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誤報(1)のエントリーは11月26日付けです。最初から読む方はカレンダーで11月までたどって26日をクリックすると誤報(1),(2)のエントリーに入れます。あとは順々に日にちをクリックしていってください。

(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
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誤報(22)
 CTの撮影を終えたところで山田は撮影室に入り、郷峰に
言った。「脳出血をおこしているようだ。今日の脳外科の
当直医師は誰かな?」郷峰は答えた。「たしか、飯島先生
だったと思います。」「そうか、わかった。飯島先生に連
絡しよう。患者さんは処置室にもどそう。」山田はそうい
うと、院内PHSで飯島に連絡をとった。山田が電話をかけて
まもなく、電話に飯島が出た。「もしもし、飯島ですが..
...。」「飯島先生、お忙しいところすいません。周産期科
の山田です。実はご相談したい患者さんがいるのですが..
...。」「はい、どんな患者さんでしょうか?」「分娩最中
に意識障害になったということで子癇発作ということでこち
らに搬送された方なんですが、頭のCTを撮ってみたところ
脳出血で、どうやら脳室穿破しているようなんです。」「分
娩の最中にですか?」「ええ、それで先生にもご相談をした
いと思いまして.....。」「わかりました。それで患者さんは
どちらに今いるんですか?」「今、CT撮り終わって、救急の
処置室にもどすところです。」「CTのモニター見に行った
方がはやいですかね?」「そのほうがいいかもしれません。」
「わかりました。今、手があいたのですぐそちらに行きます。」
「すいません。よろしくお願いします。」山田はそう言って
電話を切った。里美をCTのテーブルからストレッチャーに郷
峰と移し終えた斉藤が山田に声をかける。「分娩最中に脳出
血なんて...。いずれにしても手術ですか?」「脳外科が手術
できるかだけど..。この意識障害だと手術しないかもしれな
いけどね。だが帝王切開はしないと....。胎児はなんとか助け
たいところだからね。」「そうですか.......。前の病院では
わからなかったんですかね。」「難しいと思うよ.....。分娩
最中に高血圧あって痙攣発作なら子癇発作が一番考えやすい
し....。30代で脳出血なんてあまりないと思うから....。私
だって初めてさ、こんな症例は....。」山田はCTのモニター
画面を再度確認しながらつぶやくように答えた。

(次回につづく)

 皆さん、2006年がいよいよ暮れますね。今年も例年どおり
妻と子供を妻の実家に送って、私は一人での年越しです。(入
院患者さんがいるのと、年末年始の当直があるため)1年間
どうも愛読ありがとうございました。今回の「誤報」は今ま
でのブログのコンセプトとはかなり違い、元々の読者の方々
には戸惑いを感じられる方もいらっしゃると思いますが、今
の医療情勢とマスコミ報道の状況をみると患者さんと医師は
本来は利害が一致しているはずであるという考えの私にとって
は耐えられない気持ちとなり、どうしても書かなくてはならな
いという思いに突き動かされ、思いつくままにパソコンに打
ち込んでいるという状況です。今後の物語の顛末にご期待い
ただければ幸いです。

 それでは皆様良いお年を、2007年が皆様にとってすばらしい
一年となりますようお祈りしております。
 重ねてこの1年間応援していただき本当に有難うございました。
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【2006/12/31 16:27】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(21)
 山田が入院のための書類を仕上げながら連絡を待って
いると放射線科から連絡があった。電話をとった救急外来
の郷峰は山田に言った。「先生、CT室準備できたそうです。」
「そうか、わかった。」山田はそう答えると席を立った。

 山田は郷峰と一緒に患者をCT室に搬送した。CT室に到着し
CTのテーブルの脇にストレッチャーをつけた。放射線技師
の斉藤が山田に声をかける。「どうも先生、朝はやくから
大変ですね。周産期科の患者さんなのに頭のCTなんですか?
胎児は被爆大丈夫なんですか?外傷か何かですか?」山田
は答えた。「子癇発作での意識障害でいいと思うんだが、
ちょっと状態が悪くてね。一応、帝王切開の前に頭に異常が
ないか見ておこうと思って....。もう過産期の患者さんだか
ら胎児の被爆はあまり問題ないよ。でも一応腹部はプロテク
トしておいてもらおうか。」「わかりました。もともと血管
奇形かなにか基礎疾患があった方なんですか?」「いや、
特にはなにもないらしい......。」「34歳で脳出血か梗塞
....?ですか?」「まあ考えにくいといえば考えにくいけど
.....。子癇発作ならDICおこして脳出血も考えられるかな
と思うし....。ともかく帝王切開は急いでやらなくてはなら
ないけど、余計な懸念ははらっておいたほうがいいだろうと
思ってね.....。」会話をかわしながら山田と斉藤と郷峰は
里美をCTのテーブルに移した。看護師の郷峰がCT室にプロ
テクターをつけて里美のそばにつく。斉藤が手馴れた操作
でCTの撮影の操作を開始した。モニター室でモニター上に
写しだされる画像を確認していた山田と斉藤は一瞬息を呑
んだ。山田はつぶやくように言った。
「脳出血だ.......。脳室穿破してる.........。」

(次回につづく)
【2006/12/30 22:50】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(20)
「1時40分ころ痙攣発作があり、子癇による痙攣と考えマグネゾール
投与し痙攣が落ち着いたことからマグネゾールを持続投与としました。
 4時すぎに呼吸状態が悪くなり挿管しています。」「そうですか。
 いずれにしても帝王切開は必要そうですね。ただ、意識状態と
呼吸状態が非常に悪いのが気になりますが....。」「一応、CT撮影
も考えたのですが、一刻も早い転送が必要と考えて....。当院は
放射線技師が拘束にはなっているのですが当直しているわけでは
なくすぐにCTとれるわけでもないので.....。人手がないところで
痙攣発作を起こしている分娩最中の妊婦のCTをとるとなると危険
性もありますし、すぐに転送先が見つかるかと思っていましたから......。
申し訳ありませんが.....。」N県の南部からわざわざ
O府のS市まで転送しなくてはならなかった丸山の苦労は山田にも
想像がついた。山田は丸山を気遣って言った。「いずれにしても
ご苦労様でした。あとはこちらで引き受けますので.....。」「
ありがとうございます。よろしくお願いします。」丸山は山田に
一礼をして処置室をでて救急車の方に向かった。

 山田は里美の診察を始めた。この時点では自発呼吸はあったが、
声かけに応答せず、反応はほとんどなかった。瞳孔をみると散大
しており、対光反射もない。子癇発作だけにしてはちょっと変だ。
 CTはとっておく必要がありそうだと山田は考えた。山田は当直
の放射線技師のところに電話をかけた。「もしもし、周産器科の
山田だけれど.....。」「はい。」「一人、頭部CTをとってもら
いたい患者さんがいるんだ。すぐ撮影できるかな。」「今、一人
骨折の患者さんの撮影をしていますのでその後なら大丈夫だと
思います。」「わかった今、CTのオーダー、オーダリングシステム
で送るから撮影お願いします。」「わかりました。」技師の返事を
確認し山田は電話を切った.....。34歳の若い女性が何の基礎疾患
もなく頭になにか起こすことなんてあるんだろうか?子癇発作で
DIC状態なら脳出血をおこす可能性はあるか....?くも膜下出血な
ら若い人でも可能性があるのだろうか....?子癇発作の痙攣状態が
続いているだけと考えても説明がつくのかもしれないが.....。
脳幹レベルでの反射がなくなるのはやはりひっかかる.....。山田
も少し半信半疑ではあったが、一応頭になにか起こっていないか
確認して帝王切開にしたほうがいいだろう。様々な入院書類と
手続きをこなしながら山田はそう考えていた。

(次回につづく)
【2006/12/28 23:52】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(19)
 山田の院内PHSが鳴った。「はい、山田ですが。」「もしもし
救急外来の郷峰です。あと3分ほどで救急車こちらに到着するそ
うです。」「わかりました。」山田は電話を切ると救急外来に
向かった。救急外来の待合室には朝の5時を回ったばかりだとい
うのに数人の患者が待合室にいた。山田は救急外来の処置室に
向かった。処置室では当直医と夜間勤務の看護師が忙しそうに
動いていた。山田が救急外来におりてしばらくして救急車が国
立国際循環器センターに到着した。

 気管内挿管されストレッチャーに乗せられた里美は救急隊員
に救急外来の処置室に運び込まれた。後から丸山と大輔が続い
た。大輔は処置室の入り口で看護師に受付の方で手続きをすま
すように言われて夜間の受付窓口に向かった。丸山が処置室ま
で入り山田に会釈していった。「今回は忙しいなか受けていた
だいて有難うございました。」山田は一礼して言った。「いえ
それはいいのですが....。それでどんな感じですか?」看護師
と救急隊員の手で里美は処置室のベットに移された。すかさず
救急外来の看護師が里美のバイタルサインのチェックを行い
各種のモニタ類を里美の体につけていく。「患者さんは34歳
の女性で、過産期となっても陣痛の兆候なく、陣痛誘発の目的
で昨日入院になりました。PGE錠で陣痛誘発しています。本日
の0時30分ころまでは陣痛も順調に発現し、子宮口も4cmまで
開大してきていました....。」丸山は里美の病状の説明を始
めた。

(次回につづく)
【2006/12/27 23:47】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(18)
 救急車が川淀病院に到着した。救急隊員が救急の受付で産婦人
科病棟の場所を確認すると、病棟の方に向かった。救急隊員はス
トレッチャーを陣痛室まで運び込んだ。「ご苦労さまです。」丸
山は救急隊員に声をかけた。「高橋里美さんですね。S市の国立
国際循環器センターまでの搬送ということで、向こうの先生には
連絡はついていますか?」「ええ、周産期科の山田先生にお願い
してあります。」「わかりました。救急車の同乗は先生がいかれ
ますか。」「ええ、私が同乗します。」「わかりました。それで
は患者さんをストレッチャーに移しますので......。」救急隊員
と広川と丸山は点滴や挿管チューブなどに気をつけながら里美を
ストレッチャーに乗せた。そのあと玄関前の救急車に向かう。
 救急車には丸山と夫の大輔が里美とともに乗り込んだ。
 救急退院が無線で連絡する。「こちら川淀救急隊2号車です。
ただいまからO府S市の国立国際循環器センターへの患者の転送
です。ドクター同乗、4時50分川淀病院から出発します。」不安
そうに見送る里美の家族の視線を受け、救急車はS市に向かって
サイレンを鳴らし走り始めた。

 国立国際循環器センターの周産期科の山田は2時に緊急の帝王
切開を終え、患者家族への説明と手術記録記載など終えていた
ところに転送の依頼をうけた。受け入れ可であることを連絡して
丸山と連絡をとっておおまかな概要は確認できていた。1時半から
痙攣発作がおきているとするならば子供が無事か心配だ.....。
 母体が挿管を必要とするほど呼吸状態が安定していないなら
なおさら心配だが.......。
 山田がそう考えながらつかの間の一息をついていると受付から
院内PHSに連絡が入った。「もしもし、山田ですが....。」「先生
今、救急車が川淀病院をでたとの連絡ありました。到着は30分く
らいかかるようです。」「わかりました。」山田はそういうと電話
を切った。

(次回につづく)
【2006/12/25 23:48】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(17)
 家族の承諾を得て、竹内が里美に気管内挿管を行い、丸山と広川
が介助した。挿管は速やかに行われ、丸山がアンビューバックを押
したが、すぐ自発呼吸がもどってきたのでTピースに換えて経過を
見ることにしようとしたとき、陣痛室の電話が鳴った。広川が出る。
広川が電話を持ちながらうなずくと丸山の傍に行って言った。「O府
の国立国際循環器センターが受け入れてくれるそうです。先生、電話
に出れますか?」「わかりました。」丸山はそう答えると電話口に
立った。「もしもし、こちら川淀病院の産婦人科の丸山と申します。」
「もしもし、こちら国立国際循環器センターの周産期科の山田といい
ます。子癇の患者さんということですが....。」「ええ、34歳の女性
で、いままで大きな病気の既往はない方です。過産期で陣痛の兆候が
なく、昨日の朝からPGE錠で陣痛誘発を行っていたのですが、1時30分
ころに痙攣発作を起こされて、血圧が上は200を超えていました。
 子癇発作と考え、マグネゾールを使用して痙攣発作は終息しました
が、意識が戻ってこない状態でした。一刻も早い転送が必要と
考えていたのですが、受け入れ先がない状態でした。4時半ころに
呼吸状態も悪くなり、気管内挿管を行っています。挿管後は呼吸
状態少し落ち着いて、Tピース4Lで血中酸素飽和度は97%前後で
推移しています。」「わかりました。こちらまでどれくらいでこら
れますか?」「循環器センターはS市でしたよね.....。大体30~
40分くらいでしょうか。」「わかりました。ではこちらで受け入
れますので、紹介状だけFaxでお送りください。」「わかりました。
先生、お忙しいところ本当にすいません。よろしくお願いします。」
 そういうと丸山は電話を切った。丸山は広川を呼んで、転送用
の救急車の手配をするように指示した。ベットサイドに行き、丸山
は竹内に言った。「国立国際医療センターに転院先が決まったよ。」
「よかったですね。」竹内は言った。「なんとか患者さんが回復し
てくれるといいのですが......。」「ああ、一刻も早く送って
あげないといけないからね.....。」丸山はつぶやくように言った。

(次回につづく)
【2006/12/24 21:16】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(16)
 どうもしばらくブログ更新をお休みして申し訳ありません
でした。風邪をひいて、仕事をこなすのが精一杯でブログ更新
の元気がでなかったので....。また頑張ります。

 それはそれとしてついに大淀病院が産科を閉鎖してしまいま
した。
奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200612220048.html

妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061222i407.htm?from=main4

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ
http://www.sankei.co.jp/shakai/wadai/061222/
wdi061222004.htm

 奈良の南部での産科は全滅してしまいました......。
 産婦人科学会が声明をだしているようにこの先生に落ち度は全く
なかったと私は考えていますが...。

****** 朝日新聞、2006年10月19日

産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、分娩(ぶんべん)中に重体となった妊婦(当時32)が県内外の19病院に搬送を断られ、出産後に死亡した問題について、同県医師会の産婦人科医会(約150人)は19日、同県橿原市内で臨時理事会を開き、「主治医の判断や処置にミスはなかった」と結論づけた。

 妊婦は脳内出血を起こし、意識不明となったが、主治医らは妊娠中毒症の妊婦が分娩中にけいれんを起こす「子癇(しかん)」と診断し、CT(コンピューター断層撮影)検査をしなかったとされる。

 理事会後、記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」とも述べた。

 県警が業務上過失致死容疑で捜査を始めた点については、「このようなケースで警察に呼ばれるのなら、重症の妊婦の引き受け手がなくなってしまう」と懸念を示した。

(朝日新聞、2006年10月19日)

興味本位に報道を行ったマスコミの一番の被害者は奈良県南部の妊婦
の方々でしょう.....。


 午前4時半、里美の呼吸状態が悪くなり下顎呼吸となる。傍にいた
竹内は言った。「呼吸停止しそうだ.....。気管内挿管しよう。丸山
先生に連絡してください。」広川はそれを聞いて丸山に連絡する。
「丸山先生、高橋さん、呼吸状態がかなり悪くて...。挿管が必要
そうなんです。こちらにこれますか?」広川は電話を切っていった。
「竹内先生、丸山先生すぐこちらにこられるそうです。」
「先生、里美は大丈夫ですか?」大輔が竹内に懇願するように聞い
た。「なんとか全力はつくしますので....。」竹内は答えた。
 丸山が病室にやってくる。「竹内先生、申し訳ない。」丸山は
竹内に声をかけた。「先生、呼吸状態が悪くなって...。挿管が
必要です。ご家族の方に説明していただいてよろしいですか?」
 アンビューバックで里美の呼吸を補助しながら竹内は言った。
 「わかった。申し訳ないが、先生少し頼むよ。」丸山はそういう
と大輔に声をかけた。「高橋さん。奥様、呼吸の状態が悪くなって
いて自分で呼吸できない状態になっているんです。気管といって
空気を肺に送る管があるのですが、そこに呼吸を助ける管を入れ
させていただきたいんです。」大輔は言った。「そんな....。
もしそれをしないとどうなるんですか?」「呼吸が自分ででき
ない状態ですから窒息死してしまいます.......。」大輔はそれ
を聞いて目を見開いた。いったいこの医者は何を言っているんだ
.......。大輔は呆然としていた。今起こっていることは現実
なのか.....?大輔は少し黙り込んだ後言った。「わかりました。
よろしくお願いします。里美を、お腹の子供を助けてください..
.....。」大輔は目に涙を浮かべながら言った。

(次回につづく)
【2006/12/23 16:12】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(3) |
誤報(15)
 里美の大叔母にあたる大村幸枝は川淀病院の総婦長を務め
たことがあり、退職後も時々病院に口を出しにくる人物であ
った。彼女も大輔からの連絡を受けて病院にかけつけていた。
 幸枝は消防署に連絡し、消防署員から病院のリストを手に
いれていた。病棟婦長の大西にもリストを渡し、リストの病院
を順々に連絡していったがどこも引き受け手がなかった。

 遅々として転送先が見つからない状況に英雄はイラついて
いた。「どうして転送先がみつからないんだ......。廊下
においてくれるだけでもいいからどこかが受け入れてくれな
いのか!」詰め寄られた広川は困惑しながら言った。「この
状態で廊下においておいては里美さんも赤ちゃんも死んでし
まいますよ。お母さんのためのICUと赤ちゃんのためのNICU
の両方のある施設でなくてはならないんです。」「じゃあ、
赤ん坊はあきらめるからICUが空いている施設でもいい。
お願いだからはやく探してくれ......。」広川はそれを聞いて
丸山に連絡した。「もしもし、丸山ですが....。」「先生。
患者さんのご家族の方がまだ転送先がみつからないのかと。
赤ちゃんはあきらめるからICUで母体を引き受けてくれる施設
でもいいから探してほしいとのことですが......。」「....。」
少し考えて丸山はいった。「わかった。NICUがない施設にも
範囲を広げてあたってみることにしよう。大西さんも電話けけて
くれているんだよね。大西さんにも伝えてください。」「わかり
ました。」広川はそう言って電話を切った。

 藤沢は大学の救急病棟で救急病棟の医長と婦長に救急病棟で
患者を引きとってもらえるか交渉していた。「ですから、うち
の関連病院の子癇の患者さんを受け入れてほしいんです。産婦
人科の病棟は満床ではいらないですし、処置に関してはこちら
で責任もってやりますので....。」「藤沢先生。そうはいって
も産科はやっぱり全く別物だから.....。」「緊急帝王切開し
て妊娠、分娩を終了させれば母体の管理は通常と同じです。」
「だが基本的に子癇は産婦人科の重症疾患だ。胎児と母体と
同時に管理しなくちゃいけない。モニタリングの機械はどうす
る。産婦人科病棟からもってくるのかい。」「こちらでも
責任もって管理できないですよ。看護師だってなれてないで
すし、何かあったら本当に藤沢先生が責任とれるんですか?」
詰問調に詰め寄る婦長に藤沢は押し黙るほかなかった。

(次回につづく)
【2006/12/19 23:52】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(14)
N県内に母体のためのICU(集中治療室)と新生児のためのNICU(新
生児集中治療室)を備えているのはN県立医大と県立奈良山病院、
天理市よろず病院、近畿市医大ほどしかない。後者2病院は改築工
事などで救急受けいれできないことが公示されていた。丸山は県
内の施設への転送が絶望的であることになかば愕然としていた。
N県内に里美を搬送できる施設はない....。だがこの小さな町病院
に里美をとどめておくことのはできない事ははっきりしていた。
痙攣発作を起こしている妊婦に帝王切開のために全身麻酔をかけ
るとなれば、麻酔管理のために麻酔医が必要である。通常の帝王
切開であれば腰椎麻酔であるから丸山一人でもなんとかできるが
痙攣発作を起こしている妊婦の帝王切開となれば突然、呼吸状態
も悪くなる可能性もあり、全身麻酔で行わなくてはならない。
 麻酔科の常勤医のいない川淀病院ではどうしようもないこと
ははっきりしていた。となりのO府の病院を片っ端からさがさなく
てはならない.....。丸山はO府内のめぼしい医療機関のの連絡先
を確認しながら電話をかけ続けた.....。

 大輔は不安な表情で里美の様子を見ていた。本来であれば妻
の出産を心待ちにしているはずだった。ところが今は里美も
お腹の子供も危険な状態で、しかもこの病院では対応できないた
め転送が必要だという。時計は3時を回っており里美が痙攣を起
こしてから1時間半が経とうとしていた。どうやら転送先はまだ
見つからないらしい。全くなんということなのだ.....。大輔は
今の状況が信じられないままに呆然としていた。大輔の父親の
英雄は助産師の広川に「まだ転送先はきまらないのか。」と詰
め寄った。広川は「今、先生と師長が電話で探していますので
.....。」と答える他に仕方がなかった。

(次回につづく)

 明日は当直のためブログはお休みします。


 
【2006/12/17 12:10】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(13)
 「大学側もなんとか受け入れができるか検討中ですが、だめな
ら大学の方からも転送先をさがしてくれるということです。も
ちろん、こちらも転送先を探しますが.....。」「そうですか....。」
大輔はつぶやくように言った。「なんとかよろしくお願いします。」

 竹内に患者さんをみてもらいながら丸山は医療機関の名簿をみな
がら順に電話をかけていった。「もしもし県立奈良山病院ですが。」
「申し訳ありません。こちら川淀病院の産婦人科の丸山と申します
が一人、転送をお願いしたい患者さんがおりまして......。」「わかり
ました。電話は当直医にまわした方がいいですか?それとも産婦人科
の拘束医にまわした方がいいでしょうか?」「産婦人科の拘束医をおね
がいします。」「わかりました。それでは電話を転送しますのでその
ままお待ち下さい。」しばらく電話の保留音が流れたあと、産婦人科
の拘束医が電話に出た。「もしもし、産婦人科当直医の今井ですが。」
「お忙しいところすいません。川淀病院の丸山です。実は一人転送
をお願いしたい患者さんがおりまして....。34歳の女性で予定日を
すぎても陣痛がこなかったことから陣痛誘発して経過をみていた
最中に子癇発作と思われる痙攣発作を意識障害をおこした方なの
ですが、当院にNICUもないことからそちらでみていただけないかと
いうことの問い合わせなのですが....。」「わかりました。ですが
すいません。実は今、24週の早産の方の分娩が進行中で、NICUが
その人の赤ちゃんが入ると満床になってしまう予定だったはずな
んですよ。一応、ベットあけられるか問い合わせてみますけど
子癇発作ということだと緊急帝王切開になりますよね。胎児仮死
になる可能性もあるし、ちょっとうちでは受け入れは困難だと
思いますが......。」「そうですか...。」「先生、本当に申し
わけないのですが他をあたっていただけますか?こちらで受け入れ
体制がとれそうでしたらこちらから改めてお電話いたしますので。」
「わかりました。」丸山は溜息をついて電話を切ったのち、次の
転送先の候補の病院に電話をかけた。

(次回につづく)

【2006/12/16 22:41】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(12)
里美の血圧は140台で落ち着いていた。痙攣は今のところ落ち着
いてはいた。痛覚反応はあるが応答はない。麻痺まども認められ
なかった。丸山は竹内に言った。「一応、頭に何か起こった可能
性も考えてCTだけでも撮影しておいた方がいいですかね.....。」
 竹内は言った。「もしも、頭に何かあったとしてもここでは
どうしようもないでしょう。脳外科がないこの病院で緊急に処
置できるわけでもないしCTに運んでいる間に急変する可能性も
あるかもしれない。もし大学が受けられるということになれば
ここから20分くらいでいけるでしょうし、頭のチェックは人手
がある転送先にお願いした方がいいのではないでしょうか。」
「まあ確かにCT室に運んでいる間に大学から連絡が入る可能性
もある...。子癇発作であればあまり動かしたくないのも事実
ではあるし.....。まずは一刻も早く転送先をさがすのが先決
か....。」丸山はそうつぶやいた。

 丸山はご家族にお話することにした。夫の大輔と大輔の両親
と里美の両親が不安そうな顔つきで面談室で待っていた。丸山
は説明を始めた。「里美さんの状態ですが、ご主人には先ほど
簡単な説明はさせていただいたのですが、子癇発作という状態
であると考えられます。痙攣発作を併発し、DICなどの合併症
を急激に引き起こす重篤な妊娠、分娩の際の合併症と考えら
れます。放置すれば母子ともに命が危険な状態となってしまう
のです。できるだけ早く帝王切開して赤ちゃんを取り上げる
必要があります。しかしながら赤ちゃんの状態も悪くなる可能性
があるのでNICUという赤ちゃんをしっかりみれる施設がある
ところで帝王切開をしなくてはならないのです。今大学の方に
連絡を入れましたが大学は今満床で受け入れは難しいということ
でした.....。」丸山は話をつづけた。

(次回につづく)
【2006/12/14 23:47】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(11)
 藤沢は手術室で手をおろすとすぐ病棟に電話をかけた。
 「もしもし、A5病棟ですが......。」「もしもし、藤沢だけど。
実は今、関連病院から子癇発作の患者さんの転送を頼まれたん
だけど、ベット状況はどうかな?」「先生、今、緊急の帝王切開
が終わったばかりでしょう?また緊急入院ですか?」病棟の看護
師の声は不満げだった。「受け入れられれば受け入れなくちゃ
いけないんだ。ベットの状況はどうなの?」「今は満床ですよ。
入れるところはなさそうですね。」「そうか...。」「子癇発作と
いうことだと赤ちゃん用にNICUも1床確保しなくちゃいけない
ですよね。NICUも今1床ありますけど、明日、入る予定が
ありますし、どちらにしろ無理だと思いますけど......。」
「わかった。母体だけでも他の病棟でうけてもらえないかも検
討してもらうよ.....。」藤沢は電話を切った。川淀病院に
電話をかける。「もしもし川淀病院ですが....。」「すいません。
こちらN県立医大付属病院の婦人科当直医の藤沢ですが、産婦
人科の丸山先生につなげていただきたいのですが.....。」「わか
りました。」受付は丸山に電話をつなげた。「もしもし、丸山
ですが.....。」藤沢は丸山の声を聞いて言った。「丸山先生
すいません。大学の産婦人科病棟は満床です。一応他の病棟
でもとってもらえないか交渉してみますけど、うちで引きとる
のは難しそうです。」「そうですか......。」「そちらで引き続き
他の転送先もあたっていただいてよろしいですか?」「ええ、
すでにそうしていますが.....。先生、申しわけないですけ
ど大学の方からも転送先探していただいてよろしいですか?」
「わかりました、ほかの病棟の受け入れ可能が確認してから
転送先もさがさせていただきますので。」「よろしくお願いしま
す.....。」丸山は少し切ない思いをいだきながら電話を切った。
時計は2時を回っていた。

(次回につづく)
【2006/12/13 23:51】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(10)
 藤沢は言った。「丸山先生、申し訳ない。当直体制の中、
今、緊急帝王切開中なんですよ。病棟のベット空いてるか
確認して、NICUの空きのチェックとスタッフの呼び出しを
して受け入れ体制ができるか確認しないとこちらで受けら
れるかわからないんです。丁度、大学も夏休み体制に入っ
て休みに入っているスタッフもいるものですから.....。手
術終わり次第、受け入れできるか確認して連絡しますけど
他の転院先も探してもらった方がいいと思います。できるかぎ
りはこちらで患者さんひき取らせてもらおうとは考えてい
ますが.....。」「そうですか.....。」「ともかくまたこちらか
ら連絡さしあげますので.......。」「わかりました。よろしく
お願いします.....。」丸山はそう言って電話を切った。

 陣痛室の美里のそばに丸山は戻った。「今、高橋さんどんな
感じですか?」丸山は竹内に聞いた。「強直性痙攣がまた起こる
かもしれないのでバイトブロックをかませました。尿道カテー
テルも挿入しました。血圧は140台で今のところは落ち着いて
いますが.....。」「そうですか。」「大学でとってくれそうです
か?」もどってきた丸山に竹内は聞いた。「今大学の方も緊急帝
王切開中で、当直医もすぐにはベット状況が確認できないよう
なんだ。丁度夏休み体制でスタッフも手薄のところだから....
.。大学スタッフも各地の関連病院の当直を連日のようにやらさ
れてみなくたくたの状態だろうし....。なんとかうけてくれる
ようにしたいとは言っていたけれど、こちらでも転送先他にも
あたってくれとのことなんだ.....。先生、申しわけないけど
患者さんみてもらって、私、転送先をさがさせてもらっていい
ですか?」「わかりました。なにかあればすぐ先生よばせてもら
いますね。」「ええ、お願いします。」丸山は広川に声をかけた。
「広川さん。婦長さんに連絡してきてもらって。いっしょに転院
先を探してもらおう。」「わかりました。」広川は答えた。

(次回につづく)

 昨日、おとといは体調崩して更新する元気がありませんでした。
 私は単なる風邪のようですが、今急性胃腸炎が非常にはやって
います。(当直してると絶え間なく下痢、嘔吐の患者さんがやっ
てきます。)皆さんも手洗いして予防につとめてください。
【2006/12/12 23:29】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(9)
 竹内が陣痛室にかけつけた。丸山は竹内の姿をみると言った。
 「竹内先生すいません。痙攣発作がおこってしまって血圧も急激
に上昇してきています。子癇発作だとは思いますがいずれにしても
転送しなくてはならないですし、ご家族にもお話しなくてはなら
ないので申し訳ないですが全身管理をお願いしたいのですが....。」
 「わかりました。」竹内は答えた。丸山は陣痛室をでると家族に
説明をする準備をはじめた。大輔が不安な表情を浮かべて面談室
に入ってくる。「先生、妻は大丈夫なんでしょうか?」「高橋さん。
実はそれについてお話ししたいんです。どうやら奥様は子癇
発作を起こしたと考えられます。」「子癇発作?」「妊娠にともなう重
篤な合併症で今回のような痙攣発作やDIC(汎血管内凝固症候群)
などをおこす合併症です。妊娠による合併症なので妊娠、分娩の
即座の停止が根本的な治療です。すぐ帝王切開が必要ですが、
お腹のお子さんの状態も悪くなることが多く、NICUがある施設
で帝王切開することが必要です。このままでは母子共々命を失う
可能性があります。」「そんな.......。」「今、さきほど一緒にみて
いただいた内科の先生にも奥様の状態をみてもらっています。
 できるだけ早く転送先を探したいと考えておりますので....。」
「わかりました。よろしくお願いします。」大輔はそう言って頭を
下げた。

 丸山は第一の転送先としてN県立医大を考えていた。N県立医大
に電話をかける。「もしもし、こちらN県立医大ですが...。」「川
淀病院の産婦人科の丸山と申します。実は転送したい患者さんが
いるのですが、当直医の先生をお願いしたいのですが.....。」
「わかりました。」電話口の事務員が産婦人科の当直医を呼び出す。
「もしもし、当直の藤沢ですが....。」電話口に当直医が出た。
「もしもし、藤沢先生、いつもお世話になっています。川淀病院
の丸山ですが....。実は転送させていただきたい患者さんがおり
まして、34歳の女性なのですが、子癇発作と思われる痙攣発作を
起こしており意識がない状態です。マグネゾールで痙攣はおさまり
ましたが、血圧も高い状態が続いており、NICUのある施設での
帝王切開が必要だと思われます。なんとか受け入れできないで
しょうか......。」丸山は自分の母校はすぐ受け入れてくれるだ
ろうと考えていた。だが当直医の答えは彼の期待を裏切るもので
あった。

(次回につづく)

 明日は出張で家を1日あけるのでブログお休みです。
【2006/12/08 23:30】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(8)
 時計は1時を過ぎていた。里美は陣痛の痛みのときに顔をしか
めたり手足を動かしたりしていたが、広川の呼びかけにには
答えなかった。広川は疲れて眠っているのだと考えていた。
 顔色もさっきとちがってよいし、血圧は上は140台くらいで
落ち着いているし、脈拍も落ち着いていた。CTGも大きな異常
はない。赤ちゃんも落ち着いているわ...。
 広川はそんなことを考えながら看護記録の記載をしていた。

 午前1時37分、里美は突然唸ったかと思うと全身がこわばり
痙攣しはじめた。「高橋さん。大丈夫?」広川は突然の事に
動揺して声をかけた。ともかく先生に連絡しなくては......。
 広川は電話を取ると、当直室の丸山に電話をかけた。「もし
もし....。丸山ですが....。」「丸山先生、すいません。高橋
さんですけど突然痙攣が始まって.....。すぐ来ていただけま
すか?」「わかった、すぐいくよ。」丸山はそう答えると電話を
切った。

 丸山は息を切らして陣痛室に駆けつけた。里美のそばに向か
う。強直性の痙攣から丸山は子癇発作と考えた。「広川さん。
マグネゾール1A 点滴の側管から注入して.....。」「わかりま
した。」広川が指示をうけて点滴からマグネゾールを注射した。
 まもなく里美の痙攣は止まった。丸山はマグネゾールの
持続静注の指示を出す。子癇発作。主に妊娠末期に起こる
痙攣発作やDICを併発する重篤な合併症である。そのままでは
母子とも命を失う可能性があり、胎児仮死となる可能性が高い。
 妊娠、分娩状態の即座の中止が根本治療である。子供の救命
のためNICUがある施設で即座に帝王切開しなくてはならない。
川淀病院にはNICUの施設はなかった。丸山はNICUがあり、すぐ
に帝王切開ができる施設への転送が必要だと判断した。転送で
きるまで母体の状態を保たなくてはならない。
 「血圧200/100mmHgです。」広川が丸山に伝える。「広川さん。
子癇発作だと思う。胎児仮死となる可能性が高いんだ。NICUの
あるところに転送しないと母体も子供も助けられない。
 これからご家族にお話して転送先をさがすから。竹内先生
を呼んで患者さんをみていてもらおう。」丸山は竹内に電話を
する。「もしもし、竹内ですが....。」「竹内先生申し訳ない。
さっきの患者さんなんだけど痙攣発作をおこしたんだ。多分
子癇発作なんだと思う。転送が必要なんだ。これからご家族
にお話して転送先をさがさなくちゃならない。申し訳ないんだ
けど患者さんをみて欲しいんだ.....。」「わかりました。すぐ
いきます。」竹内はそう答えた。

(次回につづく)

【2006/12/07 22:25】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(7)
 診察を行った後、竹内は言った。「バイタルも安定しています
し、特に麻痺もないようですね。痛み刺激にも反応しますし、
失神発作でいいんじゃないかと思うのですが.....。」丸山は
「そうですか........。」と答えた。「頭に何か起こったという
可能性はないですかね?」竹内はうーんと唸ってから言った。
「まあ、どうでしょうかね......。34歳という年齢で特に今まで
大きな病気もされたことがないということですから......。
可能性は低いとは思いますけれど.......。いずれにしても
少し様子をみていいと思いますけれど.....。」「わかりました。
先生どうも有難うございました.....。」丸山は竹内に礼を言
った。ご家族も不安だろう。説明しておかないと。丸山はそう
考えて大輔に面談室にきてもらって説明することにした。
 大輔は少し不安そうな表情を浮かべながら面談室に入って
きた。丸山は言った。「どうもご苦労さまです。0時すぎから
少し反応が悪くなったことに関してですが、内科の先生にも
みていただいたのですが全身状態は落ち着いていて、なにか
大きなことが起きたというよりは陣痛発作に伴いおこった失神
発作ではないかと思われます。いままで奥様はこのような
失神発作をおこされたことはありますか?」「いや特にはそう
いうことはなかったと思いますが......。」「そうですか...。
いずれにしても慎重に経過をみさせていただきたいと思いま
す。なにかあればまたご説明いたしますので....。」「わかり
ました.....。」大輔は少しほっとした表情を浮かべてそう答
えた。丸山は大輔を送り出すとふたたび陣痛室の美里のところ
に行った。広川に声をかける。「広川さん。高橋さんどうかな。」
「落ち着いてはいるようです。血圧は148/69mmHg,血中酸素飽和度
は 97%です。 」「わかりました。なにかあったらすぐ連絡して
ください.....。」丸山はそういって陣痛室を出た。

(次回につづく)

 明日は当直なのでブログはお休みです。
【2006/12/04 23:49】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(6)
 丸山はすぐに陣痛室にかけつけた。「広川さん。どんな感じ
だい。」「さきほどから少し意識がはっきりしなくなって....。」
 丸山は美里に声をかける。「高橋さん。大丈夫ですか。」美里
は少しボーっとしたまなざしで眼を開けた。「バイタルはどう?」
 広川が血圧を測る。「血圧は147/73、 心拍数は73です。」丸山
はペンライトで対光反射を確認する。 「瞳孔は左右差ないね。対光
反射も正常だし偏心も認めないね。」丸山は美里の左腕をつねって
みた。美里はうーんとうなりながら手を払いのけようとする。
「特に麻痺もないか......。血圧も脈拍も呼吸も落ち着いては
いるし......。」広川は丸山に尋ねた。「どうしますか?」「大丈夫
な気はするけど内科の先生にも診てもらった方がいいかな....。
 今日の内科当直の先生はだれかな?」広川は当直表を確認して
言った。「竹内先生ですね。」「わかった。じゃあ電話してみるよ。」
 丸山は電話を取ると竹内をコールした。ほどなく竹内から電話
が入った。丸山は言った。「竹内先生。丸山です。この時間に申し
訳ないんだけど一人診ていただきたい患者さんがいるんです。
 産婦人科病棟にきていただいていいですか?」竹内は答えた。
「わかりました。すぐいきます。」

 竹内はすぐに産婦人科病棟にやってきた。丸山は「この時間に
すまないね。」と声をかける。「実は今分娩中の患者さんなんで
すけど、0時すぎに意識消失があったということでね。今、診察
したんだけど、血圧や脈拍、呼吸は正常で、痛み刺激で反応する。
対光反射もあるし、麻痺もなさそうなんだけど、一応内科的に
問題がないか診察して欲しいんですよ。」竹内は言った。「わかり
ました。34歳の方ですね。何か基礎疾患などある方ですか?糖尿
病とか不整脈とか....。」「特には何もない人だけど......。」「わ
かりました。じゃあ診察させていただきますね。」竹内は陣痛室に
いき、美里のところに向かった。大輔が少し不安そうな面持ちで
美里の傍にいた。「内科当直医の竹内です。奥様診察させていた
だきますね.......。」竹内は大輔にそういって美里の診察をはじ
めた。

(次回につづく)

 昨日は疲れ切ってうちに帰ってすぐ横になってしまっておきられ
なくなってしまってブログ更新できませんでした。すいません。
 ひきつづきよろしくお願いします。
【2006/12/03 14:46】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
誤報(5)
 時間を追って強くなる陣痛に里美は耐え切れなくなってきて
いた。時計は夜の11時を回っていた。痛みで冷や汗がでてくる。
「もういや....。家に帰りたい....。」里美は広川に訴えた。「そ
んなこといわないで、赤ちゃんも頑張っているんだから.」広川
はそういって里美を励ました。

 丸山は家で食事をすませて病院にもどってきた。11時15分くらい
だった。病棟に電話をかける。広川が出た。「もしもし丸山だけど、
高橋さんどんなかんじですか?」「陣痛は定期的に2~3分おきにきて
いますけど、子宮口の開大は4cmくらいでそんなにすすんでいな
い感じですね。胎児の心音は正常でCTGも問題なさそうです。」
「そうですか、わかりました。今病院にもどってきたところです。
当直室にいますのでなにかあったらすぐ連絡くださいね。」「わかり
ました。」広川はそう言って電話を切った。

 0時を回ったころ美里は頭の痛みを訴えた。「なんとなくこめかみ
のあたりが痛い....。」発汗も著明であった。広川は丸山に電話を
かけた。「もしもし、丸山ですが...。」「すいません。広川ですが、
高橋さん11時半ころにも少し嘔吐されています。発汗も著明で
少し脱水もあるかもしれません。」「そうですか、点滴を生理食塩水
に代えましょう。」「わかりました。」広川は指示をうけて点滴を
代えていた時だった。里美がまた嘔吐をした。「大丈夫?高橋さん。」
「広川さん。ちょっと吐き気がつよくて.....。」「わかったわ。な
にか吐き気止めつかえるか先生に聞いてみるから....。」広川は
再度丸山に電話をかけた。「先生、なんどもすいません。高橋さん
なんですけどやはり吐き気が強いようで先ほども嘔吐されていま
す。なにか薬使わせてもらったほうがよさそうですが...。」「そう
ですか。わかりました。点滴の側管からプリンペランを1アンプル
静注してください。」「わかりました。」広川はそう答えて電話を
切った。「高橋さん。吐き気止めつかってみましょう。これで少し
楽になるとおもうわ....。」広川は里美にそう言った。里美は目を
つぶって黙って頷いた。陣痛と頭痛の痛みで詩織はどうにかなって
しまいそうだった....。

 午前0時14分、広川は里美の痛みに伴う唸り声がしなくなったの
に気づいた。「高橋さん?大丈夫?」広川の呼びかけに里美は反応
しなかった。「高橋さん?」広川は少し慌てて丸山に電話をかけた。
「もしもし、丸山ですが.....。」「先生、すいません。高橋さんで
すが今、呼びかけに反応しなくなりました。意識も今一つはっきり
しません。すぐきていただけますか?」「わかりました。すぐいき
ます。」丸山はそう答えてすぐ電話を切った。

(次回につづく)
【2006/12/01 23:46】 誤報 | トラックバック(0) | コメント(0) |
藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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