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芝桜の咲く丘(16)
 「どうぞ入りたまえ。」吉男はドアのノックの音にそう答えた。「失礼します。」そう言って幸助が社長室に入ってきた。「待たせてすまなかったね。そこに座ってもらっていいかな。」「お気づかいなく、それでは失礼します。」そう言って幸助はソファーに座った。「それで、里美の件だがどうだったね。」「社長、残念ながら里美さんはお亡くなりになっています。」幸助の言葉に吉男は言葉を失った。重い沈黙の時間がしばらくその場を支配した。「里美が死んでいると?」「ええ、平成10年4月15日ですね。女の子のお子さんを生んだ時に亡くなられているようです。」「出産時に?」「ええ。」「それではその子はどうしているんだね。その、私の孫になるその子と、その父親は?」「行田市内に住んでいるようです。お孫さんの名前は木下幸美さん。11歳になります。今、小学校5年生ですね。父親の名は木下雅哉。うちの下請けの川越製作所の開発部門の技術者です。」「そんな近くに.......。」「ええ、細かいところは報告書をまた見ていただければと思います。」「そうか.......。その男と里美とはどんなきっかけで.....。」「筑駒大学でのサークルでいっしょだったようですね。お嬢さんが就職されたあと、社長からの見合い話に反抗されて駆け落ちをされています。」「それは知っている。その後はどうなったかだ。」「平成8年に入籍して男は事業を立ち上げた様ですが、事業は失敗して借金に追われていたようです。男は闇金にも借金していたようで、里美さんを平成9年8月に借金の形に北陸の山谷温泉に勤めさせたようです。」吉男はそれを聞いて顔を真赤にさせた。「温泉に売り飛ばされただと!」「ええ、木下は両親が交通事故で亡くなってその保険金で里美さんを引き戻しています。里美さんはその時には妊娠されていたようですね。」「つまり身ごもった娘を借金の形にしたと。」「たぶんそういうことです。お嬢さんは前置胎盤で出産には危険を伴ったようで、出産時には羊水塞栓を起こした.....。」「もういいっ!」吉男はいたたまれなくなり思わず叫んだ。少しおいて吉男は言った。「どなってしまってすまない。堀山君。つい興奮してしまった。少し一人にして欲しいんだ。今回の調査費の請求書はおいていってもらえるかな明日かならず振り込んでおくから。」吉男の言葉に幸助は言った。「心中お察しします。気にしないでください。それでは失礼します。」幸助は静かに席を立った。
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