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ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

誤報(13)
 「大学側もなんとか受け入れができるか検討中ですが、だめな
ら大学の方からも転送先をさがしてくれるということです。も
ちろん、こちらも転送先を探しますが.....。」「そうですか....。」
大輔はつぶやくように言った。「なんとかよろしくお願いします。」

 竹内に患者さんをみてもらいながら丸山は医療機関の名簿をみな
がら順に電話をかけていった。「もしもし県立奈良山病院ですが。」
「申し訳ありません。こちら川淀病院の産婦人科の丸山と申します
が一人、転送をお願いしたい患者さんがおりまして......。」「わかり
ました。電話は当直医にまわした方がいいですか?それとも産婦人科
の拘束医にまわした方がいいでしょうか?」「産婦人科の拘束医をおね
がいします。」「わかりました。それでは電話を転送しますのでその
ままお待ち下さい。」しばらく電話の保留音が流れたあと、産婦人科
の拘束医が電話に出た。「もしもし、産婦人科当直医の今井ですが。」
「お忙しいところすいません。川淀病院の丸山です。実は一人転送
をお願いしたい患者さんがおりまして....。34歳の女性で予定日を
すぎても陣痛がこなかったことから陣痛誘発して経過をみていた
最中に子癇発作と思われる痙攣発作を意識障害をおこした方なの
ですが、当院にNICUもないことからそちらでみていただけないかと
いうことの問い合わせなのですが....。」「わかりました。ですが
すいません。実は今、24週の早産の方の分娩が進行中で、NICUが
その人の赤ちゃんが入ると満床になってしまう予定だったはずな
んですよ。一応、ベットあけられるか問い合わせてみますけど
子癇発作ということだと緊急帝王切開になりますよね。胎児仮死
になる可能性もあるし、ちょっとうちでは受け入れは困難だと
思いますが......。」「そうですか...。」「先生、本当に申し
わけないのですが他をあたっていただけますか?こちらで受け入れ
体制がとれそうでしたらこちらから改めてお電話いたしますので。」
「わかりました。」丸山は溜息をついて電話を切ったのち、次の
転送先の候補の病院に電話をかけた。

(次回につづく)

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