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雪中花(64)
 退院前に一回、FOLFIRIを行い、彼女は退院となった。
 だが腹膜播種は存在し、肝転移もある状態である。そん
なに長い間状態が落ち着いているとは思えなかった。多分
次に何か起こったときはもう家には帰れなくなる可能性が
高いことは彼女も彼女の夫も口にはしないが覚悟している
ことではあった。手術で得られたこの小康状態ができるだ
け長くつづいてくれることを祈らずにはいられなかった。

 その後も彼女は外来で治療を続けた。2週間に1回、入院
してもらいながら治療をつづけた。幸いにも大きな副作用を
起こすことなく治療はつづけられた。腸閉塞を起こすことも
なく1ヶ月がすぎ2ヶ月が経っていった。腫瘍マーカーは
少しずつ気持ち上昇していたが高止まりで急激な上昇も
ない状態で推移した。3ヶ月後にとったCTでもそんなに
肝転移が増大している状態ではなかった。さすがに腫瘍自体
は縮小していなかったが、化学療法で少なからず病気の
進行を抑えているのは確かなようであった。CTの結果を
外来聞きにきた彼女に私は言った。「腫瘍マーカーも微妙
ながら上昇してきていますし、腹部のCT所見でも肝臓の
転移は少し大きくなっています。やはり治療で病気の進行
を完全に抑えることはできないようです。しかしながら
今の時点でこれ以上の治療はないですし(エルプラット
が出る前の話)、副作用もそんなに認められていません。
 腫瘍が大きくなる速度は抑えてくれているとは思うの
で今の治療を継続したいと考えています。」彼女は言った。
「そうですよね。まあ予想したとおりですね。でも手術
して3ヶ月なんとか元気でいますし、先生がいっていた
年越しもなんとかできそうですからまあ上出来でないで
すか…….。まあ、あの手術を無事に乗り越えただけで
も正直私はホッとしましたから、ここはおまけみたいな
ものですよ。今は食事もおいしいし、痛みもないし言う
ことないですから……。」「そうですか……..。」
 彼女は現状についての覚悟はできているようであった。
 特に取り乱すこともなかったし落ち着いて現状を理解
していた。彼女の落ち着きに私はすがすがしさを感じて
いた。
(次回につづく)
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