FC2ブログ
ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

誤報(118)
 2006年の年が暮れようとしている大晦日の夜、狭山は自宅で
妻の幸代とテレビを見ていた。「今年もいよいよ終わりだな...。」
狭山はふとつぶやいた「勝弘は今晩は帰ってこないんだな。」「ええ、
なんでも大学の友達と初詣にいくとかで...。」「そうか......。」
「今年も色々ありましたね......。」「ああ.......。」「そうそう、
例の川淀病院、うちの支局でスクープをとった件、こんどその
スクープで新聞労連のジャーナリズム大賞が内定しているって話
ですね。」「うん........。井出支局長も労連には顔がきくから.
....。今回のスクープを大々的に対外的に宣伝したいということ
で、かなり強くプッシュしたようだからね.....。まあなんらかの
賞はとれる予定になっているようだよ。」「でもN県支局としては
名誉なことではないですか?」幸代の言葉に狭山は少し黙ってから
言った。「そうだね。そうかもしれないね........。だが、本当に
そうかはちょっと疑問だけどね......。」「それはどういうことで
すか?」「まあ、あまり大きな声ではいえないんだが、例のスクー
プの件はちょっと問題があるんだ.......。」「問題っていうのは?」
「ああ、10月の事件の最初のうちの記事のことなんだが、ほとんど
の記事の内容の裏づけが遺族サイドからしかとれていない状況で
書かれてしまった経緯があってね。本当に担当医に過失があったか
どうかは疑問なんだ....。それであわてて議論を地域の医療体制の
問題を指摘する目的での記事だったという形にスライドさせている
んだ......。一部、捏造といわれても仕方ないかもしれない脚色
された部位もあってね......。」「えっ......。でも例の病院は産科
を閉じてしまうっていう話じゃないですか.......。」「そうだ
な........。実際、N県南部で出産できる施設はあそこだけだった
から産科はなくなってしまうことになる。」「それがわかっていて
訂正もなにもしないんですか?」「幸代、それは俺にはどうしよう
もないことなんだ。医療者側からは批判のメールやファックスが
連日のようにうちの支局にとどいているが、支局長はこの件では
謝罪も訂正もするつもりはないし、自分達の正当性を強調して
いく方向で決めてしまっているんだから.......。」

(次回につづく)
スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 藪医者の独り言. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。