った。
 お墓の周りを清掃して花と線香をあげ詩織は墓に向かって手
をあわせた。「あなた。春華も3歳になりました。時が経つのは
早いですね。この秋にはもう七五三よ。この子の七五三のお着
物姿見せたかったわ.....。」色々な思いが詩織の心をよぎった。
 思いかえせば精一杯の3年間だった。悟の死から詩織は友代に
出てきてもらい、子育てを助けてもらいながら勤めをつづけた。
 ともかく1日1日とどうやりくりしてくのかで精一杯の状態だ
った。何度も悟が傍にいてくれればという気持ちになったり、
くじけそうになったりすることもあったが、あどけない顔で
自分の足にしがみつく娘の姿をみていてはくじけていられな
かった。幸いにも春華は大きな病気をすることもなく元気に
育ってくれていた。「お母さん。春華、上手にお参りできたで
しょう?」無邪気に問いかける娘に詩織は言った。「そうね、
上手にお参りできたわね。お父さん、きっとよろこんでいる
わよ。春華もずいぶんお姉ちゃんになったねってね......。」
 詩織はそういって春華に微笑んだ。ふと見上げた視線の先
に詩織は遠くからこちらに歩いて向かってくる敏子の姿を認
めた。

(次回につづく)

 長々と続けた春風も次回で最終回の予定です。どうも忙しい
時期に重なって描ききれなかった部分もありましたがなんとか
ここまで書いてきました。ここまでこれたのも読者の皆様のお
かげだとおもいます。引き続きよろしくお願いいたします。
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