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春風(33)
 その週の週末に詩織と悟は2人で病院に行くことにした。
 二人でアパートからバス停に向かう道で悟は詩織に言った。
 「大丈夫かい?」「大丈夫よ。正直、ちょっと緊張している
けど…..。あなたもいるし。」「ならよかった。今日はいい結果
が聞けるに違いないさ。」「私もそう信じているわ……..。」
 病院に近づくにつれ二人は無言になった。詩織は正直なと
ころ忘れかけた記憶がよみがえってきそうで嫌であった。
 だがそんなこと考えていてもしょうがないわ…..。と彼女
は自分に言い聞かせていた。
 病院について窓口で手続きを行う。意識していなくても
1年前の情景が思い浮かぶ。「あの時と全く変わっていない
わ……。」詩織は思った。あの日の事が否応なく思い出される。
二人は産婦人科外来に向かった。週末の外来はいつも混雑
している。悟は言った。「これは結構また待ちそうだね……。」
詩織は答えた。「まあそれは覚悟はしていたから。ゆっくり
待つしかないわ…..。」彼女はふっと溜息をつくと待合室の椅子
に座った。看護師にもらった問診表にいままでの経過を書き込
んで窓口に提出して待っていると彼女は採血と検尿に呼ばれた。
 検査を終えて詩織は悟の元にもどってきた。悟は詩織に言った。
「まだ結構かかりそうだね。」「ええ。まだまだ順番待ちの人
たくさんいそうだしね……。」「大丈夫かい?」「大丈夫よ。」
 軽いつわりもあり待っているのは正直少しつらかったが
詩織はなるべくそれを悟に知られないように微笑んだ。
 しばらくして看護師が彼女を呼んだ。「篠崎詩織さん。
中待合にお入り下さい。」詩織は立ち上がって悟に言った。
「じゃあ、あなたいってくるわ。」悟はうなずいて言った。
「ああ、ここで待っているから…..。」詩織は悟にふっと微
笑むと中待合室に向かった。

(次回につづく)
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