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帰れない老人達(3)
 70代の胃癌の術後の患者さんが食事が食べられないということ
で夜間に救急外来を受診してきた。全身状態は悪くなく当直の
医師は点滴をして帰すつもりだったのだが、家族は入院のつも
りで大量の荷物をもってきておりこのままでは帰れない、入院
させろと迫ってきたため経過観察ということで入院となり、術
後の患者さんということで外科に回ってきた。入院後は食欲旺盛
で胃癌の術後とは思えないほどであった。彼は看護婦に家族に
食事を作ってもらえなかったらしいこと、家族の中で疎外され
ているらしいことを漏らしていた。胃癌の手術自体は根治性が
あり再発の所見もない。元気で食事も摂取できていることから
何の治療と行っているわけでもない。入院している必要は医学
的にはなかった。当然退院の方向で話をするしかない。渋る家
族と話合い、退院日を決定した。
 退院予定日の2日前の夜、夜勤の看護婦が彼が病室にいない
のに気づく。病棟中捜索されたが発見できなかった。家族に
連絡するが家には帰っていない。心当たりを当たってもらうが
行方が分からず、警察に捜索願が出された。
 翌朝。病院の裏で首をくくっているのを出勤してきた職員に
発見される。警察は自殺と断定。事件性はないと判断された。
 家族は泣いていた。お世話になりましたといってかえって
いった。一段落してある看護婦が私に言った。「先生、あの
人の奥さん、昨日、調子悪いふりして入院を伸ばしてもらえ
あんたの居場所なんか家にないんだからって言ってたらしい
ですよ...。」あの家族の涙はなんであったのだろう。
 別れを惜しむ涙だったのか、罪を感じて流した涙だったのか。
 彼は遺書も残さず黙って独りで旅立ってしまった..。
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| | 2005/02/26/Sat 15:32 [編集]
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ブラックな表現だけど、衝撃的に書きたいから
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)入所者及び介護老人保健施設(老人保健施設)入所者に対する必要な治療が実施できるよう、入所者に対する医療の算定制限を撤廃すること。 ということが求められているそうです。 「必要な治療が実施できるよう」というのは実の [続きを読む]
猫の同居人のつぶやき 2005/12/06/Tue 22:02
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