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誤報(106)
 翌日の午後6時に丸山と原田は病院の顧問弁護士の二ツ
木と病院内の会議室で高橋里美の入院カルテ、外来カルテ
や画像一式を持って待機していた。
 医局秘書が会議室のドアをノックして開いた。
「警察の方がいらっしゃいました。」医局秘書のあとから
3人の男性が入ってきた。3人は部屋に入って会釈する。原
田と丸山も会釈を返した。3人のうちの一人が口を開いた。
「どうも、先生方、お忙しいところ時間を割いていただい
て誠に申し訳ありません。私、N県警察本部の捜査第一課の
本山と申します。」本山の言葉に丸山と原田、二ツ木が立ち
上がった。本山が差し出した名刺を受け取ると原田が言っ
た。「どうも刑事さんもご苦労様です。私が院長の原田。
こちらが今回の患者さんを担当していた産婦人科部長の丸
山です。こちらがうちの顧問弁護士の二ツ木です。」原田の
言葉に本山はうなづいてから言った。「そうですか。それで
は今日はよろしくお願いします。」本山はそういうと会議室
の椅子に座った。後の2人も続いて席に座る。それを見て、
丸山と原田も続いて席についた。医局秘書が刑事たちの前に
お茶を並べ始めた。それを横目に本山が口を開いた。
「早速ですが、今回先生方に時間を割いていただいたのは、
先日ご連絡したとおりで8月にお亡くなりになった高橋里美
さんという患者さんの件です。10月の報道があって、我々と
しても調査をさせていただかなくてはならない状態でして、
この患者さんの経過についてのご説明をしていただきたくて
参りました。我々も医学に関しては素人なものでなかなか実
情をつかめないところもあると思いますが、どのような経過
であったかということについてご説明していただいてよろし
いでしょうか?」本山は見た目穏やかそうでその言葉は紳士
的であった。正直なところ丸山は少しほっとしていたが、相
手は業務上過失致死で自分の立件を考えているかもしれない
刑事である。どこで揚げ足をとられるかもしれない。事前に
「先生。ともかく先生は今回の医療行為や判断に関しては
最善をつくしたと考えていらっしゃるんですよね。でしたら
絶対にこれは誤りであった。すまないと思っているなどとは
決していわないでください。患者さんやご家族にはお気の毒
であるとは思うが、自分のやった医療行為には過誤はないと
いう線は絶対に崩さないでください。本人が誤りを認めてい
るという自白をとるのが彼らにとっては一番てっとりばやい
んです....。それが業務上過失致死で立件される原因になり
ますから....。もちろん私も傍にいますから、まずいと思った
らすぐ助けに入りますけど....。」と二ツ木に丸山は言われ
ていた。ともかく慎重に対応しなくては、説明もかなり気を
つけないといけないと丸山は考えていた。少し緊張しながら
丸山は軽く一呼吸置いて口を開いた。「わかりました。では
経過についてご説明させていただきます。患者さんは高橋里
美さん34歳の女性ですね。妊娠41週を経過しても陣痛がない
ということで陣痛誘発の目的で入院になった方です。初産の
方で、特に高血圧や糖尿病などの既往はない方です......。」
 丸山は刑事に里美の経過について説明を始めた。丸山の説明
を聞きながら、本山の脇でもう一人の刑事がパソコンを持ち出
して丸山の発言の記録を始めた。


(次回につづく)
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