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(モデルにさせていただいた誤報事件に関しての2chの過去ログ保存していたものアップしました
医者板の過去ログ→こちら
ニュース速報+板の過去ログ→→こちら
この事件の理解の参考となれば幸いです。当時の記事などが引用されている部位もありますのでm3掲示板も閉鎖された今、資料として貴重なものとして保存してあります。)
雨上がりの虹(7)
 外来を終えた後、病棟にもどり彼の血液検査の結果とレント
ゲンを確認する。血液検査で白血球数は20000を超え、CRPも
20台の後半であった。胸のレントゲンは両方の肺にわたって
広範に肺炎の像が認められた。重症な大葉性肺炎である。
 一連の術後の経過で肺の繊維化がすすみ呼吸機能が落ちて
いる彼にとっては致命的である。抗生剤、エラスターゼ阻害剤
ガンマグロブリン....使える薬剤を総動員した。
 午後になりご長男とお話する。「今朝方から発熱しまして
急激に呼吸状態が悪くなってきました。自分での呼吸では
呼吸停止に陥る可能性があり、人工呼吸器につなげています。
 どうやら肺炎をおこしたようです。こちらが本日の胸の
レントゲン写真、これが4日前のレントゲンです。4日前の
レントゲンでも一連の経過に伴い起こった繊維化の陰影が
ありますが、それに加えて両方の肺が白くなっているのが
お分かりになりますでしょうか?」比較すれば一般の人も
すぐに分かるほどの陰影であった。ご長男はつぶやいた。
「これはひどいですね...。」「今、肺炎に対して出来る
限りの治療を行っています。手術のあとあれだけ苦しんで
ようやく落ちついてきたと思っていたのですが....。」
「どうなんでしょう。良くなる見込みはあるんでしょうか。」
「正直、厳しいかもしれません。今、酸素濃度を50%(通常
の酸素濃度は20%なので通常の2.5倍の酸素濃度)でやって
かろうじて血液の酸素分圧を保てている状態です。治療に
反応して呼吸状態がよくなってくれれば、酸素濃度を下げて
いくことができますが、悪化していけば酸素濃度を上げてい
かなくてはならなくなります。
 酸素濃度が60%を超える高濃度での長期の酸素投与は活性
酸素の影響で肺の繊維化をすすめるといわれています。です
から人工呼吸器の酸素濃度は60%以下で管理するようにする
のです。つまり治療に反応せず、80%〜100%でないと血中
の酸素分圧が保てなくなるようであればかえってそれが肺
を損傷することとなり、回復の見込みがかなり厳しくなると
考えられるのです。今、現在、使える薬剤はすべて使って治療
をしています。ここまで苦労したのですから私も正直、どう
してという気持ちで一杯です。治療に反応してまた人工呼吸
器がはずせればと願っていますが、どちらに転ぶかはここ
数日の経過を見なくてはわかりません。」「わかりました。」
 在宅酸素ででも自宅に帰ることができるかもしれないと
希望が見えてきた時期の突然の病状悪化である。私も家族も
病状の回復を期待したが、彼の病状は良くなることは無かった。
(次回につづく)
【2005/04/04 23:09】 雨上がりの虹 | トラックバック(0) | コメント(0) |
雨上がりの虹(6)
 それはある雨の日の朝だった。いつものように朝の外科
チームのミーティングと午前中の外来に行く前に受け持ち
の患者さんを回診する前に夜の間の患者さん達の状態を
把握するため私はカルテの温度板を確認していた。
 彼の温度板には早朝38度台の発熱があったことが示されて
いた。深夜勤の看護師に声をかける。「あれ、○○さんて
夜間に発熱があったのかい?」「ええ、朝4時ころから息苦
しいといって..。その時の体温が38.7度でした。サチュレー
ション(血中酸素飽和度:血液中の何%の赤血球に酸素が
結合しているかを示す指標で指に機械をつけることで測定
することができる。血中の酸素分圧を反映する。正常は
95%以上。90%を切ると低酸素血症と判定される。)も
ずっと80台の前半で経過しています。」彼の元にいくと
呼吸数も多くかなり息苦しい様だった。すぐに動脈血の
採血を行い血中の酸素濃度、二酸化炭素濃度を確認する。
 血中の酸素分圧は正常の半分以下、二酸化炭素濃度は
倍近くあった。呼吸がいつ止まってもおかしくない状態
である。そのまま吸入の酸素濃度だけ上げてもかえって
呼吸抑制が起こる可能性があり、人工呼吸器の装着が
必要であった。私は彼に話かけた。「○○さん。どうも
肺炎をおこしたようです。自分で充分に呼吸できない状態
になっています。気管切開部から管をつないで機械に
つなげさせてください。」少し意識はボーっとしていたが
彼は文字盤を出すように要求した。「き..か..い..に..
つ..な..が..れ..る..の..は..い..や..だ...。」彼は
強制的に呼吸させられる人工呼吸器は苦しいからいやだ
というのだ。しかし家族は今の事態をまだ知らない。この
ままおいておけば呼吸が止まるのは時間の問題だ。しかも
彼は癌の末期などではなく良性疾患である。手術の後の
ピンチを何度も乗り越えてきてここまできた。この肺炎を
乗り切れば充分助けられるのだ。家族に「本人が人工呼吸器
をつなげられるのが嫌だといっていたので人工呼吸器を
つながないでみていたら呼吸が止まりました。」などという
説明で到底納得を得られるとは思えない。ここで黙って呼
吸が止まるのを見ているわけにはいかなかった。私は彼に
再度説得を試みた。
「○○さん。この肺炎を乗り切ればすぐに機械もはずれると
思います。このままでは呼吸が止まってしまうかもしれ
ないんですよ。」彼は文字盤を示した。「い..や..だ..。」
 困った私は彼のご長男に連絡を入れた。現在の病状も
お話しておかなくてはならない。7時半を回ったところで
仕事に出る前のご長男を捕まえることができた。「お忙しい
ところ申し訳ありません。実はお父様のことなのですが、
どうも今朝方から肺炎を起こしたようで、呼吸状態が非常に
悪くなってきてしまっています。人工呼吸器の装着が必要
な状態です。」ご長男は少し動揺したようだった。「そう
ですか。」「ですがご本人がどうしても人工呼吸器はいやだと
いっていまして...。今のままではいつ呼吸が止まってもお
かしくない状態ですから、ご家族のご了承を得る必要がある
と思いまして..。詳しくはまた今日の昼ごろに一通り検査
結果がでましたらお話いたしますので..。」「わかりまし
た。お願いします。すぐ病院に行ったほうがいいですよね。」
「とりあえずの必要な治療は開始していきます。外来が終わ
った1時位にお話できる時間をつくれると思います。」
「わかりました。」
 私は彼の呼吸を確保するために人工呼吸器をつなげ、彼の
呼吸器での苦痛をとるために少し眠らせる薬を使用した。痰
と血液の培養検査を行い、そのほかの採血検査を提出、胸の
レントゲンをオーダーし、抗生剤の投与を開始した。「○○
さん。今、肺炎の治療を開始します。人工呼吸器につなげま
すけどつらいと思うので薬を点滴から流して機械をつなげて
いる間は眠ってもらいますから。肺炎が落ち着けばまた機械は
はずせますからね..。」
 彼はしょうがないと思ったのだろう。静かに頷いた。
 このときの彼の頷きが彼との最後の意思疎通になろうとは
思いもよらなかった。
(次回につづく)
【2005/04/03 19:55】 雨上がりの虹 | トラックバック(0) | コメント(0) |
雨上がりの虹(5)
ご家族をお呼びし説明する。「状態としては少しずつですが
回復の兆候にあります。ただまだ心機能と呼吸機能が充分回復
していないために人工呼吸器管理がもう少し必要になると
思われます。」家族の窓口となっていたご長男は言った。「見
た目は機械につながれてあまり変わっていないように思えま
すが少しずつは良くなってきているのですね。」術後一週間、
重篤な状況が続いているのに付き添って家族も疲れの色が見
えてきていた。家族としても少しでも回復の兆しがみえるな
らよいが、人工呼吸器と透析器にずっとつながれている現状
では痛々しい状態から殆ど改善が見られないように思えるの
も当然である。一応回復傾向にあるというのを聞かされて少
しほっとしたようだった。「ただ今口からいれている空気を
送りこむ管は1週間が限度なのです。今の呼吸状態であると
のどのところに穴をあけチューブを直接肺に空気を送り込む
気管に入れる気管切開という処置が必要です。」「のどに穴
を..ですか...。」「そうです。その方が見た目もすっきり
しますし、本人も口から管が入っているよりは楽になります。
口腔内の衛生も保たれます。ただ気管切開すると呼吸した
空気はのどのところから換気されますので話すことはでき
なくなります。」「でも必要な処置なんですよね..。」「
その通りです。」その日家族の承諾を得て彼の気管切開が
行われた。

 その後、次第に目に見える回復の兆候が現れてきた。腎機能
が回復し尿量もでてきたため透析装置がはずされた。意識も
しっかりして呼吸機能も少しずつ改善し、自発呼吸もでてきた。
 一連の炎症で肺の繊維化が単純レントゲンでもはっきりして
おり、酸素を気管切開部から流さなければ充分な血液酸素分圧
を保つことへ出来なかったが人工呼吸器からも離脱した。話す
ことは出来ないものの、文字盤を使って意思の疎通もできるよ
うになり、食事も摂取できるようになってきた。言葉こそ話せ
ないものの彼は私の手をにぎって感謝の意を示してくれた。
 3週間にわたる必死の治療とご家族の祈りが実を結んだよう
に思われた。しかしながら現実はあくまでも非情だった。
 我々と家族、そして本人の思いとうらはらに突然に転機が
訪れることになる。
(次回につづく)
【2005/04/02 21:47】 雨上がりの虹 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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藪医者の独り言


ここに記載されたエピソードは著者の体験をもとに構成したフィクションです。 このページはリンクフリーです。気に入ったら適当にリンクを貼っていただいて結構です。


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