fc2ブログ
ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

誤報(28)
 山田が一通り帝王切開についての説明を行い、手術の
承諾書をもらった後、山田は脳外科の飯島を面談室に呼
んだ。飯島は家族に一礼をしてから話を始めた。「どうも、
脳外科の飯島と申します。それで高橋さんの状態ですが、
頭部の右の被核と視床といわれる部分に大きな出血をおこ
しています。それに加えて、出血が脳室とよばれる脳脊髄
液が還流する部位に流れ出している状態です。脳出血とい
うと出血のかたまりである血腫を取り除く血腫除去術が行
われると考えられがちですが、手術の適応となるのは軽い
意識障害がある症例にかぎられます。意識がはっきりして
いる患者さんに関しては手術しないほうが予後がいいとい
われていますし、完全な昏睡の状態の方も手術の適応には
なりません。手術をしてもいい結果が出せるという証拠が
ないのです。点滴からの薬での治療を行う方がいいといわ
れているのです。つまり高橋さんのような完全な昏睡状態
の方は一般的には手術の対象にはなりません。ですが、高
橋さんの場合は脳室穿破していますので、脳脊髄液の欝滞
を解除するために脳室にチューブをいれて脳室の圧を下げ
てあげる脳室ドレナージの適応はあると思います。」「そ
れで里美は助かるんですか?」大輔は祈るような声で聞い
た。飯島は思っていた。多分、助けるのは難しいだろう..
....。少し間をおいて飯島は言った。「状態からすると少
し難しいかもしれません。脳出血で圧迫されて障害された
脳細胞は再生はしないといわれています。現在のところ状
態としては昏睡状態ですし、呼吸の状態もあやしいので脳
幹部といわれる呼吸や循環動態を維持する機能をもってい
る大事な部分が障害されている可能性がありますからドレ
ナージをしても助けられない可能性もありますし、助けら
れたとしても寝たきり、いわゆる植物状態となる可能性が
高いと思われます.......。」「助かったとしても植物状
態.....ですか.....。」大輔はつぶやくように言った。

(次回につづく)

 明日は当直なのでブログはお休みです。
スポンサーサイト



Copyright © 藪医者の独り言. all rights reserved.