FC2ブログ
ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

春風(28)
 悟が会社の飲み会で帰りが遅くなったある日、詩織は外で
友人と食事をとって家に帰ってきた。アパートに一人でいて
ぼんやりとテレビを見ていると電話がかかってきた。詩織は
電話をとった。「はい、篠崎ですが…..。」「ああ、詩織かい。
母さんだけど。」友代の声だった。「ああ、母さん。」「その後
どうかなと思ってね。大丈夫かい。」「うん。まあまあね。
体の調子はいいんだけど…..。悟さんは気を使ってくれている
し…。」「じゃあとりあえずは落ち着いているのね。」少し考えて
詩織は言った。「どうなのかな……。うまく言えないんだけど
なんとなくギクシャクしている感じなの….。」「ギクシャク
しているって…。どういうこと?」「なんていうのかな。う
まく説明できないんだけど、今までの自然な雰囲気が無くな
ってしまったっていうか。」「そうなんだ。でもまだ流産から
間もないししょうがないんじゃないかしら。2人ともショック
だったろうし……。」「そうね….。」「時間がたてばまた元通り
になるわよ。いずれまた子作りもしなくちゃならないし。」
「母さん。本当の所、正直、今回の事で少し妊娠するのが
怖くなってしまったの。本当に手術を受けたときの悲しさ
やつらさといったら言葉には言い表せないくらいのものだ
ったの。あんな思いをまたしなくちゃならなくなってしま
ったら私正気でいられるかわからないわ…..。」「詩織…。」
「それに、このまま悟さんといっしょにいていいのかしら
っていう考えが浮かんできてしまって….。」「それはどうい
うこと?」「だって、私でなかったら悟さんだってこんなこと
で苦しまなくてもよかったかもと思ってしまって…..。」
二人の間に沈黙が流れた。友代は言った。「詩織。今回
つらかったのはよくわかるわ……。でもあなた以上に
悟さんだってつらいと思うわよ。ましてやあなたがそんな
事を考えているんならなおさらね。亡くなった子はそれが
運命だったんだと思わないと…..。」

(次回につづく)
スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 藪医者の独り言. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。