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誤報(105)
 その日も丸山は11時ごろまで書類仕事などをこなした後、家に
帰ってきた。自宅の玄関のチャイムを鳴らすと、真理絵がドアを
開いた。「お帰りなさい。」真理絵は夫の顔を見るとそういった。
「ただいま。」丸山はそう答えてドアの中に入った。真理絵に
荷物を預けた丸山はリビングにいきソファーにどさっと座りこん
だ。「いつもお疲れさま。」疲れて帰ってきた夫に真理絵は声を
かけた。「ああ.......。」「どうします。ビールでも入れまし
ょうか?」丸山は真理絵の言葉を手でさえぎって言った。「なあ
真理絵、明日、病院に警察が来るっていうんだ。」真理絵の表情
が一瞬こわばった。「警察が.....。例の患者さんの件でですか?」
「ああ、その件で病院に話をききにきたいと。患者さんのカルテ
など一式を持っていくつもりらしい。」「あなたは、大丈夫なん
ですか?」「大丈夫?うん。もしかしたら逮捕されるかもしれない
ね。」「逮捕される?だってあなたには何も落度はないんですよ
ね。」「ああ、あの状況下で僕は僕なりに精一杯やったつもり
なんだが.....。だがマスコミや一般の人たちにとってみれば僕
は医療ミスで患者を殺した大悪人ってことらしいからね。警察
も一般受けを狙って逮捕するかもしれないさ.....。F県でも
産婦人科医が逮捕されたじゃないか。医療なんて不確実で20数年
やっている僕だって、毎日正直びくびくしてやっているのに、
今の人たちはうまくいって当たり前、何かあれば医者のせいと
思い込んでいる人が多いんだから.....。」「あなた...。あなた
はずっと家族や自分のことを犠牲にして20数年間もこの病院で
数千人の赤ちゃんをこの世に送り出してきたんでしょう。私だ
って恭子だってほとんどお父さんがいない母子家庭だと思って
あなたを支えてきたつもりなのに....。1週間のうちに家に帰って
眠れるのは1日か2日だけ、帰ってきてもなにかあって呼び出さ
れれば病院にすぐにかけつけなくちゃいけない状態でずっと
やってきたのに...。あなたはずっとそうやってやってきたのに
それらに対しての最終的な答えがこれなんですか?」「ああ...。
俺が20数年間この病院でやってきたことは一体なんだったんだ
ろうな.....。地域の産婦人科を、このN県の南部でお産をとれる
のはうちしかない。俺が地域の医療を支えているんだってその
誇りだけで頑張ってきたのにな.....。そんなの俺の思い込み
だったのかもしれないな......。全く、笑ってしまうよ.....。」
 丸山は目にうっすらと涙を浮かべながら自分を嘲笑するかの
様に言った。

(次回につづく)
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