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ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

春風(48)
 「正直まだいつ退院になるかも分からない状況なん
です。このままだらだらと出産まで入院となってしま
う可能性もないとはいえないですし、なんとか退院で
きたとしても仕事に復帰できるかも分からない状況な
ので…..。さすがに半年以上も休むかもしれないという
ことになると少し心苦しいところもあるので…….。」
「そうか….。そういうことだと確かにちょっと厳しい
かもしれないね….。わかった。ともかくまた詳しい
話を聞きにいくよ。まだしばらくは入院しなくてはな
らないんだね。」「ええ。」「じゃあ、今度の週末に時間
を見つけて病院にいくから。そこで詳しい話をきかせて
くれないか。」「わかりました。」詩織はそういって電話
を切った。

 その日の夜、悟が見舞いに来た時に詩織は言った。
「あなた。今日、上司の課長に退職のこと電話したわ。」
悟は詩織の顔をみつめてから言った「そうか、それで
なんていってたんだい。」「ともかく詳しい状況がききた
いからこの週末に病院にわざわざきてくれるっていうの。」
「そうか…..。まあ、向こうにしてもこちらがどうするか
はっきりしてもらわないと困るだろうからな。」「ええ、そう
思うわ……。でも短大でてから9年間も働いてよくしても
らった職場だからこんな形でやめなくてはならないのは
ちょっと不本意ではあるんだけど…..。本当にお世話になった
しこれからも働けるんではないかと思っていたから…….。」
「ああ、そうだよな……。でもそうはいってもやっぱりお腹
の子供のことが第一だからな…..。仕方ないだろう。」「ええ。
わかっているわ。仕方ないことよ……。」詩織はそういって
天をあおいだ。

(次回につづく)
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