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誤報(85)
 「病院とは2回話し合いましたが、病院側には特に手落ちは
ない。できるだけのことをしたということを繰り返すばかりで
埒が開きません。院長先生と丸山先生も病院の過ちを認めよう
としないのです。」涙ながらに語る大輔に青山は「そうです
か......。」と呟いた。横から英雄は言った。「記者さん。お
願いです。この事件を公にしてください。病院の医療ミスを暴
いて欲しいんです...。名前と写真がでてもかまわない....。」
島田が言った。「このことを報道すると、ご家族にも迷惑がかか
ります。新聞で報道すれば新聞、テレビ取材が殺到しますよ。」
「それでもかまいません。」大輔が言った。

 N県支局で川淀病院妊婦死亡事件についての会議が開かれた。
 青山が言った。「妊婦さんは高橋里美さん34歳の女性です。
8月7日に分娩誘発のために入院になっています。8月8日の0時
すぎに意識がなくなっています。担当の医師は分娩の疼痛に
よる失神という診断をくだして、内科医師がCTをとるように
すすめたのを拒んだと家族は言っています。」「内科医師の
意見を無視したということだね。」井出が言った。「そういう
ことだと思います。そのあと担当医は1時間半にわたって寝て
休んでいたということです。1時すぎに痙攣発作が起こった
ところで担当医がきたということです。子癇発作という診断
で治療が行われ、転送先を探し始めたということだが転送
先が見つからなかったということです。」「ようやく見つけた
転送先では子癇発作ではなく脳出血という診断で、帝王切開
と、頭の手術が行われたそうです。里美さんは転送先で亡く
なっています。」と島田が横から付け加えた。青山が続ける。
「つまり、脳出血だったのに最初は分娩の途中での痛みによる
失神だったと決めつけ内科医師の意見を無視して寝て休んで
いたということ、痙攣発作を起こしたあとも子癇発作だと
いって脳出血ではなく子癇発作の治療をしていたこと。子癇
発作と誤診したために転送先が見つからなかったことが
あります。」別の部署の記者の狭山が言った。「青山君、非常
によく取材したと思うのだが、ご家族の話の裏はとれているの
かい?病院側に事実関係の確認がしっかりとれているのかな?
たとえば、内科の先生がCTを勧めたっていうのは?カルテの
コピーにはそのような記載はないようだけど.....。家族の話
だけでカルテにかかれてないことを事実と断定していいんだ
ろうか。個人の話には思い込みが紛れ込む可能性もあると
思うんだ。」「それは....。実は病院側にも何度かアプローチ
していたのですが病院側の口は重くて.....。」「だが、紛争
になっているときは両者から話をきちんときかないと。私は
カルテのコピーからわかることだけ記事にするべきだと思う
んだが.....。」井出が言った。「まあ狭山君のいうことも
わかるが、病院側は認めようとしないだろうし、取材もしにく
いだろうしまずコメントを取るのは無理だろう。ご家族が実名
を出してもらっても報道して欲しいといっているんだ。我々は
それを記事にして報道する義務がある。そうだろう。」「支局
長.....。ですが....。」「狭山君、余計な心配をするな。これ
はおぜん立てされたドラマのようじゃないか。
 まず役者がそろっている。主役は妊婦という弱者の代表。調べ
てみたところ調査の結果は「医師の怠慢」。 読者はまちがいなく
引き込まれる。このスクープで販売部数だって上がるだろう。
 脳外科と産婦人科の先生からもコメントをもらっている。
 大丈夫さ.......。」

(次回につづく)
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